今、大人がはくべきデニムブランド34選。一生付き合える理想のジーンズに出会う
あらゆるボトムスの中で、一度手に入れたらもっとも長い付き合いになるのがジーンズ。それゆえ、確かなモノ作りを行うブランドをしっかり押さえておくことが重要だ。確かなモノ作りを行うデニムブランドを知って、自分の相棒となるジーンズを探そう
はき慣らして経年変化が現れたときに、それまでとは違った魅力を放ち始めるジーンズ。そんなジーンズ最大の特徴といえる経年変化を楽しむには、生地の質や縫製のクオリティが重要となる。
ここで紹介する、デニム専業やデニムに一家言あるブランドならば、それぞれに工夫を凝らしたプロダクト作りを行っており、安心して手にすることができるだろう。
PART1:ジーンズ発祥の地が生んだ質実剛健な「アメリカブランド」
西部開拓時代のワイルドな暮らしが生んだ服、それがジーンズだ。発祥の地であるアメリカでは、当時の質実剛健なモノ作りを現代に受け継ぐブランドが割拠している。
デニムブランド1
『リーバイス』
ゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸において、金鉱で働く労働者から「もっと丈夫な作業着が欲しい」というニーズを受けるかたちで、『リーバイス』がリベットでジーンズの補強を行うという特許を1873年に取得し、今のジーンズの原型が誕生した。その後“501”と名付けられた5ポケットジーンズを軸に、年代ごとのライフスタイルに合わせた仕様の変更や品番の追加を行いながら、今では永遠の定番デニムブランドとして支持を集めている。
デニムブランド2
『リー』
『リーバイス』と双璧をなすアメリカンデニムブランドの雄が『リー』だ。設立当初は東海岸を中心にエンジニア、ワーカー、カウボーイなどから高い人気を博し、やがて総合ワークウェアカンパニーとして世界中に広がっていった。その人気の理由の1つが、1925年に『リー』が開発したジェルトデニム。左綾織りの強撚糸を使用することで11.5オンスながらも13オンス相当の強度を備えていて、軽く動きやすい生地となっている。
デニムブランド3
『ラングラー』
残るアメリカンデニム御三家の1つが『ラングラー』。時代を追うごとに少しずつワークウェアからファッション向けにシフトしていった『リーバイス』や『リー』と異なり、『ラングラー』は設立当初から現在に至るまでカウボーイ専用。馬の鞍を傷つけないように丸リベットを使用したり、鞍に座ったときに美しく見えるよう股上の深さを設定したりと、乗馬の際の使い勝手を考慮したモノ作りを行っている。アメリカではカウボーイのほとんどがラングラーを着用しているほどだ。
デニムブランド4
『ダブルアールエル』
ヴィンテージマニアとしても知られるラルフ・ローレン氏が1993年に立ち上げたハイエンド・カジュアルラインが『ダブルアールエル』だ。自身がコロラド州に所有する牧場の名前から取られたブランドネームが象徴するように、氏の趣味性が色濃く反映されたモノ作りがなされている。ヴィンテージの風合いをリアルに再現したダメージ加工でワイルドさをプラスしつつ、そのシルエットは極めて現代的でエレガントだ。
デニムブランド5
『ヤヌーク』
L.A.らしいリラックス感に溢れたシルエットやはき心地で知られるデニムブランドの『ヤヌーク』。2018年にはヴィンテージデニムフリークとしてその名を知られる老舗古着ショップ『ベルベルジン』の藤原 裕氏をアドバイザーとして起用し、よりリアルなヴィンテージ感を追求したアイテムをリリースするなど、新しい試みを積極的に行っている。
デニムブランド6
『ラグ&ボーン』
カイハラやコーンミルズ、日本綿布など最高品質のデニム生地を用い、アメリカ・ケンタッキー州の老舗縫製工場で製造される『ラグ & ボーン』。ヴィンテージライクな経年変化を見せつつも、すっきりとしたモダンなルックスを両立。CEOのマーカス氏が仕掛けるアーティスティックなPR手法やカタログヴィジュアルでも話題に。
デニムブランド7
『AGジーンズ』
『ディーゼル』創業者の1人にして『リプレイ』の初期事業にもかかわるなど、デニムデザイナーとしてその名を知られるアドリアーノ・ゴールドシュミット氏と、革新的なジーンズ製造技術を持つデニムブランドで研鑽を積んだヨル・クー氏がタッグを組んで2000年にLAでスタート。細部まで計算されたパターンによるスッキリとしたシルエットや、自然でありながらデザイン性に優れたウォッシュ加工によってファンを集めている。いわゆるプレミアムジーンズの走りであり、セレブリティの愛用者が多いことでも知られている。
