スタイリスト×セレクトショップ。7人のおしゃれ賢者が指南する春夏の注目株と着こなし方
人気ショップでは春物が出揃い、夏物もチラホラ。はやる気持ちを抑え、まずはファッションのプロたちのお眼鏡に適ったアイテム&着こなしをチェックしていこう!きっと参考になる。ファッションを知り尽くしたプロの声
暖かい日が続く中、春アイテムの収穫に精を出している人は多いかもしれない。ただ、買い時はといえば、春モノが店頭に出揃い、来たる夏を視野に入れたアイテムがチラホラと出始めたまさにこれからの時期。せっかく物欲があるにもかかわらず買い物で失敗することがないよう、今季の注目アイテムをしっかり押さえようではないか。ということで、ファッションの第一線で活躍する7人のスタイリストたちに人気セレクトショップへ足を運んでもらい、気になったアイテムを主役に据えたスタイリングを披露してもらった。
7人の目利きと7つの人気ショップ。春夏の推しスタイリングはこれだ!
知識も経験も豊富なスタイリスト陣へは、それぞれ異なるセレクトショップからのピックアップをリクエスト。組み合わせは以下の通りだ。1.菊池陽之介×『ビームス』2.川崎英治×『ナノ・ユニバース』3.高塩崇宏×『タトラス コンセプトストア』4.川田真梨子×『シップス エニィ』5.荒木義樹×『フリークス ストア』6.杉浦 優×『エディフィス』7.松平浩市×『アダム エ ロペ』バラエティに富むアイテムの数々からプロの目とセンスによりスタイリングされた春夏の新作を、さっそく見ていこう!
1.スタイリスト菊池陽之介×『ビームス』
1979年生まれ。スタイリスト熊谷隆志氏に師事し2004年に独立。以後、メンズファッション誌を中心にWEBマガジンや広告などで活躍中。ほか、タレントや俳優などのスタイリングも手掛ける。
提案する春コーデはこちら
オーセンティックなアメカジをフォルムや柄で現代的に
「アメリカンカルチャーの魅力を発信し続ける『ビームス』にとって、やはりアメカジは欠かせません。今季もシャンブレーシャツやカーゴパンツなど、紐付いたアイテムを見かけましたが、面白いのは過去をなぞるのではなく現代的フィルターを通して表現している点。ビッグシルエットの1着やブラックウォッチ型の1本はその典型で、組み合わせることにより見た目も新鮮です。とはいえハズし過ぎも考えもの。小物に往年のアイテムを選び温故知新のバランスを取ることをおすすめします」
シャツ13,200円、Tシャツ8,250円、チェックパンツ12,100円、バケットハット4,620円/すべてビームス、バックパック15,950円/ジャンスポーツ×ビームス(ビームス 原宿 TEL:03-3470-3947)、その他スタイリスト私物
提案する夏コーデはこちら
抜けと締めを絶妙なバランスで表現したフレンチシック
「暑さへの対応に気を取られ、着こなしに隙が生まれやすい夏。とはいえ、常に気を張ろうと言っているわけではありません。要は、“抜け”と“締め”のバランスが重要です。例えば、『ビームス』ではこんな南フランスを思わせるブルトンマリンのトップスがあります。大胆に肩を落としたゆったりめのシルエットで伸び伸び袖を通すことが可能。そこへ2タックのショーツとスエード靴を添えることで大人っぽさを演出しました。このフレンチを軸としたシックとカジュアルの塩梅が、ひと味違う夏の装いを作り上げるキーとなります」
Tシャツ12,100円/オーシバル×ビームス、ショーツ8,800円、ソックス1,760円/ともにビームス、バッグ9,790円/ノーティブ/カンテラ×ビームス(ビームス 原宿 TEL:03-3470-3947)、その他スタイリスト私物
2.スタイリスト川崎英治×『ナノ・ユニバース』
1978年生まれ。スタイリスト甲斐弘之氏に師事し2010年に独立。『men’s FUDGE』などのメンズファッション誌に加え、ブランドカタログのスタイリングも担当。理路整然としたスタイルロジックに定評あり。
提案する春コーデはこちら
男らしさをキープしつつ今に寄り添う洗練のミリタリー
「時代は変わろうとも、メンズカジュアルの軸にはいつもミリタリーがあります。とはいえ、身も心も軽快でいたい春ともなれば特有の男くささはトゥーマッチになりかねません。そこで『ナノ・ユニバース』が素敵なアプローチで応えています。往年の軍ウェアをかくもモダンにアップデート。機能素材により快適性も加味されました。M-65にカーゴパンツの合わせはコスプレチックにもなりかねませんが、これなら旬のセットアップ風に装え、随所に白の抜け感を添えれば野暮ったさは微塵も感じさせません」
