機能に一切の妥協なし。プロスペックスの人気モデルを完全網羅
『セイコー』が世界に誇るリアルスポーツウォッチ『プロスペックス』。“陸・海・空・走”の各プロフェッショナルが、その機能と設計を賞賛する数少ない本格派である。機能もデザインもプロ仕様。『プロスペックス』について知る
2019年に、高級ライン「LXライン」のリリース、創業の地である銀座において世界初のオンリーショップをオープンするなど、ますます勢いを増す『プロスペックス』。同ブランドはいくつかのラインから構成されており、それらは大きく4つのジャンルに分けられる。
国産初のダイバーズを起源とする“海”の「マリーンマスター プロフェッショナル」と「ダイバースキューバ」。“陸”における過酷な環境に耐える「ランドマスター」及び「アルピニスト」、「フィールドマスター」、「ランドトレーサー」。パイロットが必要とする“空”に関する計器機能を備える「スカイプロフェッショナル」。そして全ランナーをサポートする“走”の「スーパーランナーズ」だ。とりわけ『プロスペックス』を語るうえで欠かせないのがダイバーズウォッチで、個性的なスタイルから“ツナ缶”の異名で知られるモデルは、歴代を通して『セイコー』が技術の粋を集めて開発してきた歴史を持つ。
男が惹かれるハイスペック。“技術の『セイコー』”の本気
『プロスペックス』の名を冠する以前、1965年に『セイコー』は日本初のダイバーズを開発した。当時では画期的な150m防水を備えたこのダイバーズは、翌年から4回にわたって南極観測越冬隊の装備品に選ばれ、極寒の地で耐久性の高さを証明したという。そのようなハイスペックと最適なデザインをベースとするコンセプトによって、『セイコー』のスポーツウォッチは開発されてきた。
例えば「マリーンマスター プロフェッショナル」は飽和潜水に対応している。飽和潜水とは、通常の酸素ボンベを使った空気潜水では到達できない深度(作業内容にもよるが、およそ深度60m以深)へ潜る際に使われる技術で、特殊な訓練を受けた潜水士のみが行える。これには酸素よりも密度の低いヘリウムを混合した加圧状態の空気に人体を慣れさせるのだが、身の回りの持ち物も同じ混合ガスにさらされる。そのため防水性のある腕時計でも内部にヘリウムが入り込んでしまい、再び地上に戻るための減圧工程の際に腕時計内のヘリウムが膨張し、風防ガラスやリューズを破損してしまう。
そこで「マリーンマスター プロフェッショナル」は独自の構造で気密性を高め、ヘリウムなどが一切入り込まない仕組みを作り上げた。このような完全密閉型の飽和潜水対応ダイバーズは類がなく、プロ潜水士に絶賛されている。そのほかの『プロスペックス』も、その道のエキスパートが使うことを前提に考案されたモデルが多くを占めており、スペックオーバーといえるほどの充実の機能が体感できる。
4つのコレクションからおすすめの『プロスペックス』をご紹介
残念ながら『セイコー』のスポーツウォッチの頂点を担う「LXライン」はオンライン販売を行っていないため、紹介することが出来ない。しかし、『プロスペックス』の魅力を少しでも深く知ってもらうため、“陸・海・空・走”のカテゴリごとの主要モデルと売れ筋モデルをピックアップしていこう。考え抜かれた機能やデザインを軸に、その完成度を掘り下げていく。
▼海:バリエーション豊富。男の腕もとにタフな1本を
世界に『セイコー』の名を知らしめたきっかけの1つが、クオリティの高いダイバーズの存在である。現在は、飽和潜水対応の「マリーンマスター プロフェッショナル」と一般的な空気潜水用の「ダイバースキューバ」に分別される。
モデル1
マリーンマスター プロフェッショナル SBDX013
衝撃耐性を高めるセラミック製の外胴プロテクターを備えたスタイルから、“ツナ缶”と呼ばれる屈強なダイバーズの自動巻きモデル。『セイコー』オリジナルの硬質コーティングを施した純チタン製ワンピース構造ケースやL字型パッキンを用いて気密性を上げ、ヘリウムガス排出バルブなしで飽和潜水に対応する。逆回転防止ベゼルは硬質加工したステンレス製だ。ダイビングスーツの上からでも着用しやすい、強化シリコン素材の蛇腹式ストラップ。1,000m防水。
モデル2
マリーンマスター プロフェッショナル SBBN025
