高級腕時計ブランド46選。ステータス性を備えた一生モノ勢揃い
生涯をともにできるアイテムは意外と少ないもの。そのなかでも腕時計は、最も身近な存在ではないでしょうか。一生モノにふさわしい逸品の選び方と傑作をご紹介しましょう。いつかは手に入れたいステータスの証し、高級腕時計
決して身近なモノではないですが、いつか手に入れたいと憧れるのが高級腕時計。腕の上で共に人生の時を刻む腕時計は、計時という機能を超えた特別な存在です。それゆえに、良いモノを選びたいという欲求が湧いてくるのも当然のことでしょう。腕時計も50万円を超えてくると、持つ人に自信を与えるステータス性を備えた孫の代まで受け継ぐことができる一生モノが手に入ります。しかし、値が張るだけに失敗は避けたいところ。購入の際は、しっかり自分のニーズと照らし合わせて吟味することが必要です。ですが、恐れることはありません。ポイントを押さえれば、かけがえのない一生の相棒に出会えるはずです。
失敗したくないなら知っておきたい、高級腕時計の選択基準
一生モノの高級腕時計は、一世一代のお買い物。後悔しない腕時計選びをするために、注意すべきポイントを3つにまとめました。じっくりと考えて最高のパートナーを見つけてください。
ポイント1
10年後も20年後も人に誇れる、信頼できるブランドの逸品か
腕時計は男の数少ない装飾品。腕元だけでその人の格を表してしまうステータスアイテムなのです。それだけに、ブランドの歴史は非常に重要です。高級ブランドが提案する機械式腕時計は伝統工芸というべきもの。長い歴史の中で、職人が築き上げてきた技術と、その技術が息づいているブランドの背景こそが圧倒的な信頼へとつながるのです。ステータスという意味では、知名度も大切でしょう。いくら高価な腕時計でも、目の前の相手が知らなければステータス性も半減します。例えば、『ロレックス』に『オーデマ ピゲ』、そして『グランドセイコー』など誰もが知っているブランドはその人の価値をわかりやすく高めてくれることでしょう。また、あえて『ゼニス』や『ベル&ロス』など腕時計ファンからの評価が高いブランドを選ぶことで、“分かってる”感を演出するのも1つの手といえます。
ポイント2
自分のライフスタイルを鑑みたデザインを手に入れる
高価な腕時計は、当然ながら何本も買えるものではありません。それゆえに自分の着用シーンをよく考えて選ぶことが重要です。厳格なビジネスの場ならば貴石入りの腕時計は避けるべきですし、オフでしか腕時計をしない人にエレガントなドレスウォッチはオーバーに映ります。また、自分をどう見せたいかも重要なポイントです。若々しく見せたいならステンレスブレスを使用した精かんなモデルがいいでしょうし、信頼感を与えたいなら革ベルトのモデルはその願いを叶えてくれます。ショップに向かう際には、腕時計をよく着用する装いで足を運べばイメージもしやすくなります。仕事の場で身に着けたいのに、目当ての腕時計がスーツに合わなかった、ということはよくある話です。
ポイント3
永く使うなら、購入価格のほかに維持費も確認しておく
腕時計を購入する際、本体価格のことしか考慮していない人が多数派でしょう。しかし、高級腕時計は車を購入するとき同様、メンテナンス価格のことも考えなければなりません。機械式ムーブメントを搭載している腕時計は、機能の維持のために3~5年に一度はオーバーホールに出す必要があるからです。シンプルな3針なら、5万円は見ておいたほうがいいでしょう。クロノグラフやGMTなど付加機能が付くとさらに3~5万円かかる場合があります。また、革ベルトは消耗品であるということも忘れてはいけません。高級ブランドの純正品はその素材の希少さから、数万円にのぼることもざらです。長く使う一生モノは、メンテナンス費用も考慮して機能やベルトの素材を選定することが重要なのです。
ミドルプライスから雲上まで。有名腕時計ブランドとその名作46本を厳選
『ロレックス』に『オメガ』、『タグ・ホイヤー』など、我々がよく耳にするブランドは腕時計業界の一角に過ぎません。老舗と呼ばれる100年以上の歴史を持つブランドから、昨今めきめきとその頭角を現している宝飾形ブランド、そして新鋭ながら確かなモノ作りで時計通を唸らせているブランドなど数え上げればキリはありません。その中でも、特に知っておいて損はない46ブランドをピックアップ。現在購入できる名品と併せて、解説していきましょう。
ブランド1
『ロレックス』
『ロレックス』は、着けていると間違いなく尊敬される世界で一番有名な高級腕時計ブランド。歴史は比較的浅いものの、腕時計の現代的機能を開拓してきた高い技術力は他の追随を許しません。昨今は「デイトジャスト」などドレス感の強いベーシックモデルも注目されていますが、やはりスポーツモデルのど真ん中「エクスプローラー」は王道。2010年に39mmにサイズアップされたことで、よりモダンな顔立ちに仕上がっています。その他のデザインは従来の顔立ちを踏襲しつつ、インデックスのクロマライト、ムーブメントのパラクロムヒゲゼンマイなど細部においてバージョンアップが図られている点も見逃せません。ちなみに2021年6月現在絶賛高騰中なので、狙っているなら少々時間をおくことをおすすめします。
ブランド2
『パテック フィリップ』