デニムブランド8
『ギャップ』
アメリカ最大級のSPA方式(自社製品をチェーン店で委託販売させる製造小売業)ブランド、『ギャップ』。もともとは『リーバイス』のジーンズを販売していたが90年代以降はプライベートブランドのジーンズをリリースするように。生産ロットの多さにより、高品質ながらリーズナブルな価格帯を維持しているのが最大の魅力だ。
PART2:洗練されたデザインが特徴の「ヨーロッパブランド」
ジーンズがワークウェアとしてはかれてきた歴史を持つアメリカと異なり、ヨーロッパではファッションアイテムの1つとして捉えられてきた。デザイン性に優れたジーンズを手に入れたいなら、欧州のブランドが筆頭候補だ。
デニムブランド9
『アー・ペー・セー』
1987年にパリで設立された『アー・ペー・セー』は、トータルウェアブランドの中でも特にデニムの品質が秀逸。“フランスパンのよう”と形容される、表面は硬く中は柔らかい独自の生デニムを使ったジーンズは、ブランド黎明期から30年以上にわたってリリースされ続け、今やブランドの顔となっている。そして面白い試みが「バトラープログラム」。消費者が生デニムからはき込んだ『アー・ペー・セー』のジーンズをショップに持ち込めば、半額で新しいジーンズと交換してもらえるというサービスで、はき込まれたジーンズはメンテナンスが施されて再び販売される。生地や作りの良さに自信があるからこそ実施可能といえるだろう。
デニムブランド10
『ディーゼル』
1978年にレンツォ・ロッソ氏がイタリアで設立したプレミアムデニムブランドの『ディーゼル』。反骨精神とオリジナリティに溢れたシーズンテーマを設定し、デコラティブかつトレンド感のあるデザインに落とし込むクリエイティブで知られている。2013年にはニコラ・フォルミケッティ氏がクリエイティブ・ディレクターに就任。レディ・ガガ氏を一躍スターダムにのし上げた肉ドレスやロブスターハットを製作したことで知られる同氏は、4年間にわたって先鋭的なクリエイティブを発揮した。
デニムブランド11
『ジースター ロゥ』
1989年にオランダのアムステルダムで設立された『ジースター ロゥ』は、『ディーゼル』などとともに欧州のプレミアムジーンズを代表するブランドとして知られている。そのクリエイションの最大の特徴が、世界で初めてジーンズに取り入れた立体裁断。バイカーがはき込んだジーンズをデザインソースに、人間の脚の形状に沿ったカッティングを施すことで、細身でも快適に着こなすことが可能だ。
デニムブランド12
『デンハム』
『ジョー ケイスリー ヘイフォード』でパタンナーとして腕を磨いたジェイソン・デンハム氏が独立し、2008年にオランダで設立した『デンハム』。デザインの飽和状態と言われていた5ポケットジーンズに新たな息吹を吹き込み、美しいシルエットを体現してみせた。そして、氏のデニム愛が伝わる試みが、一部の店舗で実施している無料のハンドウォッシュサービス。『デンハム』のジーンズを持ち込めば、スタッフが店先で手洗いをしてくれるといううれしい施策だ。
デニムブランド13
『アクネ ストゥディオズ』
ファッション広告のクリエイティブ集団を母体に、96年にブランドとして立ち上がった『アクネストゥディオス』。98年からジーンズの企画と生産をはじめ、現在でもすべて自社で縫製まで行っている。また、レディースも得意としており、ユニセックスに履けるクリーンな印象のアイテムが多いのも特徴。
デニムブランド14
『ヌーディージーンズ』
デイリーウェアとしてのジーンズ作りを目指して、2001年にスウェーデンで創業した『ヌーディージーンズ』。スタイルが美しく見えるシルエットが話題を呼び、設立当初から日本でも人気を博した。色落ちに優れるカイハラ社製のデニム生地を使用するなど、クオリティの裏付けがあるモノ作りを行っていたことで、単なるブームとして終わることなく今でも美脚ジーンズの定番として親しまれている。
PART3:高い技術力で独自の進化を遂げる「日本ブランド」
世界に誇るデニムの産地、岡山県・児島を有する日本。糸の構造から徹底的にヴィンテージを再現したレプリカものや、オリジナリティ溢れるデザイン性を施したものなど、日本という島国を舞台に独自の先鋭化を遂げたジーンズをラインアップした。
デニムブランド15
『エドウイン』
日本人の体型にフィットしたはきやすいジーンズ作りを目指し、戦後間もない1947年に誕生した『エドウイン』。その代表作である“503”が誕生したのは1997年のこと。同モデルではドレスシャツなどに使用される液体アンモニア加工を世界で初めてジーンズに導入。デニムのゴワつきを取り除いてはきやすさを極限まで高めており、名実ともに日本人のデイリーウェアとして最適な1本に仕上がっている。