上の「SBDX013」とデザインやマテリアルはほぼ共通だが、自動巻きの「SBDX013」が直径52.35mm、厚さ17.19mmなのに対し、クォーツを搭載している「SBBN025」はひと回り小さい直径49.4mm、厚さ15.3mmを実現。両機の先代にああたるモデルは市販品からランダムに選ばれて無人探査機「かいこう7000II」によって深海へと運ばれ、極度の水圧がかかる3,000m以深でも正しく稼働していることが確認されたという逸話を持つ。この1本も、その設計を受け継ぐ1,000m飽和潜水用防水のモデルとなっている。3時位置に曜日・日付表示を落とし込んだ実用派。
モデル3
ダイバースキューバ SBDY009
ビジネス時にも着用できるよう、ケースとブレスレットにステンレススチールを取り入れた空気潜水用ダイバーズ。潔いカットの入ったラグの形状から“サムライ”の愛称で呼ばれることもあるモデルだ。上2つの「マリーンマスター プロフェッショナル」とは異なり、裏蓋にスクリューバックを使うことでコストを抑えつつも気密性を維持、一般的なダイビングには十分な200m防水を確保した。加えて4,800A/mの直流磁界にさらされても影響をうけない耐磁性能、逆回転防止ベゼル、日付表示を装備。ムーブメントには『セイコー』が誇る実力派、4R35を搭載した。直径43.8mm、厚さ13.41mm。
▼陸:極地に挑む冒険家のためのアドベンチャーウォッチ
世界最高齢、80歳にしてエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎氏が監修した「ランドマスター」を旗艦モデルとするのが、“陸”の『プロスペックス』だ。現在では「フィールドマスター」、「アルピニスト」、「ランドトレーサー」と多数のラインがここに該当しており、主力のダイバーズを追い落とす勢いを見せている。登山家を支えるタフな作りや、あらゆる環境情報を表示する機能を持った冒険時計たちは、ギア好きなら一見の価値あり。
アイテム1
ランドマスター SBDB015
冒険家、三浦雄一郎氏が開発に携わり、実際に2013年のエベレスト制覇の際に携行していた腕時計の市販モデル。標高が高まれば空気は薄くなり、思考力が落ちるため、登山時計は視認性が第一に優先すべき機能となる。そのため「SBDB015」は、夜間や悪天候でも読み取りやすい太い針とインデックスを取り付け、残光時間を約60%向上させたルミブライト夜光を塗布。自動巻きとクォーツを融合した高性能な『セイコー』独自のハイブリッド型ムーブメント、スプリングドライブを搭載している点も注目に値する。直径横46.7mm、厚さ14.2mm。10気圧防水。
アイテム2
ランドマスター グレートトラヴァース SBED007
世界初のGPSソーラーウォッチ、「アストロン」の技術を応用した「ランドマスター」。ソーラーで駆動し、GPS衛星から得るデータによって世界40タイムゾーンの正確な時刻へと自動修正する。「SBDB015」同様にケース上部にリューズを設置することで手首の動きを妨げないと同時に、ウェアを脱ぎ着する際の引っ掛かりを防いでいる。純チタンケースは、直径48.76mm、厚さ15.2mm。ウェア上からの装着を可能にする、エクステンダー機能付きブレスも純チタン製のため軽量だ。ベゼルは耐傷性に優れるセラミック。20気圧防水。
アイテム3
フィールドマスター SBEP003
クリエイティブ・コンサルティングファーム、「LOWERCASE(ローワーケース)」代表の梶原由景氏が監修したデジタルウォッチ。1970年代にセイコーが生んだ2つのヒストリカルモデルからインスパイアされた意匠に、レッド&ブルーの回転ベゼルがアクセントとして存在感を放つ。ストップウォッチ(1/10秒~10時間まで計測)、アラーム、タイマー、フルオートカレンダー、ワールドタイム、ELライトなど多彩な機能を搭載。直径49.52mm、厚さ14.14mm。20気圧防水。
アイテム4
アルピニスト SBDC091