腕時計ブランドの最高峰、それが『パテック フィリップ』です。もちろん上記同様、世界3大高級ブランドの1つに数えられます。パテックを手に入れたらもうほかに買う腕時計はないといわれる、いわゆる“上がり”のブランドです。資産価値も抜群で、アンティークは何千万もの価格で取り引きされるほど。当然歴史も古く、創業は1839年にさかのぼります。このブランドの哲学を表しているのが、持ち込まれた腕時計はどんな時代のものでも修理してくれること。つまりは一生モノどころか、後世に伝えることを前提としたブランドとして腕時計作りを行っているのです。有名どころといえばドレスウォッチの最高峰「カラトラバ」ですが、スポーツウォッチ隆盛の今、やはり「ノーチラス」は外せません。巨匠、ジェラルド・ジェンタ氏のデザインが今また物欲を刺激します。
ブランド3
『オーデマ ピゲ』
起業社長や人気アーティストがこぞって手に入れる腕時計。それが『オーデマ ピゲ』のロイヤルオークです。腕元から特徴的なオクタゴンベゼル(八角形ベゼル)が見えたら、その所有者はなにかしらの業績を成し遂げた人と考えていいでしょう。まさに成功者の証しです。この『オーデマ ピゲ』は世界三大高級腕時計ブランドに数えられる雲上ブランドで、1875年に創業した歴史あるブランド。一般にはあまり知られていませんが、腕時計の世界では知らぬ人がいない超大物ブランドなのです。なお、オーセンティックな3針モデルは現在枯渇状態。今狙うなら、クロノグラフなども、面白い選択肢といえそうです。
ブランド4
『ウブロ』
世界中のセレブリティから愛される『ウブロ』。代表作ビッグバンの異素材を組み合わせた押し出しの強いデザインは、遠目からでもひと目でこのブランドとわかるほど個性的です。歴史は40年に満たない新興ブランドですが、現在では高級腕時計ブランドの一員として、名門ブランドに肩を並べるほどの人気とステータスを併せ持つまでになっています。印象的なルックスですが、オールブラックなどワントーンのモデルならば、スーツスタイルにも馴染んでくれます。
ブランド5
『ヴァシュロン・コンスタンタン』
世界3大高級ブランドに挙げられる『ヴァシュロン・コンスタンタン』。その創業は1755年と長い歴史を誇ります。1880年には現在も使われている有名なマルタ十字のロゴが誕生。ムーブからケースまで自社で製造するマニュファクチュールであり、19世紀から精度コンクールでたびたび受賞するなど、技術力の高さには定評があります。今回紹介する「オーバーシーズ」は1996年に誕生したスポーツモデル。デコラティブなモデルも多い当ブランドのなかでは、正統派のラグジュアリー感を備えた使い勝手の良いモデルです。
ブランド6
『A.ランゲ・アンド・ゾーネ』
ドイツにおける腕時計製造の最重要人物アドルフ・ランゲ氏の名を冠すブランドで、世界四大ブランドと呼ばれるときは、そのなかに当ブランドを含めることが一般的です。第二次世界大戦後にブランドが消滅しますが、東西ドイツ統合後に復活、1994年に「ランゲ1」で華々しい再出発を遂げます。「ランゲ1」は、ザクセン地方の伝統的デザインであるデジタル表示をデイトに採用し、大きな評判を得ます。現在では、プレステージブランドとして、腕時計界に名を馳せるビッグネームになっています。派生モデルも多く、例えばこちらは「ランゲ1」より2.5mmサイズアップした「グランド・ランゲ1」。ムーンフェイズやお馴染みビッグデイトなど『A.ランゲ・アンド・ゾーネ』らしい機構を満載したムーブメントも、サイズアップにともない再編されるなど、細部までこだわりが行き渡っています。
ブランド7
『ブレゲ』
腕時計の背後にあるストーリーにこだわるなら『ブレゲ』もおすすめです。腕時計史に燦然と名を残すアブラアン-ルイ・ブレゲ氏が1775年にパリで工房を開いたことがそのはじまり。このブレゲ氏は、腕時計の歴史を200年早めたといわれる天才腕時計師。実用的な自動巻き機構や複雑機構トゥールビヨン、さらに針や装飾の意匠におけるまで、その発明は多岐に亘ります。顧客にマリー・アントワネット妃などの王侯貴族が多かったことからも当時の名声の高さがわかります。そんな超絶技巧を搭載したモデルは、当然1000万円超え。比較的手が届く『ブレゲ』を、ということなら「タイプXXI(トゥエンティーワン)」がおすすめです。実用にふさわしいミリタリーデザインの中に、『ブレゲ』らしい作りの良さが光ります。
ブランド8
『ジャガー・ルクルト』
腕時計通の間では熱狂的なファンが多い『ジャガー・ルクルト』。1833年にスイスのジュウ渓谷で産声を上げた当初から、ムーブメントを内製できるマニュファクチュールブランドとして非常に高い評価を得てきました。これまでに開発したムーブメントは実に1,200以上に及びます。中でも「レベルソ」は反転式ケースが特徴となる、ブランドの中核モデル。1930年代に英国人将校から、ポロの競技中でも文字盤に傷がつかない腕時計をオーダーされたのがきっかけで生まれました。レクタンギュラー(角型)のエレガントなフォルムは、オン・オフ問わず上品さを演出するのにぴったりです。ですが、現代においてはポロよりビジネスの場における使用が主流。加えて、より趣味性を求めるなら味わい深い手巻きこそをおすすめします。こちらの“デュオ”なら、白文字盤、黒文字盤の両方を堪能できる点もお得感がありますよね。
ブランド9
『ブライトリング』
