本場にも負けないモノ作り。日本発の腕時計ブランド13選
腕時計の本場がスイスというのは、否定できない事実。しかし、実用時計においては日本が世界一といっても過言ではありません。その理由と珠玉のブランドを語り尽くします。腕時計のメッカ・スイスと日本。そこに実力の差はあるのか
現存する世界最古の時計ブランドとしては1735年の『ブランパン』、メーカーとしては1755年の『ヴァシュロン・コンスタンタン』が挙げられます。ともにスイスのブランドで、前者は一旦休眠の憂き目を見ながらも、今なお技術的に優れた一流ブランドとして君臨しています。時計大国というと最近ではドイツやイタリアを含む場合もありますが、世界的に見てもスイスが時計のメッカというのは揺るぎない事実でしょう。
前出のスイスブランドが産声を上げた1700年代は、日本ではまだ江戸時代。日本において初めて時計が作られたのは、1800年代だといわれています。このように年代のみで考えると、「日本の時計産業は遅れている……」と感じてしまうかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。日本は1900年代中盤に精度を競うスイスの天文台コンクールを脅かしただけでなく、クォーツ腕時計の歴史をも切り開いたパイオニア。現在、国内外を問わずあらゆる分野でジャパンメイドの品質は高く評価されています。日本の腕時計の品質は世界中で認められており、本場スイスにだって引けをとらないのです。
腕時計・ウォッチ
時計産業の中心地、スイスが誇る高級腕時計ブランド10選
高級腕時計と言えばスイス。その時計産業の成り立ちと強さの秘密に迫りながら、押さえておきたい10ブランドを解説していきます。
夏目 文寛
2019.07.23
腕時計・ウォッチ
個性派実用腕時計の殿堂、アメリカ発の名門ブランド
ロレックスを筆頭に、世界の時計市場を席巻しているスイスブランド。その一方で、カジュアルウォッチを中心に、根強いファンが存在しているのがアメリカブランドです。
MASAFUMI YASUOKA
2018.02.13
腕時計・ウォッチ
その作り、質実剛健。ドイツ発腕時計ブランド10選
機械式腕時計というとスイスが有名だが、ドイツもまた腕時計大国の1つ。一時はスイスさえも凌駕したという歴史的背景と、実用性に特化したそのラインアップをご覧あれ。
牟田神 佑介
2018.04.09
日本発の腕時計ブランド。世界と渡り合えるその技術とは
日本の時計製造がスタートしたのは1892年。腕時計に関しては1915年からで、スイスの腕時計製造時期からそれほど遅れをとっていないのです。その古き歴史の過程で築かれた、日本の腕時計の魅力を解説します。
魅力1
スイスにも引けを取らない、腕時計の花形、機械式時計のクオリティ
20世紀前半から続く時計製造技術は、精度においてスイス製を凌駕しています。機械式時計においても、スイスの天文台が執り行うクロノメーターコンクールにおいて1968年には「セイコー」が優勝するなど輝かしい功績を残しています。また、現在ではETA社のスウォッチグループ以外への2020年以降のムーブメント供給停止を受け、「シチズン」傘下のエボーシュメーカー・ミヨタがそれに取って代わる勢いを見せています。高精度を極めたハイエンドでもコスパを追求したローエンドでも、日本の腕時計には技術の極みであるムーブメントが組み込まれているのです。
魅力2
ハイテククォーツをはじめとする、世界をリードするテクノロジー
腕時計業界の勢力図を塗り替えたといわれる、クォーツショック。その発端となる、世界初のクォーツ腕時計を1969年に作ったブランドが日本が世界に誇る「セイコー」です。以降、国産メーカー同士の切磋琢磨により超高精度クォーツはもちろん、電波時計や光発電、クォーツと機械式の融合、そしてGPS時計へと発展。これらの先端的分野へのチャレンジは、日本だからこそ成しえたことであり、その実績は世界を大きくリードしています。
魅力3
腕時計の枠を超えた、独自性が高い外装技術とデザイン
