機能も見栄えも欲張る。エドックスが本物志向の大人から密かに人気
スポーツウォッチの名作を数々輩出してきた『エドックス』は、2007年に日本上陸を果たした。圧倒的なスペック、クールなデザイン、高コスパで市場を席捲し続けている。知る人ぞ知る。スポーツウォッチの名門『エドックス』
昨今の機械式時計は高級化の傾向が強く、100万円を超えるモデルもめずらしくない。しかし“時計好き”や“ビギナー”を増やすには、手の出しやすいプライスのモデルが不可欠だ。そういった難問に1つの回答を出したのが『エドックス』で、ラインアップは共通で良心的な価格かつコストパフォーマンスに優れる。マッチョなデザインも特徴だが細部は洗練されており、『ビームス』や『バーニーズ ニューヨーク』といった一流セレクトショップも取り扱うなど、ファッション性も高く評価されている。
1900年代のスイス時計業界を代表する、重要なブランドの1つだった
創業者のクリスチャン・リュフリィ フルーリー氏は、若い頃からスイスの時計職人のもとで修業し、1884年に妻の誕生日プレゼントとして自らデザインから製作まで行った懐中時計を贈った。この時計の出来に自信をつけた彼は独立を決意し、ギリシャ語で“時間”を意味する『エドックス』を立ち上げることになる。その後、1900年に砂時計のロゴマークを掲げた同社を立ち上げ、世界的な時計会社へと発展していった。
第二次世界大戦後、『エドックス』は事業の拡大を狙って新社屋を建設。当時、スイスでもっとも近代的な時計工場と評され、1950年代に入ると500人の技術者を抱える巨大ブランドへと成長したのである。1960年代からは、現在も主軸であるスポーツウォッチの開発に重点を置くようになり、優れた防水機能で時代を先取りした「デルフィン」や、当時世界最高レベルの防水スペックを誇った「ハイドロサブ」といった傑作ダイバーズなどを生み出してきた。
スポーツシーンと密接な関係を持つ『エドックス』
傑出したスポーツウォッチを世に広めるべく、『エドックス』はこれまでに数々のスポーツイベントでスポンサーや公式計時を務めてきた。古くは1968年のメキシコ五輪でスペインチームをスポンサードしたほか、近年では海のF1と称されるパワーボートレース「クラスワン」、FIA(国際自動車連盟)が主催する「WRC(世界ラリー選手権)」のタイムキーパーを担うなど、各種スポーツとの関わりによってブランドの認知度やスポーツウォッチのイメージを広めてきた。
時代を先取りした『エドックス』の技術と、それらを象徴するモデル
1960年代に最盛期を迎えた『エドックス』は、時計界に数多くの革新的な技術をもたらしたことでも知られる。とくに防水性、ワールドタイム機能、薄型化におけるチャレンジングな発明は、同社の歴史を語るうえで外すことはできない。
1961年
ねじ込みリューズを用いない、200m防水時計「デルフィン」
『エドックス』が新しいスポーツウォッチの研究に着手した初期にあたる1961年、当時では画期的な「ダブル-Oリング」の発明・特許取得に成功した。これはリューズが非ねじ込み式ながら潜水に対応する200m防水をクリアする機構で、搭載するダイバーズとして「デルフィン」を新開発。オリジナリティあふれるビス打ちベゼルや、シンプルな針とインデックスで構成した読み取りやすい文字盤など、完成度の高いデザインも高い評価を受けた。
1970年代
世界初のワールドタイマー搭載時計「ジオスコープ」
1970年代に突入すると、大勢を運ぶジャンボジェットやマッハ2で飛ぶコンコルドが就航するなど、ビジネスや旅行で海外へ渡る機会が急速に増えた。そこで『エドックス』は複数の時間帯を表せる腕時計の需要をいち早く察知し、先駆けてワールドタイム表示を実用化した「ジオスコープ」を開発。主要な50都市の時刻を容易に知ることができる便利な機能は、その後、各ブランドから登場するワールドタイムモデルの指標になった。
1998年
わずか1.4mm。世界最薄ムーブメントを載せた伝説の「レ・ベモン」
『エドックス』のあくなき挑戦はムーブメントにも広がり、1998年にはカレンダー表示を備えながら厚さわずか1.4mmという驚異的なメカを開発。同時に世界最薄ながら流麗な美しいさも併せ持つ、ドレスウォッチ「レ・ベモン ウルトラスリム」を発表する。現行は、オリジナル譲りの薄さやクラシックスタイルを踏襲しつつ、文字盤からテンプの動作が見えるオープンハートなどのトレンドを取り入れた、趣味性の高いラインアップも揃えている。