世界で一番有名なパイロットウォッチブランド、それがスイスの『ブライトリング』です。1884年に創業すると、精密なクロノグラフで評判を集め、航空機の発達とともに、パイロットに欠かせない相棒として人気を博します。象徴的なモデルとして1952年発売の世界初回転計算尺付きクロノ「ナビタイマー」なども控えていますが、今選ぶなら1984年にイタリア空軍との共同開発により完成した名作「クロノマット」も見逃せません。その見どころといえば、特徴的なルーローブレス。円柱状のパーツが並ぶように接続された同ブレスはこれまでヴィンテージのみに許される特権でしたが、新作群に採用されたそれは現代的な技術を用いた滑らかな着け心地も魅力です。なお、今作では『ブライトリング』に珍しく、シースルーバックを採用している点もポイント。
ブランド10
『オメガ』
東京オリンピックの公式タイムキーパーを務める『オメガ』。『ロレックス』と並びスイスを代表するビッグネームで、腕時計好きでなくても知っている人は多いでしょう。高い耐久性、精度によってNASAに認められ、世界で初めて月面上陸に随行したブランドでもあります。そんな宇宙のイメージも強い『オメガ』ですが、1948年に軍用ダイバーズウォッチを市販用にリリースした「シーマスター」ももう1つの軸として知られる存在。「スピードマスター」のようなわかりやすい逸話はないものの、そこからダイバーズウォッチの名作として現代まで愛され続けてきたスペックには目を見張るものがあります。一流品しか身に着けない男、ジェームズ・ボンドが指名し続けているのも、何を隠そう「シーマスター」。そんな蘊蓄も背景に腕に巻いてみれば、一層感慨深いものとなることでしょう。
ブランド11
『IWC』
『IWC』は腕時計好きの間では圧倒的な支持を得ているスイスのブランドです。1868年の創業以来、高い技術力で優れたムーブメントを製造してきました。スイスでもドイツ語圏に本拠地を構え、このブランドはよく「質実剛健」と形容されます。ドイツの職人魂を受け継ぎ、技術に関してもデザインに関してもストイックさが際立っており、硬派な腕時計がお好みならうってつけといえるでしょう。「ポルトギーゼ」はシンプルな文字盤が特徴で、元となった懐中腕時計は1939年に誕生した歴史的な逸品です。
ブランド12
『ゼニス』
『ゼニス』は1865年にスイスで創業したブランドです。このブランドはクロノグラフに定評があり、腕時計好きの間ではエル・プリメロと名付けられたクロノムーブはステータス化した存在です。このムーブメントは毎時3万6000振動という、ハイビートで時を刻みます。つまり1秒に10振動することになり、機械式でありながら1/10秒まで計測できるのです。近年、約50年の時を経た進化系ムーブとしてエル・プリメロ21が登場。こちらのモデルは、「デファイ エル・プリメロ21」に続く同ムーブ搭載機として業界に衝撃を与えた1本です。昨今のスポーツラグジュアリーのトレンドを、より色濃く受け継いでいます。
ブランド13
『カルティエ』
ジュエリー界のビッグネームですが、1904年に登場した「サントス」は世界初のメンズ腕時計とも言われ、実は腕時計の世界でも古い歴史を持っています。当時、男性の時計の正統はあくまで懐中時計、腕時計は女性が身に着ける装飾品という扱いでした。『カルティエ』は、メンズの世界に実用的な腕時計を持ち込んだのです。それゆえに、時計マニアの間でも『カルティエ』は一目置かれる存在。自社でムーブメントを製造できる“マニュファクチュール”でもあり、見た目だけでなく、中身も歴史もすごいブランドなのです。今でしたらスポーツスタイル人気もあり、「サントス」ならではのビス使いが光るメタルブレスが気分でしょう。
ブランド14
『オフィチーネ パネライ』
イタリアのブランド『オフィチーネ パネライ』は、イタリア海軍に時計を納入するミリタリーウォッチで名を馳せました。そのため、高い視認性とシンプルな文字盤を特徴としています。代表作「ルミノール」は蛍光塗料の名前からとられたもの。ちなみに先代のモデルは「ラジオミール」といって、こちらも蛍光塗料が由来。いかに『パネライ』が視認性に力を入れているかがわかります。機能性に加え、流麗なリューズガードに代表されるイタリアらしい造形美も人気が高く、現在は高級腕時計として人気が定着。特に今選ぶなら、スポーティなダイバーズモデルがベター。42mm径の比較的小ぶりなモデルを選べば、腕元への収まりもばっちりですよ。
ブランド15
『グランドセイコー』
日本が誇る『セイコー』の高級ブランドとして、その技術力の粋を集めたフラッグシップが『グランドセイコー』です。選抜された優秀な職人がハンドメイドで組み立て、一点一点丁寧に作り込まれた逸品は、一生モノにできる魅力に溢れています。とくにおすすめしたいのが、世界で『セイコー』しか作れない、機械式とクォーツ式の“いいとこ取り”をした「スプリングドライブ」搭載モデル。ゼンマイと歯車で動く機械式の温か味が感じられながら、クォーツの正確さを持った究極の機構なのです。腕時計はスイス製が最高、という従来の定説を打ち破るMADE IN JAPANの傑作です。今手に入れるなら、セラミックベゼルがスポーティさを煽るこんな意外性のある1本もアリ。
ブランド16
『セイコー プロスペックス』