ミリタリーブルゾン9,350円、Tシャツ6,600円、パンツ8,800円/すべてナノ・ユニバース(ナノ・ユニバース カスタマーサービスTEL:0120-705-088)、その他スタイリスト私物
提案する夏コーデはこちら
オールブラックで仕上げたソリッドな大人ストリート
「ライフスタイルの変化に伴いより自分らしく、を志向する大人は増えています。そんな中、世代によって受け取り方の違いはありますが、やはりストリートな空気は’90年代を過ごしてきた大人たちが気張らずに袖を通せるスタイルとしてちょうどいい。『ナノ・ユニバース』で展開する七分袖Tとゆる~いパンツは往年のシルエットを思わせます。そのユルさがズボラ感を生みかねませんが、黒でまとめれば大人としての体裁を保つことが可能。あとはスニーカーやバケットハットでストリート気分をより盛り上げてください」
Tシャツ4,950円、パンツ7,700円/ともにネイビー バイ ナノ・ユニバース、ハット3,850円/フルーツ オブ ザ ルーム×ナノ・ユニバース、肩に掛けたTシャツ7,700円/ウィルラウンジ(ナノ・ユニバース カスタマーサービスTEL:0120-705-088)、その他スタイリスト私物
3.スタイリスト高塩崇宏×『タトラス コンセプトストア』
1979年生まれ。スタイリストJOE氏に師事し2010年に独立。ドレス、カジュアルからゴルフまで、手掛けるスタイリングの幅広さは業界屈指。さりげなく光る大人の品やセクシーさを落とし込む巧さは必見。
提案する春コーデはこちら
柔らかなカラーリングと素材感で魅せる爽快エレガンス
「気温が高まれば、高揚する気持ちと共にカラフル&鮮やかなカラーを取り入れたくなります。ただ、今季はぜひベージュ系に注目を。『タトラス コンセプトストア』もそこのところはよく心得ていて、こんな素敵なセットアップをセレクトしていました。スタンドカラーのラフなシャツジャケットに、そのラフさをフォローするようなスラックス然としたパンツ。微光沢の肌に馴染む柔らかな生地感は実に心地良く、そこにセットアップ特有の生真面目感はありません。随所に突き抜けるような白いアイテムを加えれば理想のカジュアルアップも叶います」
シャツ40,480円、パンツ42,680円/ともにレインメーカー、カットソー26,400円、スニーカー46,200円/ともにタトラス、キーチェーン50,600円/ヴィンテージ(タトラス コンセプトストア 青山店 TEL:03-3407-2700)
提案する夏コーデはこちら
家、街、海をシームレスでつなぐ極上素材のコンビ
「昨今、生活の変化に伴い洋服により気持ち良さを求める傾向にあります。となれば、素材感にこだわった1着は大いに味方してくれるはず。『タトラス コンセプトストア』がセレクトするシーグリーンのセットアップは、その気持ちを汲んだうってつけのアイテム。サーマルのような凹凸のある生地は肌離れが良く通気性も抜群。家で、街で、海で、常に快適をもたらしてくれます。となると、つい気を抜いてダラっとしてしまいがち。ただ、1枚でもサマになる上級カットソーを中に仕込み、黒小物を駆使することで手抜き感は払拭されます」
プルオーバー19,800円、パンツ15,400円/ともにシーグリーン、カットソー12,100円/H.I.P by SOLIDO、バッグ64,900円/メゾン マルジェラ、サンダル17,600円/ディースクエアード(タトラス コンセプトストア 青山店 TEL:03-3407-2700)
4.スタイリスト川田真梨子×『シップス エニィ』
スタイリスト石黒亮一氏に師事し2004年に独立。メンズファッション誌をはじめ、広告や俳優のスタイリングを担当。カジュアルからビジネス、さらには着付けまで、その万能さは業界内でも評価が高い。
提案する春コーデはこちら
季節感を運ぶマイルドなカラー×自由を得るシルエット
「最近は、混迷を極める状況下でおうち時間もがぜん増えましたよね。より気の置けるアイテムが、今は必要になっていると感じます。そんな声に応えるかのように『シップス エニィ』では、“ちょうどいい”アイテムが満載でした。スウェットトレンドも押さえられるパンツはリラックス感たっぷりで、タイダイ柄のTシャツが全体を明るくしてくれます。特筆すべきは破棄する予定だった食材から抽出した染料で染められたシャツ。そのやさしい色味は春先にぴったりで、おうちと街をシームレスでつないでくれますね」