一見クラシカルな自動巻き時計だが、その正体は20気圧防水と内転リングによる簡易方位計を備える本格派フィールドウォッチ。内転リングは4時位置のリューズにより操作可能だ。ムーブメントもポピュラーな4R35より精度を高めた6R35を搭載。同ムーブは最大巻き上げ時に約70時間の連続駆動を誇っており、実用性も申し分ない。昨今カラーウォッチの先鋒をいくグリーンをメインカラーとしているのも、うれしい話だ。『プロスペックス』の中では落ち着いた顔立ちなので、オンのシーンでも積極的に登用したい。
アイテム5
ランドトレーサー SBEM003
大自然を個人で楽しむだけでなく、共有するための機能を備えているのが「ランドトレーサー」だ。高度、気圧、温度、方位などの高度な計測機能に加え、登山ルートを3Dで記録するフィールドログ機能を搭載しており、専用アプリと連携することでSNSシェアも簡単に行うことができるのだ。また、アプリ上ではログのタイムラインに写真やコメントを添付することで自分だけのルートを作ることも可能。また、20気圧防水にソーラー充電機能も装備し、“さすがセイコー”と唸らせられるスペックを有している。
▼空:計器然としたデザインが、男心をくすぐる
飛行機のコックピットに並ぶメーターパネルのようなメカニカルデザインが、いかにも腕時計が本来備える“計器”という役割を思い起こさせる。それが「プロスペックス スカイプロフェッショナル」が持つ機能美だ。
アイテム1
スカイプロフェッショナル SBDL029
現在でこそ飛行機の操縦席にはあらゆる計器が備えられパイロットの負担は減ったが、かつては航続可能距離や現在地の把握に至るまで操縦者自身が計算していた。そのためパイロットウォッチは必需品だったのである。その当時の意匠を象徴する円形計算尺を装備しつつ、最新のソーラー駆動システム、クロノグラフ(1/5秒~60分まで計測)、アラームなどを搭載。スーツにも合う直径43mm、厚さ12.3mmのステンレススチールケース。10気圧防水。
アイテム2
クロノグラフ SSC631
日本国内では正規取り扱いのない海外流通の2017年モデル。フライトコンピューターとも呼ばれる計算尺機能を持った回転ベゼルとレザーストラップを、空との親和性が高いネイビーブルーにしてオンオフ両用できるデザインを実現。直径45mmのステンレススチールケースに、フル充電で6か月間働くソーラー駆動ムーブメント、キャリバーV192を搭載する。最小1/5秒~最大60分まで計れるクロノグラフのほか、ワールドタイムやデイト表示を備える。10気圧防水。
▼走:ビギナーからアスリートまで。本格派のランナーズウォッチ
『セイコー』はIAAF世界陸上や東京マラソンのオフィシャルタイマーを担うなど、1964年の東京オリンピックより陸上競技との結び付きが強い。その経験を活かしたランナーズモデルの開発にも積極的であり、優れたコレクションを輩出している。上記3カテゴリとは毛色が異なるが、これもまた『プロスペックス』の1つの形だ。
アイテム1
プロスペックス スーパーランナーズ ソーラー SBEF045
ストップウォッチ(1/100秒~100時間まで計測)、最大300件のラップメモリーなどのランナーに不可欠な機能を充実しつつ、電池交換不要のソーラー駆動を採用したランニングウォッチ。大人の着こなしにも馴染みそうな渋いパープルを挿し色としたモノトーンボディが印象的だ。日常の使用でも役立つフルオートカレンダーやワールドタイム、LEDライトも備える。ランニングがトレンドに上がっている今、1本持っておいて損はないスペックだ。サイズは縦45mm×横43.7mm、厚さ8.5mm。
アイテム2
スーパーランナーズ ランニング SBEH003
上記モデル同様に基本的なスペックを備えつつ、実際のマラソンでの使用を想定した便利機能を備えたのがこの1本。なんとコース場に敷設されたマットに反応し、正確なラップを自動で取得してくれるのだ。ソーラーによる駆動ではないが、途中で不意に切れる心配がない分、実際のコース上では安心ともいえる。汗や雨に濡れても安心な10気圧防水。縦52mm×横46mm、厚さ14mm。
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雑誌やWEBを中心に活動するモノ系フリーライター。時計やクルマへの趣味が高じ、それらを専門的なジャンルとしている。最近欲しいモノは、同い年のアンティークウォッチ。