『セイコー』ブランドにおける高級路線は『グランドセイコー』の独壇場でしたが、2019年には銀座の一等地にフラッグシップショップがオープンし、スプリングドライプを搭載した「ルクスライン」が登場するなど『プロスペックス』もスポーツウォッチトレンドの中で頭角を現してきています。耐磁・耐水・高精度を追求する高級時計として『グランドセイコー』とはまた違った魅力を見せてくれそうです。こちらは、名作「マリーンマスター」の系譜にあるダイバーズウォッチの最新形。海外では“MM300”の名称で愛されているシリーズですが、プロ仕様を突き詰めた結果、横幅は44.3mm、重さは222gとかなりの重量級に仕上がっています。しかし、ワンピース構造の防水性に優れるケースに収められたのは雫石高級時計工房による組み立てのダイバーズ専用ムーブ8L35。表面にはダイヤシールド加工、しかも今作より風防はサファイアクリスタルにアップデートされ、ベゼルインサートもセラミックとなっています。プロユースのスペックに、高級時計さながらの仕様。このハイブリッドさは、他ではなかなか味わえません。
ブランド17
『カンパノラ』
『カンパノラ』は、日本を代表する時計ブランド『シチズン』が2000年に創設したラグジュアリーブランド。宇宙をイメージし、神秘的で芸術性に溢れたモデルを多く生み出しています。『シチズン』といえば、近年『ブローバ』や『フレデリック・コンスタント』など、名だたる時計ブランドを買収していますが、スイスの名門ムーブメントメーカー「ラ・ジュー・ペレ」もそのうちの1つ。昨今では日本の伝統工芸を積極的に取り入れる動きもあり、紹介する『カンパノラ』の「メカニカルコレクション」にはこの「ラ・ジュー・ペレ」の美しい自動巻きムーブメントが積まれ、内外から『シチズン』が考える至高の美を体現しています。
ブランド18
『フレデリック・コンスタント』
『フレデリック・コンスタント』と聞いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか? ブランド創世記から知っている方だと、“上質なスイス時計を、手ごろな価格で提供しているブランド”という印象を持っているかも知れません。しかし、本場スイスでも数少ないマニュファクチュールとして知られる同ブランド。めきめきと技術開発を進め、高級メゾンでもなしえなかったような新技術を次々と生み出しています。『フレデリック・コンスタント』には、そんな唯一無二のテクノロジーを搭載した高級機も数多く在籍(とはいえ、他ブランドと比較しても手に取りやすいことに代わりはありませんが)。最近だとシリコン製オシレーターを6時位置にセットした、「モノリシック」も記憶に新しいでしょう。とはいえ、そのあたりのモデルはまだなかなか手が出にくいモノ。同ブランド実力に触れたいなら、シリシウム製ガンギ車を備えた自社製ムーブを搭載したこんな1本はいかがでしょう? ギョーシェとコート・ド・ジュネーブを組み合わせた文字盤の手の込んだ装飾からも、同ブランドの技術力の高さが垣間見えます。
ブランド19
『シャネル』
『シャネル』といえば、知らない人はいないほど巨大なファッションブランドですが、近年は部品メーカーや気鋭の時計ブランドの買収など時計界でも話題をさらっています。そんな『シャネル』を代表するモデルは2000年に誕生するや、またたくまに一世を風靡した「J12」。『チューダー』ともムーブメントを共同開発するケニッシ社による新しいキャリバーを積んだ新作が、2019年に発表されたばかりです。その特徴はなんといってもセラミックケースとセラミックブレスレットにあるでしょう。逆回転防止ベゼルを採用したスポーティなフォルムながら、セラミックの艷やかな光沢により、まるでジュエリーのような美しさを持ち、時計界にセラミックブームを巻き起こしました。
ブランド20
『ブルガリ』
30歳以上の人からすると、『ブルガリ』の時計といえばベゼルに“BVLGARI”のロゴが刻まれた「ブルガリブルガリ」の印象が強いかも知れません。しかし、現在のウォッチはバブリーな押し出しの強さは鳴りを潜め、ずっとスマートで知的になっています。『ブルガリ』を象徴するモデルとしてはやはり「オクト」が挙げられるでしょう。文字通り円形と8角形を合わせたベゼルを持ったモダンな時計です。この形状を見て、ピンときた方は相当の時計通。『IWC』や『ヴァシュロン・コンスタンタン』も手掛けた、巨匠ジェラルド・ジェンタ氏のデザインをベースとするモノ。厚さ2.23mmの極薄自動巻きムーブメントを搭載した腕時計として話題をさらいました。
ブランド21
『ティファニー』
『ティファニー』といえば、ニューヨークに本拠を持つ世界屈指のジュエラーとして有名ですが、設立後すぐの1847年から時計の取り扱いをはじめ、スイスのジュネーブに時計工房を開設したり、最上級時計ブランド『パテック フィリップ』と提携したりするなど、時計とは縁が深いブランドなのです。
1868年には、アメリカ初のストップウォッチ付きの懐中時計である「ティファニー タイマー」を発売、また1945年にはアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが誕生日に『ティファニー』のカレンダーウォッチが贈られるなど、アメリカの時計史に『ティファニー』は欠かせない存在なのです。女性向けではトラベルクロックをソースとした「イーストウエスト」も人気ですが、男性がシンプルに使うならインデックスのフォントにブランドらしさを感じるこんな3針モデルもおすすめ。どこかメンズライクなミリタリーテイストを匂わせるデザインや、さりげなく便利なデイト表示もうれしい限りです。