デニムブランド16
『ドゥニーム』
中白に糸を染め上げるロープ染色、太さにばらつきがあって縦落ちを強調するムラ糸、強い凹凸感とセルビッチを再現する旧式力織機……。今ではデニム好きの間でお馴染みとなったこれらのワードは『ドゥニーム』が広めたといっても過言ではない。旧年代のジーンズを現代的にモディファイしながら表現する色落ちは実際のヴィンテージを超えるほど。ヴィンテージレプリカの定番としてだけでなく、ハイエンドなデイリージーンズブランドとして幅広い層に支持されている。
デニムブランド17
『リゾルト』
『ドゥニーム』の創業者であるデニム業界の重鎮、林 芳亨氏が新たに立ち上げたデニムブランドが『リゾルト』だ。ヴィンテージレプリカブームも過去の話になった2010年に立ち上がった新興ブランドながら、その作りの良さから国産ジーンズの最高峰との呼び声も高い。その定番モデルである“710”は『リーバイス』の通称“66モデル”をベースにしつつ、誰もが丈上げせずにはけるよう7種類のレングスをラインアップ。ジーンズ本来の美しいシルエットを崩すことなくはくことができる。
デニムブランド18
『レッドカード』
『エドウイン』で“503”の立ち上げに関わり、『リーバイス』で“501”のモデルチェンジを手掛けるなど、世界的なデニムデザイナーとして知られる本澤裕治氏が2009年にスタートしたデニムブランド『レッドカード』。日本の工場が得意とする洗い加工やヴィンテージ加工を巧みに盛り込むことで、軽やかさとリアルなヴィンテージ感を演出している。
デニムブランド19
『オアスロウ』
生地作りから縫製までMADE IN JAPANにこだわるだけでなく、デザイナーの仲津一郎氏が少しずつ集めたヴィンテージミシンを使用してジーンズを作り上げる『オアスロウ』。デザイナー自身もひと部屋ぶんのヴィンテージデニムを所有するマニアとして知られているが、単にヴィンテージを精巧に再現するのではなく、大人の普段着としてマッチするよう洗練させた仕上がりが魅力だ。
デニムブランド20
『ヒステリックグラマー』
1984年に北村信彦氏によって創設された『ヒステリックグラマー』。60~70年代のロックカルチャーをバックボーンに持つアパレルブランドだけあって、そのジーンズもロック精神が反映されたインパクトあるデザインが魅力。タイトなシルエットにダメージ加工やプリントが施されたジーンズは、コーディネートの主役として活躍してくれる。
デニムブランド21
『クロ』
その名前通り、日本人の瞳や髪の色である「黒」をテーマに掲げ、MADE IN JAPANを守り抜く『クロ』。2010年のブランド設立当初からそのデニムコレクションはファッション感度の高い人々からの支持が厚く、なかでもブラックジーンズの出来映えは秀逸。紋付袴専門の染色工房に依頼して漆黒加工を施したオリジナルデニムを開発するなど、生地作りからこだわった1本を作り上げている。
デニムブランド22
『ジョンブル』
1952年にデニムの聖地である児島で創業した『ジョンブル』。学生服メーカーとして創業し、現在ではワークやミリタリーのエッセンスを取り入れたアイテムを手掛けるトータルブランドへと成長した。なかでもジーンズは『ジョンブル』の原点ともいえるアイテムであり、自社工場を有しているため、高品質ながらもリーズナブルな1本を作り上げている。
デニムブランド23
『フルカウント』
ヴィンテージレプリカブーム真っ盛りの1992年に創業した『フルカウント』。 “家に帰っても寝るまで脱ぎたくないジーンズ”をテーマに掲げ、日本人のデイリーウェアとしてのモノ作りを行ってきた。その最大の特徴が、他社に先駆けてオーガニックのジンバブエコットンを生地に使用したこと。ジンバブエコットンは繊維長が平均35mmを超える超長綿の一種であり、しなやかで毛羽が少なく、伸縮性に優れたデニムに織り上がるのだ。
デニムブランド24
『カトー』
多くのブランドが『リーバイス』の“501”に範を取るなか、独自の世界観を作り上げているのが『カトー』だ。定番である3Dデニムパンツは、ウォッシュ加工を施した13.5オンスの生地を使用。大きく湾曲したシルエットや膝裏のダーツによる立体裁断加工を施しており、体の動きにフィットした絶妙なはき心地を実現している。
デニムブランド25
『ボンクラ』
