手が届く傑作から、超絶技巧の名品まで。モーリス・ラクロアの腕時計を語る
『モーリス・ラクロア』はスイスの腕時計ブランド。手頃な価格で“いいモノ感”あふれる傑作を送り出す新鋭にフォーカスし、その魅力や至極のラインアップをお届けします。腕時計大国のスイスが誇る気鋭。『モーリス・ラクロア』に注目
『ロレックス』をはじめ『オメガ』や『タグ・ホイヤー』など、知名度抜群の高級ブランドを輩出する腕時計大国スイス。創業から100年を超える名門が顔を揃える中、新興ブランドも着々と評価を上げているんです。
その筆頭格が『モーリス・ラクロア』。その名が登場したのは1975年のこと。とはいえ、『モーリス・ラクロア』の母体は1946年から優れた腕時計を生み出してきたデスコ・フォン・シュルテル社。ブランド誕生時からハイクオリティなラインアップを展開し、瞬く間に評価を得ます。ムーブメントを自社開発し、スイス伝統のクラフトマンシップを守りながら、独創的で優美なデザインを両立させているのが特徴で、マニアも注目する“掘り出し”ブランドなのです。
なぜ『モーリス・ラクロア』は玄人に好まれるのか
『モーリス・ラクロア』は、スイスの腕時計作りの伝統を踏襲した堅実なモノ作りと、高いデザイン性によって、腕時計マニアの間でも人気を博しています。そんなブランドの魅力を3つのポイントに分けて紹介しましょう。
魅力1
スイスのマニュファクチュールながら手の届く価格から展開
マニュファクチュールとは、ムーブメントを自社で開発できる企業のこと。腕時計メーカーなら当たり前と思うかもしれませんが、誰もが知っている超有名ブランドでも、ムーブ専業メーカーから購入して自社用にカスタマイズしていることが多いのです。
時計界において自社でムーブメントを開発できるということは、優れた技術力の証明。つまりマニュファクチュールである『モーリス・ラクロア』は高い技術力を持っているブランドということになるのです。一般的にマニュファクチュールブランドの腕時計はお値段が高めですが、『モーリス・ラクロア』に限っていえば違います。50万円を超えるモデルもありますが、10万円から買えるモデルもラインアップしているのです。
魅力2
『モーリス・ラクロア』ならではの独創的なデザインの腕時計を展開
中身には伝統的なスイスの高精度機械を搭載する一方、『モーリス・ラクロア』のルックスはきわめて独創的。アシンメトリーなダイヤルや、スケルトン構造、繊細な加工によって、ひと目で『モーリス・ラクロア』とわかるアイコニックなデザインが有名です。それでいて決してエレガントさを失わないところが同ブランドの強さ。スポーティなモデルでもスーツスタイルでも着けこなせる汎用性を持っているのです。ドイツの高名なデザイン賞、レッド・ドット デザインアワードの獲得も納得ですね。
魅力3
老舗に引けを取らない、超絶技巧の数々
特殊機能が付加された腕時計を生産できること。これは時計ブランドの格を表すひとつのベンチマークになっています。というのも、クロノグラフやムーンフェイズなどの特殊機能は構造が複雑なため、技術力はもちろんのこと、設計、生産、アフターケアに至るまで、ブランドの総合力が問われるから。実は『モーリス・ラクロア』が得意とするのがレトログラードやムーンフェイズ、クロノグラフといった特殊機能なのです。新興ブランドとしては、これ自体も驚くべきことですが、同じ機構を持った名門ブランドよりも、かなりリーズナブルに手に入れられるのもうれしいポイントです。
『モーリス・ラクロア』を語るなら、知っておきたい10本
高い技術と抜群のデザイン、それでもって超名門ブランドよりもお買い得。3拍子揃った『モーリス・ラクロア』の逸品を10本紹介しましょう。
アイテム1
マスターピース カレンドリエ レトログラード
『モーリス・ラクロア』が技術の粋を結集するフラッグシップモデルが「マスターピース」シリーズ。同モデルはレトログラード針(10時位置)で日付を表示、6時位置にはムーンフェイズを搭載したコンプリケーションウォッチ。さらには曜日表示や、パワーリザーブ表示まで備わっています。これの機能を駆動させるのは、自社開発ムーブメントのML190。スケルトンの裏側から見えるそれは美しいのひと言。
アイテム2
アイコン クロノグラフ
2016年から展開する新しいエントリーラインが「アイコン」です。デザインは1990年代に一世を風靡したモデル「カリプソ」をイメージしたもの。ポイントとなるベゼル上に配置されたブロックは、ポリッシュに磨き上げられ、10万円台で買える腕時計とは思えない高級感が漂います。美しく面取りされたケースやブレスレットも“いいモノ感”満載です。