ブランド22
『ピアジェ』
ジュエラーとしても有名な『ピアジェ』は、腕時計でも存在感を示しているブランドです。『ピアジェ』の腕時計のDNAはズバリ薄型であること。1957年には当時の最薄記録、わずか2mmの厚さしか持たないムーブメントを発表しました。以来、『ピアジェ』=薄型という認識は時計通の間で定着するようになりました。しかし、2016年に同ブランドが舵を切ったのがラグジュアリースポーツの流れ。「ポロ」シリーズの発表により、ラグジュアリーなだけにとどまらないブランドの新たな一面を見せてくれました。高級宝飾ブランドがあ提案する、スポーツウォッチ。もしあなたがラグスポ難民なら、検討の余地はありそうです。
ブランド23
『フランク・ミュラー』
超絶複雑機構を次々と腕時計へ搭載した天才時計師フランク・ミュラー氏のブランド。 ‘90年代には、ここ日本でもバブル的人気を博しました。独特なトノー型のケース、文字盤いっぱいに植字されたインデックスを見たことがある人も多いでしょう。近年、少しずつ人気が復活し、腕時計愛好家の間でも再注目されています。「トノーカーベックス」は高いザイン性と腕時計としての確かな技術に加え、腕に吸い付くように弧を描くトノー型ケースで腕馴染みもGOOD。腕時計通を“おっ”と言わせる狙い目のモデルです。
ブランド24
『チューダー』
ご存じ『ロレックス』の兄弟ブランド『チューダー』。誕生は1926年にさかのぼり、昨年、日本でも正規販売が始まったことで話題を呼びました。『ロレックス』譲りの機能性をもちながら、よりファッションとの高い親和性を持っており、ブランドアンバサダーもレディガガ氏やデイヴィッド・ベッカム氏が務めます。この「ブラックベイ」は2012年に発表されたブランドを代表するダイバーズウォッチ。『チューダー』らしい“イカ針”がキャッチーな、200m防水仕様の本格派仕様です。2016年からは自社ムーブメントを搭載しており、資産価値も上昇。パワーリザーブも70時間に伸び、実用時計としても申し分ないスペックを有します。ちなみにこちら、通常41mmのケース径をわずか2mm絞り、ラグのエッジに鏡面の面取を施した「ブラックベイ フィフティーエイト」この2mmが実はキモで、1950年代に“チュードル”が製造していたアーカイブの顔を再現しているのです。そんな微差が好事家に刺さり、こちらのフィフティーエイトは現在プレミアが付くほどの高騰を見せています。
ブランド25
『モーリス・ラクロア』
歴史は40年あまりと時計ブランドのなかでは新参ですが、ドイツの著名な賞「レッド・ドット デザインアワード」を受賞するなど近年メキメキと伸びてきている『モーリス・ラクロア』。自社製造のムーブメントを採用し、凝りに凝ったデザインを施した「マスターピース」シリーズも要チェックですが、昨今においては過去の名作「カリプソ」をデザインベースとした「アイコン」シリーズがとにかく熱いんです。手に取りやすいクォーツからスタートした「アイコン」ですが、圧倒的独自性を有したコンプリケーションモデルも続々登場しています。こちらも、腕を傾けて時刻を見ようとしたときのみ現在時刻を表示してくれる趣味性が強い1本。手にした人にしかわからない愉悦が、ここにあります。
ブランド26
『ベル&ロス』
近年ますます人気を確かなものとする、フランスの若きニューカマーブランド。軍や警察に制式採用されるなど、質実剛健な腕時計ブランドとして知られるドイツの『ジン』を範としているため、そのファッショナブルなルックスを良い意味で裏切る、高い精度やケースの作り込みには玄人もうなります。計器然とした武骨なルックスが特徴的な『ベル&ロス』ですが、ラグスポ時計人気に沸く2019年の中において異彩を放っていたのが「BR05」でした。ブランドらしい角型ケースの趣を残しつつ、サテンとポリッシュの使い分けによりエレガントさを醸成。厚みも1.1cm程度と、ラグスポ好きの大人の琴線に響く隙のないデザインには多くの好事家が心動かされました。今作は、そのクロノグラフモデル。スクエアのインダイヤルはケースの形状とマッチし、ゴチャつかない好バランスを生んでいます。
ブランド27
『タグ・ホイヤー』
『タグ・ホイヤー』は1860年から続くスイスの名門。モータースポーツを古くからサポートしているため、洗練されたスポーティさが持ち味です。知名度も非常に高く、男女ともに威厳を誇示できるブランドのひとつです。近年は前代未聞のベルト駆動ムーブメントを開発したり、コネクテッドウォッチに参入したりと、時代の先端を行く革新的なイメージを打ち出しています。そんな先進的なブランドですが、オーセンティックな過去のモデルにも名作が数多く眠っています。世界初の角型自動巻きクロノグラフとして誕生した、「モナコ」もそんな1本。初代はアイコニックな左リューズでしたが、最新鋭のキャリバー02を搭載した今作は現代において実用的な右リューズに。ケースバックもシースルーになっており、レトロな外観と最新のムーブメントの対比を楽しむことが出来ます。
ブランド28
『ロンジン』
