アメリカが生んだ実用時計の極み。ボールウォッチに宿る、機能美
タフで正確無比、そしてとにかく武骨な意匠。すべての男がグッとくる腕時計の条件を満たす腕時計ブランドが『ボールウォッチ』です。その魅力を徹底検証していきましょう。機能的、ゆえに洗練。時計の“実”を識る大人に『ボールウォッチ』が人気
最近時計好きの間で、評価を高めている『ボールウォッチ』。その主な理由は、頑丈かつ正確、さらに時刻が見やすいといった、腕時計としての基本がしっかりしていることが挙げられます。小さな歯車がかみ合って駆動する機械式時計は、一般的に衝撃に非常に弱いもの。タフでガンガン使える腕時計は、実は選択肢が少ないのです。その点、『ボールウォッチ』ならあまり気を遣わないで着用できますし、ちょっとしたアウトドアに持ち出したって大丈夫という安心感があります。
アメリカの鉄道産業とともにあった『ボールウォッチ』の歴史と哲学
タフで正確という『ボールウォッチ』の優れた特徴は、ブランドの成り立ちと大きく関係しています。ここで、その歴史を振り返っておきましょう。『ボールウォッチ』の創業者はウェブ・C.ボール氏。1891年11月に湖岸鉄道の監督検査官に任命されたウェブ・C.ボール氏は、同年4月に発生した痛ましい鉄道事故を調べているうち、安全な鉄道システムを維持するためには、正確な時計、しかもどんな過酷な状況でも正しい時刻を刻み続ける時計が必要だと確信します。ボール氏は車掌、機関士など、鉄道事業で使用されているすべての時計を時計職人に検査させ、標準時との誤差が30秒以上ある時計は調整を義務付けるなどの規定を設け、正確な鉄道時計システムを作り上げたのです。
ウェブ・C.ボール氏が140年以上前に作り上げた“タフで正確”な時計像は、現在においても『ボールウォッチ』の軸であり続けています。つまりどんな過酷な状況であっても正確な時刻を刻み続けることをブランドのミッションとしているのです。そのミッションを達成するため、『ボールウォッチ』は耐震性能に優れたタフなケース構造や、耐磁性能、耐低音性などあらゆる状況で使えるタフさを求めて開発を継続し、独自のテクノロジーを作り上げています。時計好きから愛されるそのタフネスと正確性は、創業時からのブランド哲学なのです。
プロユースに根差した圧倒的タフネス。『ボールウォッチ』に宿る機能
アメリカの鉄道時計を発祥とする『ボールウォッチ』は、プロが安心して使える信頼性こそが売り。それを支える独自機能を、ここでご紹介します。
機能1
プロの腕時計ゆえ。圧倒的な耐磁性能は、他の追随を許さない
腕時計の大敵として知られているのが磁力です。PCなど電気製品に長く触れることで歯車などのムーブメントの金属部品が磁化すると、お互い引き付け合って時間が狂ってしまうのです。『ボールウォッチ』はケースの内側にもう1つ軟鉄製のインナーケースを装備。この磁気を通さないインナーケースがムーブメントを覆うことで、磁化を防いでいるのです。耐磁性の定義は4,800A/mの磁場におかれても±30秒の日差が生じないことですが、例えば『ボールウォッチ』の「EH スペースマスター」は12,000A/m、「マグニートー S」は80,000A/mの耐磁性を備えています。
機能2
不意の衝撃も、想定内。精度を維持するための、堅牢製の追求
『ボールウォッチ』が衝撃に強いことはすでに触れましたが、すべてのモデルが国際規格のISO1413に準拠する5,000Gsの衝撃に耐えることが実証されています。また、旗艦モデル「エンジニア・ハイドロカーボン」は、ISOの基準を上回る1.5mの振り子ハンマーでもっとも壊れやすいリューズにも衝撃を与えるなど、過激ともいえるテストを敢行。特許を取得したセーフティロック・クラウンシステムにより、実に7,500Gsもの耐衝撃テストに合格しています。
機能3
リアルな潜水すらも想定した、本格派の防水性能
防水性に関しても『ボールウォッチ』には余念がありません。その防水テストは、重量に対して1%の浸潤剤を含む蒸留水に腕時計を最低5分間完全に浸し、1平方インチあたり15ポンドの気圧に相当する圧力を加えて気密性をテストするというもの。世に出るためにはこのテストをパスする必要があるんです。なんと3,000mもの防水性能を誇るダイバーズモデル「エンジニア ハイドロカーボン ディープクエスト」をラインアップすることからも、『ボールウォッチ』の技術力が垣間見られるでしょう。
機能4
10年以上続く高い視認性。マイクロ・ガスライトを採用したインデックス
タフで正確であることと並んで、『ボールウォッチ』の優位点として挙げられるのが、時刻が読み取りやすいこと。これは、マイクロ・ガスライトという夜光システムのおかげ。このシステムは光を蓄える蓄光ではなく、自発光することが特徴。トリチウム・ガスが真空のミネラルガラスのガラス管に密閉されており、ガラス管の内壁の蛍光物質コーティングにトリチウムから発する電子が反応することで明るい光を放つという、ブラウン管テレビと同じ仕組み。その明るさたるや、通常の蓄光塗料の70倍にも達し、10年以上光り続けます。