シャツ13,970円、ロングスリーブTシャツ8,910円、キャップ5,500円/すべてシップス エニィ、パンツ8,910円/シップス エニィ×チャンピオン、スニーカー9,680円/シップス エニィ×ケッズ(シップス エニィ 渋谷店TEL:03-3496-0382)
提案する夏コーデはこちら
意表を突いたトップス選びが淡白回避の急先鋒になる
「Tシャツ×ショーツが主役となる夏。アイテム数のミニマム化は着こなしをイージーにしますが、差別化を図るとなればなんらかの手立てが必要です。いつもならTシャツは、クルーネックのボックスシルエットを選びたいところですが、こんなアイテムならラクに違いを見せることができます。『シップス エニィ』がチャンピオンに別注をかけた1枚は、エスニカルな空気が流れるメキシカンパーカーがベース。フードをなくしたことでその姿は実に新鮮です。さらに、涼感のある鮮やかなショーツや小物で爽やかさもアピールしたいところですね」
Tシャツ6,490円/シップス エニィ×チャンピオン、ショーツ8,470円、ソックス1,760円、帽子4,400円、バッグ3,960円/すべてシップス エニィ、シューズ36,080円/シップス エニィ×パドモア アンド バーンズ(シップス エニィ 渋谷店 TEL:03-3496-0382)
5.スタイリスト荒木義樹×『フリークス ストア』
1981年生まれ。スタイリスト堀口和貢氏に師事し2008年に独立。『men’s FUDGE』や『MEN'S NON-NO』などのメンズファッション誌で腕を振るう。クリーンかつスタイリッシュな中に、さりげない個性を感じさせる程良い抜け感こそ真骨頂。
提案する春コーデはこちら
程良くエスプリを効かせた清々しいフレンチワークで
「オーバーオールやペインターパンツが熱を帯びる昨今。それを引き金にワークへの注目度も日増しに高まっているように感じます。とはいえ、いい大人が着るなら無頼なそれとは一線を画す品の良さをさりげなく醸したいところ。そこで、『フリークス ストア』のアイテムを使いフレンチワークを表現してみました。プルオーバーのクリーンなシャツに濃紺のパンツを取り入れた王道的アプローチですが、ユルめのシルエットと随所に入れた小物の妙で今の気分とさりげない品を表現しています」
シャツ4,994円/ヒンソン×フリークス ストア、Tシャツ 3,960円、ハット3,850円/ともにロイヤルネイビー×フリークス ストア、パンツ11,880円/モンケメル×フリークス ストア(フリークス ストア渋谷 TEL:03-6415-7728)、その他スタイリスト私物
提案する夏コーデはこちら
色で洗練を、シルエットでラクを演じたフレンチリゾート
「夏に開放感に浸りたいのはいつの時代も変わりません。そこでキモとなるのは、程良い品の良さではないでしょうか。先にフレンチカジュアルを軸とした春の着こなしを提案しましたが、それを着た人物が夏を装うなら……というイメージで、『フリークス ストア』が提案するワーク感をフレンチテイストで料理。ゆったりとしたシルエットや小物にリゾート感をにじませつつ、色味を落ち着かせることで大人びた印象に仕上げています。重たさを感じる人は白シャツの肩掛けによりバランスを取ってみてください」
バスクシャツ4,994円/モンケメル×フリークス ストア、肩に掛けたシャツ5,995円/ヒンソン×フリークス ストア、ショーツ7,480円/グラミチ×フリークス ストア、サンダル10,780円/シャカ×フリークス ストア(フリークス ストア渋谷 TEL:03-6415-7728)、その他スタイリスト私物
6.スタイリスト杉浦 優×『エディフィス』
1983年生まれ。スタイリスト望月 唯氏に師事し2008年に独立。ジェンダーレスに雑誌や広告などで活躍。ラフさの中に光る洗練さ、スタイリッシュな中に潜ませた遊び心と、さりげない機微にセンスが見える。
提案する春コーデはこちら
巧妙な“違和感”で表現するセットアップのその先
「春も引き続き、セットアップの流れは継続。いや、むしろその熱はさらに高まりを見せていますね。そこで重要になってくるのがちょっとした変化や遊び。それを端的に表現しているのが『エディフィス』のセットアップではないでしょうか。一見ドレッシーに見えますが、ジャケットはなんとノーラペル。スラックスはワタリ幅を取った極太のシルエットです。さらに、緊張感を解きほぐす太ピッチのボーダーやトリコロールカラーが効いたエコバッグを添えれば気取りも気張りもない着こなしを実践できます」
