王者ロレックス。我々を惹きつけてやまない人気モデルを知る
『ロレックス』ほど機能と価値を備えるブランドも珍しい。時計界では後発ながら、革新的なアイデアと確かな技術により現在の地位に上り詰めた稀な存在。その魅力に迫る。なぜ、モノを知る大人は『ロレックス』に惹きつけられるのか
『ロレックス』を自動車業界で例えるなら、メルセデス・ベンツに近い。世界中で販売されている自動車メーカーで、頑丈、安全、信頼性も高く、もっともポピュラーな高級車といったところだ。『ロレックス』も誰もが一度は耳にしたことがあり、同じくラグジュアリーながら実用的でもある。両者とも抜群の知名度と機能性を誇ることから、憧れブランドの筆頭としてファンもユーザーも右肩上がりに増加。それぞれの最高峰へと至ったのだ。
そんな『ロレックス』の人気ぶりを証明する現象に、“デイトナマラソン”がある。これは正規輸入の「デイトナ」を買うため、毎日のよう銀座に新宿、渋谷と複数の正規店に足を運ぶことを意味する。人気モデルであるうえにほとんど入荷がなく、いつ購入できるかわからない。仕入れがあるレアケースを夢見て、店員に顔を覚えられるほど通い続けるのだ。今では「デイトナ」に限らず、ほかのスポーツ・ロレックスにも“マラソン”は波及しつつあるらしい。そんなランナーが続出するほど、『ロレックス』を買いたい人は後を絶たないのである。
ネームバリューだけじゃない。『ロレックス』の魅力
先に述べたように、『ロレックス』の設立(前身会社を含む)は時計ブランドとしては遅い1905年である。すでにスイスには創業から1世紀を超える老舗メーカーがひしめく状況で、その強敵たちと渡り合うために『ロレックス』の生みの親であるハンス・ウイルスドルフ氏は、それまで実用機能をほとんど持たなかった“腕時計”に注目し、その将来性にかけた。まだ懐中時計が全盛で、腕時計がアクセサリー的な扱いに過ぎなかった時代でのこの着眼点こそが、『ロレックス』を成功へと導くカギとなったのだった。
『ロレックス』の歴史を読み解いていくと、そのまま腕時計の歴史と重なる点が多い。まだ腕時計の精度や防水性能が信頼に欠けるものだった時代に、『ロレックス』は先駆けて完全防水のオイスターケースを実現。ずべてを手で巻かずとも、効率的にゼンマイが巻き上がる自動巻き(パーペチュアル)機構も確立した。これらは現在、高級腕時計においてはマストスペックといえるほど浸透している。さらにデザイン的にも洗練されており、オリジナルをベースにしつつ現代まで不変的なモデルが数多い。そもそもの完成度が高いためか、トレンドに流されて基本デザインを見失ったり無理な装飾、機能はほぼ取り入れることはない。そんな揺るぎないフィロソフィーも、人々を惹きつける要因だろう。
モデル選びに迷ったら、3つのポイントから探る
高級時計の選択において重要とされるポイントに、腕ツールとしての“スペック”、ダイバーズやパイロットなどの“ジャンル”、そして“リセール”がある。大金をはたくのだから買ってからの後悔は避けたいし、できれば生涯使えて、資産的な価値もあれば満足感も高まるはずだ。
ポイント1
『ロレックス』を象徴する並外れた機能を知る
「ヨットマスターⅡ」や「スカイドゥエラー」を除き、『ロレックス』は複雑機構のシリーズを展開していない。これは腕時計としての真の機能を追求した結果であり、決して技術レベルが低いわけではない。古くは1926年にオイスターケースの特許を取得し、腕時計に本格的な防水機能を持たせることに成功した『ロレックス』。金属の塊から削り出したミドルケースに、ねじ込み式のリューズと裏蓋を備えるこの仕組みは、現在でも基本設計を変えていない。そんな一つひとつの機能と発祥を読み解くことこそが同ブランドの強みを理解することであり、自分に合う1本と巡り会う機会へとつながるのだ。
ポイント2
ラインアップはスポーツ・スタンダード・ドレスに分別
『ロレックス』は「デイトナ」や「サブマリーナー」に代表されるスポーツ系のプロフェッショナルモデルのほか、「オイスター パーペチュアル」らのスタンダード系、「デイトジャスト」や「デイデイト」のドレス系を展開している。これらのオイスター パーペチュアル搭載モデルは、一部を除いて100m以上の防水スペックを備えており、両方向回転のパーペチュアルローターを採用する自動巻きムーブメントを搭載している。そのため実用性と信頼性は突出しており、あとはユーザーが着用シーンに合わせたモデル選びをする図式になっている。
ポイント3
やっぱりリセール。どのモデルが高く売れるかを知っておく
『ロレックス』のメリットとして忘れてはならないのが、抜群のリセールバリュー(売却する際の再販価値)を誇ること。モデルによって差が大きいが、超希少な人気モデル「デイトナ」(Ref.116500LN)の場合、正規販売価格のおよそ2倍で売れる可能性がある。これは需要と供給がアンバランス状態で長く続いているため。ほかにも「GMTマスターⅡ」や「サブマリーナー」などのスポーツ・ロレックスのステンレスモデルは、軒並み相場が上昇しており、これにつられて中古市場も高値で売買されている。要するに『ロレックス』以上に資産価値を見出せる腕時計は、ほかに類を見ないのである。
まずはこの10本。知っておくべき『ロレックス』の代表モデル
コンセプトが重ならないシリーズ展開で、バリエーションも充実しているのが『ロレックス』の特徴でもある。とりわけプロフェッショナルウォッチに属する人気モデルは、みんなの憧れの的であり、いつかは手に入れたい逸品が揃う。
モデル1
デイトナ Ref.116500LN
