一度ハマったら抜けられない。ベル&ロスの名作と人気モデルを解説
フランス生まれの腕時計ブランド、『ベル&ロス』。歴史こそ古くありませんが、優れたデザインとその裏側を支える信頼性は老舗・名門にまったく引けを取りません。なぜ腕時計好きは『ベル&ロス』に魅せられるのだろう?
ブルーノ・ベラミッシュ氏とカルロス・A・ロシロ氏。創業者2人の名前を冠するフランスのウォッチメーカー『ベル&ロス』は、日本では知る人ぞ知る存在かもしれません。とはいえ、ファッション好きあれば、あの独特な角型時計に見覚えがある方も少なくないのではないでしょうか。とくに航空計器をモチーフとする角型のなかでも傑作と名高い「BR01」は、あの『ラルフ・ローレン』の広告ビジュアルでも使われて世界的に大ヒットを記録。日本でも、ファッション感度の高い有名人が愛用しています。
若いブランドながら、確かなファンを獲得している『ベル&ロス』
『ベル&ロス』の創業は1992年と、100年以上の歴史を持つブランドがずらりと並ぶ時計界にあっては決して古くはなく、むしろ新興の部類に入ります。2人の創設者はもともと高校時代の親友であり、ともに時計蒐集を趣味としていました。そんな彼らが目指したのはドイツブランド『ジン』のようなのプロフェッショナル路線であり、当初は同ブランドと技術提携を結んでいました。そのうえでフランスらしいデザイン性を融合させることで腕時計に一家言あるユーザーの審美眼にも叶い、着実にファンを獲得していったのです。
『ジン』の元で十分にノウハウを学んだ『ベル&ロス』は、2002年に同社との契約を終えて独立。ウォッチメイキングの中心地、スイスのラ・ショー=ド=フォンに自社工場を設立しました。ドイツの老舗との技術提携で培ったノウハウを下地に、新たなスタートを切ったのです。そして、「形は機能に従う」というコンセプトのもと、さらなる視認性とデザイン性を備えた高精度なミリタリーウォッチを生み出します。
『ベル&ロス』を人気ブランドに引き上げた名品「BR01」と「BR03」
”独立後”の『ベル&ロス』を一躍スターダムにのし上げたのが、今なお人気の2大名機「BR01」と「BR03」でした。ともに飛行機のコックピットにあるメーターをモチーフとし、斬新な角型ケースを採用。プロフェッショナルのための時計をスタイリッシュに表現した2本は、ブランドの揺るぎなき価値観の証左となりました。ちなみに、残念ながら今はディスコンとなっていますが、トノー型のダイバーズウォッチ「BR02」も古き良き名作として認知されています。
名品1
『ベル&ロス』といえば、これ。大迫力の46mm幅を誇る「BR01」
2005年、世界最大の腕時計と宝石の見本市「バーゼルワールド」で衝撃のデビューを飾ったのが「BR01」です。航空計器をそのまま腕元に持ってきたかのような46mm幅の角型ケースは、大振りな時計が注目されていた当時にあっても、まさに特大のインパクトを放ちました。
名作2
日本人の細腕にも合わせやすい、42mm径の「BR03」
「BR01」をケースダウンさせ、より腕馴染みを考慮したモデルが「BR03」。42mm径と日本人の腕にも合わせやすいサイズ感で、多くのファンを獲得しました。もちろん、「BR01」同様にパイロットウォッチを出自とし、「視認性」「機能性」「防水性」「高精度」という4つの基本原理を踏襲しています。
サイズも顔も千差万別。「BRシリーズ」のラインアップをチェック
「BR01」を元祖とする角型ケースの腕時計、いわゆる「BRシリーズ」は、今もブランドの根幹を支えるコレクション。近年ではカーボンやセラミックなどの先進素材を使ったモデルに加え、よりラグジュアリースポーツな側面を強調した「BR05」も登場するなど、機能性と革新をとことん追求する姿勢は腕時計に形として表れています。
モデル1
BR01-92 カーボン
ブラック&ホワイトでまとめられたシンプルな3針の「BR01」。マットブラックPVDコーディングを施したケースやラバーといった、質感の異なる黒が独特の奥行きを生んでいます。風防にはサファイアクリスタルガラスを用い、インデックスや針などのホワイト部分には蓄光するフォトルミネセンスコーティングを施すなど、デザイン性と視認性を両立。
モデル2
BR03-92 ファントム セラミック