日本の高級時計には日本の企業文化を象徴するかのような、変態的なまでに精密で美しい時計が多く存在します。写真の『ミナセ』などはそんな気質を象徴するようなブランドで、エッジの立った鏡面を施すのには欠かせない幻と呼ばれる研磨技術“ザラツ研磨”や、金属に硬さだけでない粘りを持たせる“焼き戻し”など職人技術がこれでもかと注ぎ込まれています。他にも、琺瑯や陶器で透明感のある奥深い顔立ちを生み出す『プレザージュ』や、漆塗りで文字盤に夜空を表現する『カンパノラ』、ベゼルに切子を落とし込んだ『オシアナス』など腕時計の枠を超えた工芸品としての取り組みもさまざまです。これもある意味、日本らしさ、といえるでしょう。
どれを取っても自慢できる。日本が世界に誇る腕時計ブランド13選
国産の腕時計ブランドといえば、技術力と層の厚さで「セイコー」や「シチズン」、「カシオ」が傑出していますが、そのほかにも独自の強みを持って追随するメーカーやブランドも多数存在しています。流行や周囲の評価は抜きにしてこれらのブランドと向き合ってみれば、新しい価値観に出会えるかもしれません。
ブランド1
世界最高峰の高精度『グランドセイコー』
1960年にスイスの公認クロノメーターを超える精度を目指して創設され、現在は年差クォーツや超高精度の機械式、そしてスプリングドライブをラインアップする『グランドセイコー』。スプリングドライブとは、ゼンマイ式の自己発電機能で電力を生み出し、クォーツで調速するという類を見ない画期的な仕組みです。精度と男のロマンを合致させた、「セイコー」らしい技術といえるでしょう。2017年からは文字盤から“SEIKO”の文字が消えて“GS”と力強い文字が躍るように。それに伴いグローバル化も進み、ラグスポモデルも多数輩出。しかしそのどれもが、腕時計の本質的な美しさを表現する“セイコースタイル”の元にデザインされています。こちらの1本も、同ブランドにおいてめきめきその人気を高めているスポーツモデル。セラミック製のベゼルやスポーティなグリーンカラーが、新しい“GS”の可能性を匂わせます。
ブランド2
日本的な美と実を兼備する「セイコー」の『プレザージュ』
『グランドセイコー』だけが「セイコー」ではありません。「セイコー」は、1903年創業の服部時計店を前身とし、廉価なクォーツからハイエンドの機械式まであらゆる腕時計を世の中に提案してきました。その功績は広く知られているとおり、世界初のクォーツ腕時計を生んだ時計メーカーとして歴史に名を刻んでいます。近年は漆ダイヤルモデルのように、伝統工芸の美と優れたコスパを兼備するものまでラインアップするなど、技術とデザインの両面から業界をけん引しています。こちらは日本の伝統色“藍”を、1964年リリースの「クラウン クロノグラフ」に載せた1本。レトロスポーツなデザインの中に、静けさを秘めています。
ブランド3
美しい時計。機械式も豊富にラインアップする『カンパノラ』
『カンパノラ』は『シチズン』の最高峰クォーツブランドとして誕生。日本の伝統工芸を取り入れた、芸術的な文字盤が魅力です。2014年には『シチズン』の傘下に入ったスイスのムーブメントメーカー、ラ・ジュウ・ペレ社のセミコンプリケーションを搭載した機械式時計も加わるなど、ますますその存在感を強めています。なお、上の1本はパーペチュアルカレンダーを搭載したクォーツモデル。茶系の漆を重ね塗りすることで、木目のような質感を表現した2020年の新顔です。その他、ミニッツリピーター、ムーンフェイズ、クロノグラフと複雑機構をこれでもかと実装。『シチズン』の技術力を実感できる、ハイエンドな腕時計です。
ブランド4
実用性で比肩する時計無し。真に親しまれる時計メーカー、「シチズン」の『アテッサ』
「シチズン」は、1918年から懐中時計を作り始めた尚工舎を前身としたメーカー。その名称には市民に親しまれるようにとの願いがこめられています。電波腕時計や光発電のパイオニアとして知られ、人工衛星の電波による時刻補正でも先鞭をつけた「アテッサ サテライトウェーブ」は、GPS電波による世界最短の補正時間を誇る名作です。こちらは、そんな『アテッサ』の中でも特に高い人気を誇る「AT8040」。光発電エコ・ドライブの手軽さに加え、時刻修正機能及びダイレクトフライト機能を搭載した、取り回しの良い逸品です。最近では”FTS”というカスタマイズサービスも始まり、自分だけの「AT8040」をオーダーすることもできるようになりました。