百貨店勤務を経て、モデルやヴィンテージディーラーとしても活躍する森島久氏が2011年に立ち上げたジーンズブランド。501XXをベースに随所にヴィンテージディテールを正確に再現しつつ、フィットは現代的にアップデートされている。ヴィンテージレプリカのブームが去った後でもなお、本格派のデニムとして高い支持を得ている。
デニムブランド26
『マインデニム』
スタイリストの野口 強氏がディレクションを手がけ、岡山の自社工場で生産から加工まで行うジャパンブランド。木村拓哉氏をはじめ、デニム好きで知られるファッションアイコン御用達のブランドでもあり、中でもスリムストレートのシルエットの美しさは群を抜いている。
デニムブランド27
『ヤコブコーエン』
日本製のヴィンテージレプリカから欧州のプレミアムジーンズブランドへとトレンドが移り変わった2003年にデビューした『ヤコブコーエン』。501に範を取りつつもイタリアらしいテーラードの技術で仕立てているのが特徴。ジーンズながら、スラックス感覚でジャケットと組み合わせるスタイリングを早い時期から提唱したことでも知られている。
デニムブランド28
『サムライジーンズ』
ヴィンテージレプリカ全盛の1998年に大阪で創業した『サムライジーンズ』。多くのレプリカブランドが501と同様に13.5~14oz前後のデニムを使用する中、同ブランドでは15ozから24ozに及ぶ肉厚なデニムを用いて仕立てているのが特徴。激しい縦落ちも魅力で、アレンジ系レプリカの雄として絶大な人気を誇る。
デニムブランド29
『桃太郎ジーンズ』
デニムの聖地である岡山・児島で立ち上がったジャパンブランドで、その最大の特徴は“世界で最も濃い”と称されるインディゴ染め。ロープ染色によって糸の芯には白を残しつつ、表面にはほぼ黒に近い濃紺に染め上げて紡績されるため、激しい経年変化を見せる。また自社内に藍染め用設備を有しており、定期的に本藍を使った手染め・手織りのジーンズを発売するなど、独自性豊かなものづくりを行っているのも同ブランドならでは。
デニムブランド30
『ウェアボブソン』
1940年に厚手衣料や作業服メーカーとして創業し、1971年にジーンズブランドを立ち上げた老舗の『ボブソン』が名前も新たにリスタート。ブランド設立当初に掲げた“アンチジーンズ”をキーワードに枠に囚われないモノ作りが同社の精神。『ウェアボブソン』でも現代の生活とスタイルにフィットした新しいジーンズの形を提唱している。
デニムブランド31
『エヴィス』
国産レプリカジーンズブームの最初期から活躍するブランドでもあり、カモメマークのペンキステッチでお馴染みの『エヴィス』。同ブランドは、ルーズでワイドなシルエットのジーンズをいち早く日本でも提唱したことでも知られている。ヒップホップミュージシャンや彼らに影響を受けた若者など、90年代のストリートシーンは『エヴィス』一色だったことは大人世代には懐かしい記憶のはず。
デニムブランド32
『ステュディオ・ダ・ルチザン』
豚がジーンズを引くロゴが印象的な『ステュディオ・ダ・ルチザン』。レプリカブームの90年代よりも早く、1979年から旧式力織機によるセルビッチデニムを用いたジーンズ作りに取り組んでいる。501ではなくヴィンテージのフレンチワークパンツをベースにするなど、形に囚われることなく高品質なジーンズを作り続けているのも支持が厚い一因。
デニムブランド33
『ウエアハウス』
糸1本まで分解してヴィンテージ501を精密に再現することで定評のある『ウエアハウス』。新たな加工法と出会ったことで完成した“セコハンモデル”はレーザーやウォッシュなど複数の加工を組み合わせ、擦り切れたレーヨンタブからポケットステッチの劣化まで再現。加工とは思えないリアルな履きこみ感を演出するのも同ブランドの魅力。
デニムブランド34
『キャピタル』
もともと『ハリウッドランチマーケット』や『45rpm』、『ヒステリックグラマー』などのOEMをおこなっていた岡山の工場が独立して立ち上げたファクトリーブランド。自社工場による緻密な縫製や遊び心溢れるデザインはもとより、秀逸なのがKOUNTRYライン。刺し子や襤褸に影響を受けたハードな加工には担当した職人ごとにファンが存在するほど。
アメカジ&アメトラを中心にラギッドな視点で解説
那珂川廣太
バイク専門誌と男性向けライフスタイル誌で編集を約8年務めたのちに独立。ファッションはアメリカンカジュアルからトラッドまで幅広く執筆を行い、特にブーツやレザー、ジーンズ、古着など男臭いアイテムの知識が豊富。また乗り物やインテリア、フードまでライフスタイル全般にわたって「ラギッド」を切り口に執筆する。