タフネスを体現。『エドックス』のスポーツウォッチ4モデル
『エドックス』人気を支えるのが、個性豊かなラグジュアリー系スポーツウォッチたちだ。各ステージに合わせたシリーズがラインアップしており、実戦で培われたタフネスと機能的なデザインを高次元で両立している。
モデル1
クロノオフショア1 カーボン クロノグラフ オートマチック Ref.01125-CLNBUN-NINBU
世界最高峰のパワーボートレースをモチーフとイメージして作られた大ヒットクロノグラフに、ブランド初となるカーボンケース&ベゼルを採用した2018年の発表作。カーボンの軽量ながら強度や弾性率に優れる特性に加え、形成する層の素材感をデザインに活かした。500m防水、逆回転防止ベゼル、飽和潜水対応のヘリウムガス排出バルブなど、プロ潜水士必須のダイバーズスペックを搭載。シースルーバック。ラバーストラップ。ケース径45mm。自動巻き。
モデル2
グランドオーシャン クロノグラフ オートマチック Ref.01123-37RBU5-BUIR5
『エドックス』が公式計時を担当するヨットのグランプリレース「エクストリーム セーリングシリーズ」の世界観を表すコレクションに、海を彷彿とさせるブルーとラグジュアリーなローズゴールドカラーを組み合わせた1本。ねじ込み式リューズや極厚のサファイアクリスタル風防などの採用により、クロノグラフながら300m防水を実現した。直径45mm、厚さ15.2mmの存在感あるケースは、PVD加工したステンレススチール製。自動巻き。
モデル3
デルフィン オリジナル クロノグラフ Ref.10110-3M-NIN
初代「デルフィン」のコンセプトを継承し、視認性の高い黒文字盤と200m防水を備えるクォーツ・クロノグラフ。43mmケースと5連ブレスレットに、耐食性に優れ、アレルギーを引き起こしにくい高級な316Lステンレススチールを採用する。12角形ベゼル上のビス留めや、あえてスモールセコンドと30分積算計に絞った2カウンターなど、スマートなデザインにまとめた。無反射コーティングを施したサファイアクリスタル風防をセット。自動巻き。
モデル4
クロノラリー クロノダカールIII リミテッドエディション Ref.10303-TIN-NV
世界でもっとも過酷な耐久レースと呼ばれる「ダカールラリー」の公式計時を担当する同社が、世界限定1,000本のオフィシャルモデル第3弾を製作。ドライバーズウォッチとしての機能を優先し、リューズとプッシャーの操作系をケース左にレイアウトしている。反対の右サイドには、シリアルナンバーを刻印したプレートをセット。直径45mm、厚さ14mm厚の軽量なチタニウムケースに、ラバーストラップを備える。100m防水。クォーツ。
『エドックス』のエレガンスを担う、2つのシリーズ
『エドックス』の魅力はスポーツウォッチだけに留まらない。ドレス系モデルも充実していて、不変的なクラシックデザインのコレクションを展開している。ディテールの設計や仕上げにこだわりを持ち、スポーツ系同様に驚きのコストパフォーマンスを誇る。
モデル1
レ・ベモン オープンハート Ref.85021-37R-NIR
1998年発表の伝説的なワールドレコードモデルから続くトラッドスタイルを守りながら、6時位置にツインブリッジ式テンプの運動が見える“オープンハート”を設置した美麗な1本。316Lステンレススチール製ケース(直径42mm、厚さ9mm)にゴールドPVDを施し、同色に合わせた指針と楔型インデックスを光沢感のあるブラックダイヤルにセットした。ドレスウォッチではめずらしく、リューズはケース左に。シースルーバック。自動巻き。
モデル2
レ・ヴォベール オープンハートオートマチック Ref.85014-3-BUIN
多くのスイス時計ブランドにとって、ジュラ山麓にある時計製造発祥の地、レ・ヴォベールは特別な土地である。『エドックス』も同地出身であり、その美しい景観や伝統技術に敬意を表するシリーズとして「レ・ヴォベール」は生まれた。大胆にも文字盤上部をスケルトン化したオープンハートモデルの最新バリエーションは、シックなダークネイビーを採用。同色のレザーストラップでコーディネート。直径43mm、厚さ10mm。自動巻き。
雑誌やWEBを中心に活動するモノ系フリーライター。時計やクルマへの趣味が高じ、それらを専門的なジャンルとしている。最近欲しいモノは、同い年のアンティークウォッチ。