ブランド5
独自路線とコストパフォーマンスを追求する『オリエント』
『オリエント』は1920年から時計を製造する吉田時計店が前身。戦後は、1950年代に輸出で成功を収めました。機械式の自社ムーブメントも擁するマニュファクチュールで、性能に対して優れたコストパフォーマンスを誇ります。特に、1971年に誕生した”ヨンロク”と呼ばれる自動巻ムーブメントは秀逸。細かなチューンナップはありながらも、ほぼ半世紀にわたり現役で立ち回れるムーブメントはなかなかありません。また、昨今は復刻モデルを中心に先進性を武器にする『オリエントスター』とは異なる路線を邁進。今作「キングダイバー」を筆頭に『オリエント』ファンならずとも心引かれるユニークピースを次々にリリースしています。
ブランド6
クォーツに高級路線を打ち出した『トゥルーム』
現在『オリエント』が属する「セイコーエプソン」。同社は『セイコー』が世界に誇るGPSソーラーウォッチ「セイコー アストロン」の開発・製造を行っていることでも知られる、隠れた実力派です。そんな同社が満を持して発表した『トゥルーム』は、GPSのみならず各種センサーをふんだんに盛り込んだ、ボリューミーでメカニカルな風貌の時計。あくまで馴染み深いアナログな見た目に徹しながらも、大人のオフに似合うラグジュアリーさを特徴として高級時計を知り尽くした趣味人を中心に親しまれてきました。そんな『トゥルーム』が次の一手として2020年に満を持して発表したのが、スウィングジェネレーターという独自機構を搭載したモデル。着用した腕の動きにより発電し、クォーツならではの高精度による駆動する同作は、同ブランドの懐の深さを感じさせてくれるモデルに仕上がっています。
ブランド7
圧倒的信頼性を誇る「カシオ」の『Gショック』
電子機器製造のトップメーカー『カシオ』が、1983年に耐衝撃ウォッチ、『Gショック』を発売。この壊れない時計はアメリカで大ブレイクし、その人気が日本へ逆輸入されました。以来、国産腕時計のトップクラス銘柄として定着。先端的な腕時計の開発で右に出るものはなく、こちらも最新鋭のカーボンコアガード構造により従来よりモジュールを堅固に保護する耐衝撃性を獲得。また、ファッション的な側面からの需要も高く、昨今ではスライドレバーによりストラップの交換・着脱を容易にするなど細かい点でかゆいところに手がとどく改良を次々と行っています。中でも昨今特に注目を集めているのが“メタル化”。フルメタルモデルの存在感は言わずもがな、ベゼルだけステンレスを採用した「メタルカバード」ラインなら比較的お手頃にスタイリッシュさを獲得できます。
腕時計・ウォッチ
Gショックの人気モデル決定版! 90年代を生きた名作から最新作まで
ストリートブーム回帰で、今また人気の高まる『Gショック』。アニバーサリーモデルや新作が続々と登場する中、改めて革新的な歴史と独自性の高さが注目を浴びています。
MASAFUMI YASUOKA
2018.03.15
腕時計・ウォッチ
Gショックの新作ガイド。2020年最新のトピックスとおすすめモデル
進化を遂げた新作で常にシーンに驚きと楽しさを提供してくれる『Gショック』。その姿勢にブレがないことは、今季の最新トピックスや推しの1本からもきっと伝わるはず。
菊地 亮
2020.08.04
腕時計・ウォッチ
話題沸騰。Gショックのメタルモデルならではの魅力と注目作
数多の名作を世に送り出してきた『Gショック』の最新トピックは、誰もが気になるところ。今なら断然メタルモデルだろう。その理由や魅力を代表作に触れつつ解き明かす。
菊地 亮
2020.10.25
ブランド8
誰もが納得するデザインをコスパ良く提供する『ノット』
2015年3月にスタートし、腕時計好きはもちろん、おしゃれな大人に人気を集めている『ノット』。クラシカルかつミニマルな見た目と、“ベルト別売り”という販売方式で注目されています。また、ほかのメーカーでは10万円を超えるスペックが、アンダー5万円で購入できるコスパも魅力。2016年7月に登場したブランド初の機械式モデルは即完売。2020年には20気圧防水を備えた待望のスポーツモデルもリリースされ、ますますいその勢いを増しています。ほかのモデルも品薄状態が続いているので、好みのデザインに出会えたら即購入するのがベストでしょう。また、日本各所のメーカーと手を組んで作っているストラップも次々と新作が発表されているので、今の腕時計に飽きたな……と思ったら、とりあえずショップを覗いてみると良いかもしれません。