ケースからダイヤル、ストラップにいたるまでオールブラックでまとめられた“ファントム”モデルは、日本で人気の高い「BR03」シリーズのなかでも特に多くの支持を獲得しています。こちらはセラミック製のケースを採用しており、耐傷性に優れた1本。加えて、退色しにくいといった長く愛用するのにうれしいメリットも併せ持っています。
モデル3
BR03-92 ホロラム
ラテン語で「時間」を意味するホラと、「光」を表すラムをモデル名に冠するこちらは、パイロットを誘導する滑走路の照明がモチーフ。ダイヤルは2層構造で、インデックス部分からスーパールミノバを塗布した下部プレートが覗き、同じくスーパールミノバを塗った針とともに視認性を高めています。SSケースとダイヤル表面には立体的なマイクロブラスト加工を施すことで、品良くマットな質感を実現しました。
モデル4
BR-03 92 ダイバー ブルー
「BR02」の後を美しく後継する、スタイリッシュな角型ダイバーズウォッチです。海を象徴するようなブルーカラーを基調に、300m防水、逆回転防止ベゼル、ドットインデックスなどプロフェッショナルウォッチとして十分のスペックを搭載しています。
モデル5
BR05A-GR-ST/SST
2019年に、『ベル&ロス』の新たな側面を見せつけ得たのがこちらの「BR05」。「BRシリーズ」らしいスクエアケース、ビスなど面影は残しつつ、ブレスレットと一体となったケースやスタイリッシュバトン針などのアレンジでグッと都会的な装いへと昇華しました。スポーツラグジュアリートレンドの中でも一際目を引く存在です。
人気上昇中。レトロ顔が新鮮な「BRVシリーズ」は、使い勝手も良好
ここまではアイコニックな角型ケースの「BRシリーズ」を紹介してきましたが、ラウンド型の「BRVシリーズ」も見逃せません。実は「BRVシリーズ」のほうが歴史は長く、ブランド創世記から質実剛健なパイロットウォッチにインスパイアされたデザイン&機能性で話題を集めていました。現在はケースを小型化して“第3世代”にアップデートされるなど、モダンヴィンテージな「BRV」はトレンドのど真ん中を捉えているとも言えるでしょう。
モデル1
BRV2-92 アエロナバル
フランス海軍の航空部隊をモチーフに作られた「アエロナバル」は、ブルーとゴールドからなるカラーリングで気品あるミリタリーテイストを醸し出します。これまでのラインアップから2mmダウンサイジングした41mm径で、ジャケットの袖口で邪魔にならないのもうれしいですね。
モデル2
BRV1-92 レーシングバード
プロフェッショナルウォッチにこだわる『ベル&ロス』は、時計だけでなく飛行機の機体やクルマなどを実際にデザインすることでも知られています。こちらはそんな自らが手がけた航空機「レーシングバード」にちなんだ1本。エアロダイナミクスに基づいた流麗なデザインや機体の形をしたセコンド針から、確固たる哲学が感じ取られます。
モデル3
BRV1-92 ベリータンカー
モデル2の「レーシングバード」と同様に、ブランドが自ら手がけたマシン「ベリータンカー」をイメージソースとしています。戦闘機の緊急用燃料タンクをボディのベースとし、エンジンと4輪を取り付けてレーシングカーに仕立てた「ベリータンカー」は、レトロなデザインと斬新なアイデアが特徴。それらをうまく捉え、ベージュカラーの落ち着いた印象でまとめ上げました。こちらは、タキメーター付きのクロノグラフモデル。要素は盛りだくさんですが、41mm径にうまくまとめ上げています。
モデル4
BRV126 カーボン
ブラックカーボンのパウダーでマット西上ヶ田ケースに、コントラストの効いたホワイトのインデックス、そこにオレンジの挿し色をポイントで落とし込んだミリタリー感を煽る1本。7時と8時の間にほどこされた”Ltd”のアイコンが今作が限定モデルであることを示しています。
モデル5
WW2 レギュレーター ヘリテージ
爆撃機のタイマーから着想を得たとされる1本。ゆえに時、分、秒がそれぞれ別に表示されるレギュレーター仕様で、2つのインダイヤルのうち6時位置が時間、12時位置が秒を示します。波打つベゼルや大きめの左リューズなど、独特のディテールがレトロテイストを加速させます。
「衣食蹴」をフィールドに活動中
増山 直樹
会社員として15年ほど働き、複数の出版社で若者向け・大人向けのメンズファッション各誌、サッカー専門誌、グルメ誌などを担当。現在はフリーのエディター・ライターとして活動中。これからもジャンルレス&ハピネスな感じで頑張りたいデス。