ビッグ・バンから読み解くウブロ。時代の寵児に愛されるブランドを知る
異素材を組み合わせたコレクションで時計界に旋風を巻き起こした『ウブロ』。とりわけ「ビッグ・バン」はシンボリックで、ブランドに唯一無二の価値をもたらした存在だ。圧倒的な個性で著名人の寵愛を受け続ける『ウブロ』
1980年、フランス語で“舷窓”を意味する『ウブロ』のデビューは華々しいものだった。その名が示す通り船窓を思わせるビス留めを施した、特徴的なベゼルによる個性で話題をさらったのだ。そして2005年には傑作「ビッグ・バン」を発表し、大成功を収めることになる。その後もチタニウムやセラミック、カーボンといった先進のマテリアルを積極的に投入するなど、クリエイティブな時計作りの雄として君臨している。なお2008年にLVMHグループの傘下に入ったことでさらなる発展を遂げ、本物志向かつオリジナリティを重視する人々を中心に支持を得ている。
転機を担った「ビッグ・バン」と、それを作った男
『ウブロ』は2004年、数々のメジャーブランドで成果を出してきたジャン-クロード・ビバー氏をCEOに迎え入れた。彼はさっそく“The Art of Fusion(異なる素材とアイデアの融合)”をコンセプトに掲げ、まったく新しい腕時計のプロデュースに着手したのだった。
▼「ビッグ・バン」を手掛けたのは腕時計界のカリスマ、ジャン-クロード・ビバー氏
2000年前後、創業当初の勢いを失いつつあった『ウブロ』が起爆剤として白羽の矢を立てたのがジャン-クロード・ビバー氏だった。彼は日本発のクォーツ時計の登場によって苦境に立たされていたスイス時計界における救世主で、老舗『ブランパン』を復活させたほか、名門『オメガ』ではマーケティング面で巧みな手腕を発揮し、功績を立てた人物である。2004年に『ウブロ』のCEOに就くと、斬新なコンセプトを打ち立ててモデル開発を船頭し、翌年にブランドきってのロングセラーシリーズへと成長する「ビッグ・バン」を完成させたのである。
▼ブランドの理念を体現するモデル、「ビッグ・バン」とは
現在『ウブロ』には、異素材MIXモデルの先駆けでもある「ビッグ・バン」と、創業当時のコレクションの面影を色濃く残す「クラシック・フュージョン」という2大シリーズが存在する。どちらかといえば前者の方がメジャーだが、基本どちらもルーツをたどるとブランド初期に登場した「クラシック」にインスパイアされたディテールを備えているのだ。デザインの革新こそが同社躍進の理由と考えられている一方で、実は一貫したブランディングも持ち合わせている。
1本の腕時計で表現した、「伝統と未来の融合」
『ウブロ』創生期、世に初めて評価された「クラシック」は、ゴールドまたはステンレスのケースにラバーストラップを合わせるという従来にない独創的なスポーツテイストを特徴としていた。バリエーションによってはベゼルがビス留めされた個体もすでに存在しており、これらのシグネチャーを踏襲しつつ、「ビッグ・バン」はチタニウムやセラミックといった当時ではあまり使われていなかったパーツを組み込んだ。この挑戦こそが、唯一無二の存在価値を生んだといえる。しかもスイスメイドを厳守するという伝統性と、アバンギャルドを“融合”した側面もある。
『ウブロ』とビバー氏の出会いによって生まれた「ビッグ・バン」は、様々なバリエーションを揃えることによって、世界各国のセレブリティから流行に敏感な人々までユーザーを広げることに成功した。またアンバサダーの起用やスポンサードにおけるブランディングも、ビバー氏ならではの先見の明があってこそだった。サッカーではワールドカップの公式タイムキーパーを務め、モータースポーツでは「フェラーリ」とパートナーシップを組むなど、スポーツ界や芸術分野との結びつきを持つことでブランドの価値を高めてきたのである。
バリエーションも多種多様。自分好みの「ビッグ・バン」を探す
現在の「ビッグ・バン」シリーズは、3針式からクロノグラフ、自社ムーブメントモデルなど多彩なラインアップを誇る。またマテリアルによってプライスやカラー、質感に大きな差が生じるため、実機に触れてみることを推奨したい。
1本目
ビッグ・バン スチールセラミック Ref.301.SB.131.RX
「ビッグ・バン」の基本モデルで、ポリッシュ&サテン仕上げの直径44mmステンレススチールケースに、傷に強いセラミックベゼルとラバーストラップを“融合”した自動巻きクロノグラフ。ベゼル上の6つのビスはH型をしたチタン製で、ダイヤルにカーボンプリントを施し、クロノグラフ針に印象的な赤を用いるなど、スポーティなデザインが長年評価されている。同デザインでひとまわり小さな41mmモデルもラインアップ。シースルーバック。10気圧防水。
2本目
ビッグ・バン ウニコ ブラックマジック Ref.411.CI.1170.RX