ブランド9
ザラツ研磨が生み出す、芸術的なケース構造の『ミナセ』
切削工具や特殊工具を製造する協和精工が時計作りに挑み、誕生したのが『ミナセ』。工房が所在する秋田県の知名に由来しています。1つの時計加工用ドリルからスタートしたブランドらしく、可能な限り薄く、かつ立体的という矛盾を成立させるケースの加工技術は他ブランドと比べても段違い。表面張力で張り詰めた水面のように大きく弧を描くサファイアガラスも、『ミナセ』の時計の存在感に一役買っています。こちらは、そんな『ミナセ』の独創性と技術力を感じられる「ファイブウィンドウ」。その名の通り風防や裏蓋だけでなく、ケースの左右に付けられた窓から精緻極まるムーブメントを鑑賞することができます。
ブランド10
ムーンフェイズウォッチ人気の立役者、『カルレイモン』
高級腕時に多く見られるディテールである、ムーンフェイズ。18世紀に時計史に名を残す天才、アラブアン=ルイ・ブレゲが考案されたとされる格式高い意匠ですが、新興腕時計ブランド『カルレイモン』は同デザインを手に取りやすい価格帯に落とし込むことに成功しました。しかし、その作りからは決して妥協が見られず、素材には抗アレルギー性を持つサージカルステンレスを採用。そのケースも高い精度が求められるセパレート構造となっており、インナーリングに排されたメタルリングも相まってクォーツ時計とは思えない重厚感を放ちます。ルックスも秀逸で、ムーンフェイズに月、日、曜日のフルカレンダーを盛り込みつつ、38mm径という腕馴染みの良いサイズ感にまとめた手腕は腕時計愛好家によるブランドならではといえるでしょう。
ブランド11
構築的なケース構造が、独特の美を生み出す『マスターワークス』
2018年誕生の新鋭ブランドながら、仕上げを変えた4ピース構造のケース、自動巻モデルは「セイコー エプソン」社の貴重かつ高精度なムーブメントを採用、そして圧倒的なコストパフォーマンスにより早くも注目度が高まっているジャパンブランドです。セットスルータイプのレザーストラップもイタリアはボローニャ地方の時計革バンド専門の工房でハンドメイド生産されているというこだわりぶり。文字盤の立体感も価格以上の作り込みで、まさに“匠の作品”というブランド名に恥じない腕時計といえるでしょう。
ブランド12
陸海空のいずれにも傑作をラインアップする『ケンテックス』
『ケンテックス』は、1989年に委託製作を手がけるメーカーとして発足し、1998年からオリジナルモデルを手がけています。驚くほど廉価なトゥールビヨンや、自衛隊とのコラボモデルで時計ファンにはお馴染みのブランドで、陸海空のシーン別でプロ仕様のモデルもラインアップしています。この「スカイマンパイロット」も視認性に優れたクラシカルな1本として、同ブランドでは長く人気を獲得しています。
ブランド13
時計ショップの現場から生まれた『ジーエスエックス』
国内で最大の取り扱いブランド数を誇る時計ショップ、BEST販売が1995年に創立した『ジーエスエックス』は、MADE IN JAPANをテーマにコレクションを提案し続けています。しかし、数あるジャパンブランドに倣い品質や精度に特化してブレイクスルーを図るのではなく、同ブランドはそのデザイン性の高さも強力な武器に。今作「400シリーズ」も、トノー(樽)型とラウンドを左右非対称に組み合わせたようなスペーシーなフォルムが売りです。ストラップから風防までゆるやかな流線型を描いて盛り上がるフォルムも、『GSX』流。ムーブメントを含め、この作りの良さでこの価格に収めるのは並大抵の企業努力ではなしえません。
ブツ欲が動力源のモノ好き編集部員
牟田神 佑介
「Men’s JOKER」、「STREET JACK」と男性ファッション誌を経た後、腕時計誌の創刊に携わり現職。メンズ誌で7年間ジャンルレスに経験してきた背景を生かし、handbagでは主に腕時計や革靴、バッグなど革小物に関する記事を担当している。