ジャケット19,800円、Tシャツ 14,850円、スラックス15,950円/すべてエディフィス、シューズ31,900円/フットザコーチャー×エディフィス、エコバッグ5,500円/ヤングアンドオルセン×エディフィス(エディフィス新宿店 TEL:03-5366-5481)、その他スタイリスト私物
提案する夏コーデはこちら
時代や着こなしの行き詰まり感を打破するのは総柄
「こんな時代ですから、コーディネートのどこかにハッピーな要素を盛り込みたいところ。なので、今季は特に柄モノに注目しています。『エディフィス』で取り扱っているセラードアのパンツは、カラフルなフェザーを全体に散りばめた楽しい1本。トロみのある生地感も肌離れが良く快適にはける1本です。総柄にハードルの高さを感じる人もいるでしょうが、柔らかな色味のシンプルなトップスが派手な印象をいなす抑止力に。全体的に淡い色味になるので、強い色を小物で加えていけば、引き締まって端正なイメージに仕上がります」
Tシャツ16,500円/ループウィラー フォー ロウワーケース、パンツ22,000円/セラードア、バッグ13,970円/ノマディス、シューズ26,400円/ヒロシ ツボウチ×エディフィス(エディフィス新宿店 TEL:03-5366-5481)、その他スタイリスト私物
7.スタイリスト松平浩市×『アダム エ ロペ』
1982年生まれ。スタイリスト菊池陽之介氏に師事し2012年に独立。『OCEANS』をはじめ数々のメンズファッション誌や、広告、テレビで着こなしを提案。お笑い芸人ロッチの専属スタイリストでもある。
提案する春コーデはこちら
屋内外を自由に行き来できる気楽さとしゃれっ気の着地点
「生活様式が一変する中で、今何よりも求められているのは気張らないスタイルで家と外を往来できるバランスの良いアイテム。『アダム エ ロペ』ではそんなアイテムを多数発見しました。おすすめしたいのは、往年のアメカジやストリートを思わせるチェックシャツとワークパンツのコンビ。大定番にみる着こなしやすさとラクさがありながら、シャツはリネン特有の微光沢が上品。シルエットもとことんモダンで、スラックスライクなパンツも大人がはくにはちょうどいい。スエード靴で締めればグッとクラス感も高められます」
シャツ12,980円/アダム エ ロペ、カットソー9,900円/アニエスベー プール アダム エ ロペ、パンツ12,100円/グラミチ フォー アダム エ ロペ、シューズ36,850円/パドモア アンド バーンズ フォー アダム エ ロペ(アダム エ ロペ TEL:0120-298-133)、その他スタイリスト私物
提案する夏コーデはこちら
機能素材を足がかりにあえてのグレーをセットアップで
「夏ならば、鮮やかなカラーや楽しげな柄に手を伸ばしそうなものですが、それを逆手に取った落ち着きのあるグレーを選択するのも1つの手。セットアップの着こなしにより旬と大人っぽさの両取りも狙えます。『アダム エ ロペ』のこちらは、機能素材を採用しているので見た目以上に着やすいはず。危惧すべきは漂う堅苦しさですが、それは小物とインナーの白でフォロー。足元が黒ならば他の小物も合わせたいところを、半歩ハズしオリーブを選択。予定調和を崩すことで生まれるギャップがこれ見よがしではない変化をもたらします」
ポロシャツ7,480円、パンツ10,780円、ポーチ4,950円、サンダル12,100円/すべてアダム エ ロペ(アダム エ ロペ TEL:0120-298-133)、その他スタイリスト私物
スタイリスト×セレクトショップ=間違いなく買い!
ファッションのイロハを熟知し、常にシーンの最先端を間近で見ているスタイリストたち。セレクトショップの審美眼に加えて彼らが太鼓判を押すアイテムであれば、“買い”なのは間違いない。春の即戦力もいち早い夏のトレンドも、どちらもしっかり押さえて周囲を出し抜いてみてはいかがだろう。
--------------------------------------※掲載の金額はすべて税込価格です--------------------------------------Photo_Katsunori Suzuki
無類のスポーツ好き。得意ジャンルは革靴
菊地 亮
地方の出版社にて編集を経験した後、独立。フリーのエディター・ライターとしてメンズファッションを中心に、スポーツ、グルメ、音楽など幅広い分野で活動。現在は、生まれ故郷である岩手県、そして東北の魅力を発信すべく東奔西走中。