『ロンジン』といえば復刻腕時計ブームの火付け役的ブランド。同ブランドがバーゼルワールドにおける「ヘリテージコレクション」の発表により、シーンに与えた影響は大きく、昨今の復刻の流れを生み出したのは『ロンジン』であるとも言われています。「ロンジン アヴィゲーション ビッグアイ」に「ロンジン レジェンドダイバー」ほかさまざまなモデルをストックしており、ヴィンテージウォッチが大好物の玄人たちを魅了し続けています。しかし、百花繚乱の様相を見せる復刻モデルの裏で、大人の審美眼を満たすモデルとして君臨している腕時計もあります。それが、この「レコード」シリーズ。実用性を備えたドレスウォッチを目指し、デイト付きの3針モデル、その規範となるべき製品を揃えています。その中でも一生モノとして選びたいのが、金無垢の1本。『パテック・フィリップ』の「カラトラバ」にも迫る風格は、老舗中の老舗ならではの恩恵といえるでしょう。
ブランド29
『オリス』
スイスブランドの中でも、隠れた優良ブランドとして知られるのが『オリス』。1904年に、スイスはヘルシュタインで誕生し、第二次世界大戦時には、パイロットがグローブをしたまま操作ができるよう大型のリューズを備えた「ビッグブラウン」で有名になりました。
1970~80年代はクォーツショックにより存続の危機も訪れましたが見事に立ち直り、現在もスイスを代表するブランドとして人気を博しています。また、ムーブメント・イノベーターとしての側面も強化すべく、2010年には創業110周年を記念する自社ムーブ・キャリバー110を公開。さらにその進化系として、キャリバー111を開発しています。シースルーバックから覗く美しい手巻きキャリバーのパワーリザーブは、なんと驚異の10日間。文字盤3時位置のインジケーターも、時間ではなく日数での表示になっています。9時位置にスモールセコンドとデイト表示も設け、実用性も申し分なし。エレガンスとスポーティさが同居する、『オリス』らしい1本です。
ブランド30
『エドックス』
『エドックス』の歴史は古く、1884年にさかのぼります。誕生の地は、時計産業の本場、スイスのジュラ地方。『エドックス』はダイバーズに強い情熱を持っていることで知られ、1961年には画期的なダブルO(オー)リングで特許を取得したモデル「デルフィン」で、リューズをねじ込み式にすることなく200m防水を達成するなど高い技術力を見せつけました。そんな名作が揃う『エドックス』ですが、こちらの「スカイダイバー」も特別な1本。ブランドの工場書物から謎多いスケッチとして発掘され、長年勤務していた職人の証言によりスイス軍の大佐が極秘で依頼したパラシューター部隊のための腕時計であったことが判明しました。300m防水も備え、まさに陸・海・空を制する腕時計。ミリタリー感を煽るグリーングラデーションの文字盤も相まって、只者ではない雰囲気を漂わせています。
ブランド31
『ブランパン』
現存する世界最古の時計ブランドといわれる『ブランパン』の設立はなんと1735年のこと。スイスのジュラ地方で誕生しました。また1926年には世界で初めて自動巻き腕時計を商品化したことでも知られています。ブランドの代表モデル「フィフティファゾムス」はフランス海軍の水中工作員のために、1953年に発表されたダイバーズウォッチ。現行モデルでも発表当時のオリジナルデザインを搭載し、多くの腕時計ファンを引きつけています。
ブランド32
『ノモス グラスヒュッテ』
2014年にはムーブメントを自社開発生産するマニュファクチュールの仲間入りを果たし、技術力の向上も目覚ましいものがある『ノモス』。ラインアップの特徴を一言で表せばシンプル。ラウンドケースに極細ベゼルで文字盤を大きくとり、視認性を追求した形状はすべてのモデルに共通しています。どちらかというとクラシックで素朴な顔立ちの多かったな『ノモス』ですが、ここ数年はスポーツウォッチトレンドに則った近代的なモデルも続々リリースしています。「ネオマティック」は、自動巻きムーブを搭載した新しい『ノモス』の展望を垣間見せてくれるシリーズ。5気圧が基本だった防水性も30気圧までアップするなど、同ブランドの本気が詰まっています。
ブランド33
『H.モーザー』
ハインリッヒ・モーザー氏により、ロシア・サンクトペテルブルクにH.モーザー社が設立されたのは1828年のこと。その後、故郷であるスイスのシャフハウゼンに戻り事業を行ったのち、スイス時計の聖地ル・ロックルで腕時計の製造に着手します。現在は本拠地を再びシャフハウゼンに移し、複雑機構を手作業で完成させることにこだわりながら通好みのハイクオリティな逸品を生み出しています。その特徴をひと言であらわすなら、「上品」という言葉がぴったりでしょう。すべてのモデルでレザーベルトを採用し、その多くは3針。独自の光沢を放つフュメダイヤルを特徴とする奇をてらわないシンプルデザインで、品質で勝負する“いいもの感”あふれる傑作が揃います。
ブランド34
『ロジェ・デュブイ』
技術力に定評のあった創業者であり時計師ロジェ・デュブイ氏の名を冠し、1995年に設立されたブランドです。腕時計の一貫製造を掲げ、ブランドの顔ともいえる「エクスカリバー」シリーズをはじめとしたアヴァンギャルドなデザインで一世風靡。超絶技巧を駆使した自社開発ムーブメントにも評判があり、特にフライングトゥールビヨン搭載モデルは有名です。時計に及ぼす重力を均等にする超複雑機構トゥールビヨンが宙に浮いたように見える驚きのモデルで、業界人の度肝を抜きました。しかし、奇抜なルックスばかりが同ブランドの強みではありません。過去の名作、「シンパシー」をルーツに持つ「モネガスク」のようなエレガンス溢れるクロノグラフモデルなどには、天才が手掛けるゆえのシンプルな上質さを見ることが出来ます。