エントリーモデルから、ハイクラスな1本まで。『ボールウォッチ』のおすすめ厳選5本
これまで、タフで正確、しかも時刻が見やすいといった『ボールウォッチ』の特徴を歴史と機能に絡めながら説明してきましたが、いよいよ実際のアイテムをご紹介しましょう。
1本目
エンジニア ハイドロカーボン オリジナル
『ボールウォッチ』を代表するモデルである「エンジニア ハイドロカーボン」の誕生15周年を記念したアニバーサリーモデル。軟鉄製インナーケースを採用することで耐磁性能を確保しつつ、マイクロ・ガスライトによる優れた視認性、セーフティロック・クラウンシステムによる耐衝撃性能など、『ボールウォッチ』の魅力がすべて詰まっているモデルといっても過言ではないでしょう。さらにこのモデルは、スプリングロック耐震システム、スプリングシール耐震システムという2つの特許技術も搭載しているため、機械式時計の中でもかなりハイレベルな堅牢性を持っています。
当モデルがISO基準を超えた耐衝撃性を誇るのは、この堅牢なセーフティロック・クラウンシステムのおかげ。さらにこのシステムは、リューズの横に配置されたプロテクションプレートを最後までねじ込まないとロックできない構造のため、リューズのねじ込み忘れを防止する役割もあります。
2本目
ボール トレインマスター スタンダードタイム
デカ厚だけどタフなモデルが揃う『ボールウォッチ』の中で、往年の懐中時計をイメージしたオーセンティックなルックスが魅力の「トレインマスター」。耐衝撃性はプロモデルにこそ劣りますが、ムーブメントはスイス公認クロノメーター規格を準拠しているので、信頼性は折り紙付き。青焼きの時分針はクラシカルでとても美しく、しっかりマイクロ・ガスライトの夜光も入っているところにブランドの矜持を感じます。
かつて鉄道員たちが使っていた、懐中時計の琺瑯を再現したダイヤルは工芸品のような美しさ。これはホワイトのラッカー塗料を何度も塗り重ねて磨き出すコールドエナメルと呼ばれる手法によるもので、非常に手の込んだ逸品となっています。
3本目
ストークマン ヴィクトリー
「ストークマン」はシンプルなデザインながら、『ボールウォッチ』らしいタフな機能性をお手頃価格で手に入れることができるモデル。今回ご紹介する「ストークマン ヴィクトリー」も3針の極めてオーソドックスな形ながら、5,000Gsの耐衝撃性や100m防水などのタフネス構造をしっかりと装備。タフさはそのままに、繊細なギョーシェが文字盤全体をカバーし、ドレッシーな高級感も満点。ビジネスシーンでも使える万能モデルです。
夜光は『ボールウォッチ』お馴染みのマイクロ・ガスライトを採用。通常の蓄光インデックスは時間が経つと段々と明るさが減じていきますが、マイクロ・ガスライトなら、70倍もの光量で10年間輝き続けます。
4本目
エンジニアIIIアビエーター
「エンジニアIII」は耐衝撃性と耐磁性に秀でたモデルです。時計の心臓部であるテンプには、独自のスプリングロック機能を搭載。これはショックによるヒゲゼンマイの変形を防止し、衝撃の影響をなんと最大66%も軽減する特許取得技術です。同時にスプリングシールと呼ばれるパーツを調速部にセット。これは強度を高める部品で、衝撃が加わっても精度への影響を最小限に留める役割を果たします。
もちろん、耐磁対策もバッチリ。ムーブメントを覆うインナーケースに、透磁率の高いミューメタルを採用。80,000A/mもの耐磁性を達成しています。
5本目
エンジニアマスターII ダイバーIII
「エンジニアマスターII」はプロアスリートの使用を前提にしたスポーツライン。この「ダイバーIII」はその名の通り、ダイバーズウォッチで防水性能は300mを誇ります。マイクロ・ガスライトによる夜光の威力は抜群で、暗い海でもしっかり時刻や残りの酸素残量時間を視認できます。
ダイバーズに必須の機能といえば回転ベゼル。ですが、「エンジニアマスターII ダイバーIII」は、文字盤内のディスクが回転するインナーベゼルを採用しています。すっきりとしたデザインになっているのが特徴です。
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海外での取材経験も多数。時計専門ライター
夏目 文寛
出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーのleather bagに。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。