ビッグ・バンが成し遂げた偉業が、“フュージョン=融合”と“オールブラック”の採用である。その精悍な漆黒のスタイルに、トレンドのスケルトンダイヤルと自社ムーブメント(キャリバーウニコ HUB1242)を搭載する1本がこちらだ。マイクロブラストで仕上げた45mmのブラックセラミックケースに、お馴染みのチタン製ビスを備える。ラバーストラップはブラックPVDを施したチタン製フォールディングバックル付き。シースルーバック。10気圧防水。自動巻き。
3本目
ビッグ・バン メカ-10 チタニウム Ref.414.NI.1123.RX
マニュファクチュールムーブメント、キャリバーHUB1201の搭載によって最長10日間ものロングパワーリザーブを実現。ゼンマイを格納する香箱を2つ備える精緻なメカニズムを、文字盤と裏側の両面から鑑賞することができるスケルトン仕様だ。3時位置の香箱上に赤いマークで示すパワーリザーブインジケーター、6時位置にカレンダー、9時位置にスモールセコンドの各表示を備えるなど、45mm径の世界のなかに巧みに機能を落とし込んでいる。チタンケース。10気圧防水。手巻き。
4本目
ビッグ・バン ウニコ パーペチュアルカレンダー マジックゴールド セラミック Ref.406.MC.0138.RX
『ウブロ』が独自に開発した「マジックゴールド」は、一般的な18Kゴールドの硬度が約400ビッカースなのに対し、大きく上回る約1000ビッカースを実現。そのため傷がつきにくく、美しさを保てることからゴールドの弱点を克服した理想の素材として評価が高い。そんな特許マテリアルの45mmケースに、長期間カレンダーの調整が不要の永久カレンダーとクロノグラフを備える、自社製のキャリバーウニコ HUB1270を搭載。自動巻き。世界限定100本。
5本目
ビッグ・バン フェラーリ チタニウム Ref.402.NX.0123.WR
2011年に「フェラーリ」と提携して以来、『ウブロ』は毎年のようにコラボウォッチを展開している。写真の2017年モデルは世界限定1,000本でリリースされた貴重なクロノグラフ。ブラックスケルトンダイヤルの随所にフェラーリを象徴するレッドとイエローを配色し、さらに6時位置に跳ね馬のレリーフをセットするなど、ファンの心をくすぐるディテールを備える。直径42mmのチタンケースに自社製のキャリバーウニコ HUB1243を搭載。自動巻き。
スーツにマッチする『ウブロ』なら、「クラシック・フュージョン」
『ウブロ』初期の名作、「クラシック」を継承するとともに、フュージョン(融合)のコンセプトを取り入れたのが「クラシック・フュージョン」である。「ビッグ・バン」よりも薄型でデザインも控えめなことから、ビジネスシーンにもドレススタイルにも適応するシリーズとして人気上昇中だ。近年はトレンドカラーや高級レザーを用いたユニークピースを発表し、業界に新風をもたらしている。
1本目
クラシック・フュージョン チタニウム レーシンググレー Ref.511.NX.7071.LR
クラシック・フュージョンの3針スタンダードモデル。シリーズ最大の45mmチタンケースにポリッシュ&サテンの仕上げを施し、光の陰影で異なる表情を見せるグレーサンレイの文字盤をセットした。表面がアリゲーターで裏面がラバーの独自ストラップを採用。自社製自動巻きムーブ、キャリバーHUB1112を搭載する。カラーや素材違いのバリエーションが豊富にあり、42mm、38mm、33mm(クォーツ)のモデルも存在。シースルーバック。5気圧防水。
2本目
クラシック・フュージョン クロノグラフ チタニウム グリーン Ref.521.NX.8970.LR
シンプルな2カウンタークロノグラフに、最注目のトレンドカラーであるグリーンを大胆に採用した1本。サテンとポリッシュの仕上げからなるスタイリッシュな45mmのチタニウムケースに、6ヵ所を均等にビス留めしたベゼルを備える。また、ストラップにはサテン仕上げのサンレイダイヤルと同色であるグリーンのアリゲーターストラップ(内側はブラックラバー加工)をセット。光の反射を抑える加工を施したサファイアクリスタル風防により、視認性も高い。5気圧防水。自動巻き。
3本目
クラシック・フュージョン クロノグラフ ベルルッティ スクリット オーシャンブルー 521.NX.050B.VR.BER18
革靴にこだわりを持つ人なら1度は憧れるフランスの高級靴ブランド『ベルルッティ』との“融合”によって生まれた、コレクション性の高いシリーズの2018年モデル。職人が丹念に仕上げ、『ベルルッティ』のみが使えるという貴重なヴェネチア・レザー。この美しいパティーヌ染色のレザーを文字盤とストラップに用い、腕時計を芸術品の域へと昇華させた。レザーのメンテナンスキットも収納できる専用ボックス付き。自動巻き。世界限定250本。合わせて読みたい:靴から小物まで。美しく芸術的なベルルッティのコレクション
雑誌やWEBを中心に活動するモノ系フリーライター。時計やクルマへの趣味が高じ、それらを専門的なジャンルとしている。最近欲しいモノは、同い年のアンティークウォッチ。