ブランド35
『リシャール・ミル』
2021年6月執筆時、そのお値段49,744,800円也。打ち間違いではありません。下手したら家が買えてしまう超高額ブランドが『リシャール・ミル』です。テニスプレイヤーのナダル氏がプレイ中もずっと着けていることでも有名ですね。特徴は最新のハイテク素材を使っているため、とにかく軽いこと。ナダル氏のように着けたままスポーツをプレイできてしまうほどです。またネジ1本1本に至るまで自社で開発しているため、もちろんクオリティは最上級。今、もっともホットなブランドの1つです。
ブランド36
『ハリー・ウィンストン』
宝飾ブランドというイメージが強いアメリカの『ハリー・ウィンストン』ですが、腕時計ブランドとしても有名なんです。とくに注目を浴びているのは、「オーパス」と名付けられたシリーズ。これは時代を代表する独立時計師と手を組んで、腕時計マニアもびっくりの超複雑腕時計を毎年発表するもの。この「オーパス」によって、腕時計ブランドとしての『ハリー・ウィンストン』の名が世に広まりました。ただし「オーパス」は超限定モデル、ここでは「ミッドナイト」をご紹介します。フルスケルトンながらマイクロローターの使用により薄型に仕上げられており、控えめながらきちんと主張をするブランドらしい一面が感じられる。
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『ジラール・ペルゴ』
その起源を1771年までさかのぼることができる、スイスの超老舗ブランドが『ジラール・ペルゴ』です。ムーブメントを自社で開発製造できる数少ないウォッチメーカーとしても有名で、組み立てや装飾はすべてハンドメイドで行われています。そんな『ジラール・ペルゴ』の技術力をいかんなく発揮したモデルが、「トライアクシャル トゥールビヨン」。そもそもの存在が数少ない3軸トゥールビヨンは、重力の影響を最小限に抑える超絶機構! 9時位置の窓だけ盛り上げたサファイアクリスタルガラス、18kのホワイトゴールドの使用ですら十分レアなのに、これを腕に巻いていれば話題の中心となることは間違いありません。ちなみに、全世界10本限定のウチの1本だとか。
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『グラスヒュッテ・オリジナル』
ザクセン地方のグラスヒュッテはドイツ時計の聖地。その名をブランド名に関し、ドイツ時計の伝統を継承しているブランドが『グラスヒュッテ・オリジナル』です。それぞれの桁を別のダイヤルで動かす特徴的なビッグデイトや、アシンメトリーな文字盤、裏蓋には施されたグラスヒュッテストライプはまさにドイツ時計の生き証人とも呼べるもの。作りが違うので単純比較はできませんが、同じグラスヒュッテに出自を持つドイツの時計ブランド『ランゲ&ゾーネ』がウン百万円もする一方、こちらは100万円以下でドイツ時計の由緒正しき名品を買えるのも魅力です。
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『ジェイコブ』
セレブを虜にしたジュエリーウォッチブランド『ジェイコブ』は、1986年にニューヨークでジェイコブ・アラボ氏によってスタートを切りました。当初は完全なジュエリーブランドでしたが、ある時計を発表したところ大ブレイクを果たし、現在ではジュエリーより時計ブランドとして認識している人も多く存在しています。そしてその時計こそ2003年に発表された「ファイブタイムゾーンウォッチ」。中央のメイン時刻に加え、4つのサブダイヤルにより、計5都市の時刻を同時に表示するという驚愕の時計でした。この時計はまたたく間に話題となり、世界中のセレブの腕に巻かれるようになりました。さらにスタイリッシュにと、5都市の時刻をデジタル表記した「ゴースト」が、こちら。現在ではウン千万を超える超絶機構モデルも次々と世に送り出していますが、ブランドの世界観をに着足りたいならこの辺からのスタートもありでしょう。
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『コルム』
1955年にスイス、ラ・ショー・ド・フォンで創業した『コルム』。ブランドの特徴は斬新ともいえる高いデザイン性です。過去には金貨にムーブメントを埋め込んだ「コインウォッチ」やベゼルにインデックスを刻んだ世界初のモデル「ロムルス」、本物の羽根を文字盤に使った「フェザーウォッチ」など、革新的なデザインで注目を集めています。
フラッグシップは1960年に発表された「アドミラル」。このモデルはイギリスのヨットレース「アドミラルカップ」をリスペクトして作られたもの。当時は角型のモデルでしたが、1983年に12角形にリニューアル。現在でもこの12角形ベゼルといえば『コルム』と認識されるほど、ブランドのアイコンになっているのです。こちらは2本のクロノグラフ針を持ち、経過時間を計測できるスプリットセコンドクロノグラフ搭載モデル。スポーティなのに優雅なフェイスが特徴です。
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『クロノスイス』