アイテム3
アイコン オートマチック マーキュリー
元々クォーツモデルからスタートした「アイコン」ですが、機械式ムーブメント搭載モデルも続々登場。これまではオーセンティックな3針とクロノグラフモデルが主でしたが、こんなユニークなモデルもリリースされています。その特徴は“時刻を示さない針”。通常時分針は12時位置から動かず固定されているのですが、腕時計を見ようとする人の動きを感知した時だけ現在の時刻を指し示すという複雑機構を搭載しているのです。オーナーが求めるときにしか時刻を表示しないというのも、愛着が湧く理由になりませんでしょうか。
アイテム4
アイコン ヴェンチュラー
「アイコン」の特徴といえば、ベゼルをつかむように配置された6本のツメ。そのツメをデザインとして活用し、ダイバーズモデルとして生まれ変わったのがこの「アイコン ヴェンチュラー」です。古典に倣ったドットインデックスやバータイプの時分針が「アイコン」の新たな魅力を教えてくれるようです。もちろん、ただ見てくれだけダイバーズにしないのが『モーリス・ラクロア』の良いところ。今作も、300m防水を備えた高機能な1本に仕上がっています。
アイテム5
マスターピース スクエアホイール
スイスの名門時計専門学校HE-Arkと共同開発したユニークピース。特徴は何といっても6時から9時位置に配置された歯車の形状でしょう。常識を覆した四角形とクローバー型の歯車が、ダイヤルで1分間に1回転するという驚きのギミックを搭載し、多くの腕時計ファンをうならせました。ムーブメントには自社製の自動巻きML156を採用しています。
アイテム6
マスターピース ミステリアス・セコンド
『モーリス・ラクロア』の複雑機構と聞いて、このモデルを思い出す方も多いのではないでしょうか。スケルトン調になったダイヤルのあしらいも見事ですが、特徴的なのは6時位置に大胆に配された秒表示。ブルーの秒針はダイヤル上に固定されておらず、刻々と円運動を行いながら時間を指し示します。発想からして型破りな「ミステリアス・セコンド」は、同ブランドの高い技術力を裏付けるモデルなのです。
アイテム7
ポントス デイデイト
エントリーモデルとして絶大な人気を得ているシリーズが「ポントス」です。エッジィな多角アプライドインデックスは存在感十分。そのうえダイヤルも立体的な造形を採用し、構築的な美しさにあふれています。仕上げを変えた5連ブレスで高級感もありますし、オリジナリティ溢れるデイデイトを搭載した機能性もビジネスシーンでは役に立ちますね。
アイテム8
ポントス S ダイバー
「ポントス」のダイバーズモデル「ポントス S ダイバー」。防水性能はなんと600mにも及ぶ、プロフェッショナルダイバーズです。サイズも43mmと本格ダイバーズにしては小振りで腕馴染みも抜群。デザインへの評価も高く、2014年には「レッド・ドット デザインアワード」を受賞しました。今回紹介したモデルは、ブラックPVD加工を施したケースに、針とリューズに施したオレンジの挿し色が映えるスタイリッシュなモデルなため、コーデの格上げにも一役買ってくれますね。
アイテム9
ポントス クロノグラフ
インダイヤルをシルバーで縁取り、スポーティに仕上げた「ポントス」のクロノグラフ。カジュアルスタイルにも合いますが、ラッカー仕上げされたダイヤルの深みある光沢が大人っぽい雰囲気を醸し出しているため、スーツにもそつなくマッチするオールラウンダーモデルです。シースルーバックになっており、美しく磨かれたムーブメントも堪能することができます。
アイテム10
レ・クラシック
「レ・クラシック」ラインより、オーセンティックな3針ウォッチをご紹介。気品ある細身のドーフィン針にブルーをポイントで落とし込んだ端整な顔立ちは、ビジネスシーンにももってこいでしょう。ダイヤルカラーは、落ち着きと洗練を腕元に与えるアンスラサイトを採用。ケースサイズも40mmと馴染みも良く、1本目の『モーリス・ラクロア』としても間違いありません。
海外での取材経験も多数。時計専門ライター
夏目 文寛
出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーのleather bagに。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。