言わずと知れたフラッグシップモデルで、元々は宇宙飛行士用として開発された経緯から「コスモグラフ デイトナ」とも呼ばれる。現在ではレーシング・クロノグラフに位置付けられており、モノブロック構造のセラクロムベゼルに時速を計測できるタキメーターを刻印。最新作は2016年の誕生以来、プレミアムモデル化している。耐磁性の高い自社製の自動巻きムーブメント、キャリバー4130を搭載し、文字盤は白か黒かを選択できる。
モデル2
サブマリーナー デイト Ref.116610LN
1953年にオリジナルが発表された、民間用では初の本格派ダイバーズとして知られる。その後に登場する潜水時計が倣うこととなる完璧な設計を継ぐ現行モデルは、読み取りやすい黒文字盤に暗闇で長時間光るクロマライト ディスプレイを備え、硬質なセラクロム製の逆回転防止ベゼルを搭載し、トリプロック式リューズを採用して300m防水を確保するなど、さらなる高機能を獲得している。同型の日付表示なしも存在。自動巻き。
モデル3
エクスプローラーⅠ Ref.214270
デイトをあえて排除し、時間表示に特化した清々しいまでのダイヤルが不変的な価値を持つ3針自動巻きウォッチ。名称からも想像できる通り“探検家”をコンセプトとしており、瞬時の視認性を追求するべく3・6・9のみをアラビア数字にした。プロトタイプは人類初のエベレスト登頂者、エドモンド・ヒラリー氏に着用され、絶賛されたという逸話がある。直径は39mm、厚さは約11mmのためスーツにマッチしやすい。100m防水。
モデル4
エクスプローラーⅡ Ref.216570
「エクスプローラーⅠ」の発展型で、よりコアな“洞窟探検家”向けの機能として昼夜が識別できる24時間表示を備える。現在はベンツのマークに似た短針を単独可動できるのでこちらをローカルタイム(現地時間)に、オレンジの24時間針をホームタイム(自国時間)に設定することで、異なるタイムゾーンを同時表示できるGMTウォッチとしても利用可能だ。専用設計の自社製自動巻きムーブメント、キャリバー3187を搭載する。
モデル5
GMTマスターⅡ Ref.126710BLRO
1950年代にパンナム航空の国際線パイロット用の腕時計として採用された、初代「GMTマスター」の意匠と機能を継承する4針モデル。24時間針と回転する24時間表示ベゼルを併用することで、複雑な機構を搭載せずに第3時間帯まで知ることができる。2018年、ステンレスモデルに初めて赤青セラクロムベゼルが投入され、美しい5連リンクのジュビリーブレスレットがセットされた。高精度なキャリバー3285。自動巻き。
モデル6
ディープシー D-BLUEダイヤル Ref.126660
「サブマリーナー」の上位機種として1967年に発明された元祖「シードゥエラー」の後継モデルで、特殊な訓練を積んだ潜水士だけが行える飽和潜水に対応する機能を備える。『ロレックス』では唯一、ケース左側面にバルブを搭載して内部に浸入するヘリウムガスを排出できるほか、チタンケースバックを使ったリングロック システムを採用して驚異の3,900m防水を達成。2018年にキャリバー3235へとマイナーチェンジ。自動巻き。
モデル7
エアキング Ref.116900
航空界の創成期に寄与したオイスターウォッチへのオマージュとして誕生したルーツを持ち、現行モデル(2016年にリリース)で現代的なリニューアルを果たした。40mmへと拡大し、PCやスマホが発する磁気をシールドする機能を備えるキャリバー3131を搭載。コストパフォーマンスではブランド随一とも称され、航空機の計器を模した文字盤には象徴色のマークとロゴを配するなど、特異なデザインも注目に値する。自動巻き。
モデル8
デイトジャスト41 Ref.126300
1945年に『ロレックス』が開発した小窓に日付を表す初の自動巻き腕時計「デイトジャスト」の最新仕様で、2016年に定番ドレス系シリーズに加わった。スタンダードな36mmに比べて存在感のある41mmケースには、日差(24時間における精度の誤差)-2~+2秒という圧倒的な高精度と、ゼンマイをいっぱいまで巻き上げた状態なら約70時間連続で駆動する高機能を持ったキャリバー3235を搭載する。100m防水。
モデル9
ミルガウス 116400GV
モデル名の“ミル”はフランス語で1,000、そこに磁場の単位である“ガウス”を合わせた「ミルガウス」はその名の通り最大1,000ガウスまでの耐磁性能を備えたモデルだ。強磁性合金によりオイスターケース内のキャリバー3131を包み込むことで磁力から保護しており、1956年の登場以降、欧州合同原子核研究機構をはじめとする最前線の科学者や技術者に愛用されてきた。初期から変わらないイナズマ型の秒針は、そんな背景をも背負いながら堂々と鎮座している。自動巻き。ケース径40mm。
10本目
ヨットマスター42 226659
近年特にその人気を高めているのが、プロフェッショナルモデル「ヨットマスター」。サンドブラストとポリッシュで仕上げを変えることで視認性を高めたベゼルは耐久性にも優れており、『ロレックス』が独自に開発を行ったオイスターフレックスブレスレットとともにプロユースのための腕時計としての魅力を高めている。ケースにはスポーティなルックスを良い意味で裏切るホワイトゴールドを採用。ケース径42mm。100m防水。
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雑誌やWEBを中心に活動するモノ系フリーライター。時計やクルマへの趣味が高じ、それらを専門的なジャンルとしている。最近欲しいモノは、同い年のアンティークウォッチ。