1983年にドイツで、時計師ゲルト・R・ラング氏が起こした『クロノスイス』は、昔ながらの機械式にこだわるブランドです。装飾においても伝統的なギョーシェを多用した、オーセンティックなモノ作りで時計ファンの心を鷲掴みにしています。同社を一躍有名にしたのが、レギュレーターです。レギュレーターとは、時、分、秒の針をそれぞれ独立させた場所に配置した時計のこと。『クロノスイス』はレギュレーターで初の量産型時計を製作したのです。紹介モデルはレギュレーターでこそありませんが、そのデザインを踏襲しつつ、工芸的なギョーシェやオニオンリューズなどヨーロッパの時計文化を色濃く体現した『クロノスイス』らしい逸品です。
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『ジャケ・ドロー』
ジャケ・ドロー氏がスイスに最初の工房を開いたのは実に1738年のこと。高い技術力を持っていた彼はオートマタ(機械人形)を時計に組み込み、貴族たちの間でムーブメントを起こします。その後スペイン、フランスなど世界を旅し、中国や日本でもビジネスを展開しました。現在の主力モデルでも、18世紀に制作されたポケットウォッチをイメージした重なり合う上下2つのダイヤルがデザインアイコンとなっており、長い歴史をその腕に感じることができるでしょう。ブランドとしては紆余曲折がありましたが、当時の懐中時計に使われていたエナメルを文字盤に使用したり、オートマタモデルを発表したりと、創業時からブレない時計作りを行っています。
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『ユリス・ナルダン』
ユリス・ナルダン氏が、スイスにて自らのブランドを立ち上げたのが1846年のこと。当初は航海用の時計であるマリーンクロノメーターを手がけていました。そのスタートを忘れないために、ブランド設立150周年となる1996年には「マリン クロノメーター1846」を発表しています。その後は、天文レギュレーターやポケットウォッチ(懐中時計)の世界でも名作を続々と発表し、確固たる名声を手にしました。近年でも超複雑時計を数多くリリースするなど、マニュファクチュールとしても時計マニアを常にワクワクさせてくれる存在です。
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『パルミジャーニ・フルリエ』
『パルミジャーニ・フルリエ』の創業者ミシェル・パルミジャーニ氏は名うての時計師でした。そして、パテック・フィリップミュージアム所蔵の歴史的な傑作を修復したことで大きな評判を得ます。そして1996年、スイスの時計作りの伝統を守るべく、自らのブランド『パルミジャーニ・フルリエ』を発足させたのです。
完全自社製造のマニュファクチュールの道を歩み始めた同ブランドは、2004年、自動車メーカー『ブガッティ』とコラボし、アヴァンギャルドなエンジン型の腕時計を発表、さらに2006年には『エルメス』とパートナーシップを結び、同ブランドの革ベルトはすべて『エルメス』製になります。自社で設計できる強みを生かし、『パルミジャーニ・フルリエ』は、独創的で非常に手の込んだ時計を製造するマニア垂涎のブランドに成長しました。こちらのモデルも、時刻と共に伸縮する針により、オーバル型のケースにぶつからず回転する複雑機構を搭載しています。エレガンスと遊び心が同居する作りは、高級腕時計ならではといえるでしょう。
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『クエルボ・イ・ソブリノス』
ブランドの由来は、19世紀後半からキューバ・ハバナで高級宝飾店「La Casa」を経営していたクエルボ一族。この「La Casa」は、ヘミングウェイ氏、チャーチル氏、アインシュタイン氏などを顧客に持つサロン的な名店でした。のちにヨーロッパに進出したクエルボ一族はスイスで時計製造をはじめ、キューバテイストのスイスウォッチを作りあげたのです。1950年代、キューバ革命によりブランドは休眠時期に入るものの、2002年復活を果たします。「プロミネンテ」はブランド復活後、2003年に初めて発表された3モデルのうちの1つで、ブランドの顔的存在。レクタンギュラーケースのなかにアールデコを表現し、洗練された大人の腕元を演出してくれます。オールブラックなら、さらにモダン顔に。
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『グラハム』
「クロノグラフの父」と言われる17世紀のイギリスの天才時計師ジョージ・グラハム氏の名を冠し、1995年に創立された新興ブランドが『グラハム』です。イギリス時計がテーマですが、生産は本拠地であるスイスのラ・ショー・ド・フォンで行っています。主力はもちろんクロノグラフ。代表作はこちらの「クロノファイター」。9時位置のトリガーがこのモデルの最大の特徴になっています。これは第二次世界大戦時、爆撃機のパイロットがグローブをつけたまま、親指でクロノグラフを操作できるようにした英国空軍用時計にインスピレーションを受けたもの。メカメカしいギミックとフォルムが男心をくすぐるユニークピースです。
海外での取材経験も多数。時計専門ライター
夏目 文寛
出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーのleather bagに。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。