そこまでするか。圧倒的タフネスで大人を魅了するビクトリノックスの腕時計
スイスブランド『ビクトリノックス』の腕時計は他と一線を画す圧倒的タフネスが信条。なぜ同ブランドから腕時計が生まれ、どう進化してきたのかをおさらいしましょう。腕時計界に進出したスイスブランドの雄、『ビクトリノックス』
今や世界的に有名な『ビクトリノックス』ですが、そのルーツはワークショップにあります。1884年、カール・エルズナー氏は母親の助けを借りながら刃物店を開業。帽子職人の4男として生まれ、ドイツやフランスで鍛冶の修行を積んだ氏の作るナイフは、瞬く間に評判となり、1891年にはスイス陸軍へソルジャーナイフを納入するなど実績を重ねていきます。そして1897年、誰もが目にしたことがあるであろう「マルチツール」の原型モデルを発表。1931年にはオートメーションを導入し、よりグローバルに成長を続けていったのです。
止まらないグローバル化の流れのなかで、1989年はブランドにとって変換期とも言える年になります。かつての米国の販売提携先の協力を受け、北米の時計市場に参入するのです。スイスブランドならではの緻密な仕事や、これまでのナイフ造りで培ったノウハウは、精密機械たる腕時計の世界でも抜群の信頼性を獲得しました。スイスのウォッチメーカーとしては新興の部類に入りますが、モノ作りにかけては他の老舗に勝るとも劣らず。むしろ『ビクトリノックス』は、これまでの時計作りにはなかった新たな“発想”で業界に新風を巻き起こしたのです。
圧倒的タフネスでブランドの精神を体現する「イノックス」について
彼らが作る腕時計の特徴は、類まれなる頑強さにあります。軍モノをルーツとするブランドらしい考え方で、壊れやすいイメージの精密機械を一変させたのです。ケースなどの金属の耐久性はもちろん、例えばパラコードと呼ばれる新しいストラップ素材は、緊急時に解体することで強靭なロープになる優れもの。さらに、ブランド生誕130年を迎えた2014年には今やブランドのアイコン的存在となった「イノックス」をリリース。この圧倒的なスペックを誇る名機は、想像を絶するプロセスを経て生み出されました。
▼ポイント1:130にも及ぶ耐久テストを合格した、並外れた耐久性
ブランド生誕130周年アニバーサリーのタフネスモデル。『ビクトリノックス』のブランド名の語源の一部となった“INOX(=ステンレススチール)”から名付けられた腕時計は、記念すべき数字と同じ数、実に130の耐久テストを課せられました。10メートルの高さから落とされたり、8トンの圧力を加えられたり、ボブスレーのオリンピックコースを滑走させられて振動への耐性を測られたり…。それらはすべて、「どんな環境でも耐えうる究極のタフウォッチ」となるための試練。すべてのテストに合格した頑強な腕時計は、何より品質を重んじるスイスブランドの理念を的確に表現したものと言えるでしょう。
▼ポイント2:精緻さと剛健さが同居する、メカニカルモデルもリリース
進化を止めない『ビクトリノックス』は、2018年にも大きなニュースを発表しました。ウォッチメイキングの本質を見直すべく、初めて機械式腕時計を生み出したのです。もちろん、これはただの機械式ではなく、タフネスを兼ね備えた「イノックス」シリーズの最上級に位置。繊細さと剛健さ。両方を併せ持つメカニカルモデルは、環境に配慮したウッドストラップの採用でも注目されました。
▼ポイント3:ニーズに合ったバリエーション展開
2014年のデビュー以来ブランドの顔となった「イノックス」からは、ニーズに合わせて多くのバリエーションが登場しています。下の3本に代表されるように、耐久性だけでない魅力を備えるからこそ、アイコニックなシリーズとして位置しているのです。
1本目
イノックス カーボン ブラック
ただでさえ多くの耐久テストに合格したモデルが、カーボンケースをまとってさらにパワーアップ。1,000度の超高熱に耐え、傷や衝撃にも強くなり、抗アレルギーという長所も加わりました。機能面だけでなく、パラコードまで黒く統一されたビジュアルも必見。タフネスでありながらもスタイリッシュな1本です。
2本目
イノックス プロフェッショナルダイバー レッド
ファンの多いダイバーズモデルもスタンバイしています。深海というタフな環境でも、もちろん機能性は損なわれません。ダイビングスーツの上からでも容易に着脱できるラバーストラップや、インデックスに蓄光塗料を施した視認性の高いダイヤルを採用するなど、“ならでは”の改良も加わりました。また、ルーペ機能を備えたドーム型の専用バンパーも付随。古き佳きダイバーズウォッチのような絶妙なデザインが物欲をそそります。
3本目
イノックスV
「イノックス」シリーズのラインアップは幅広く、実は女性向けモデルもリリースされています。とはいえ小ぶりなサイズ感は腕時計における一大トレンドであり、その力強いデザインも相まって性別を問わず身に着けられるのが女性向けモデルのメリットです。サイズダウンしてさらにモダンになった「イノックス」なら、シェアウォッチとしても活躍しそう。重さ32%、厚さは33%、ケース径も6mm抑えた小ぶりさは、通常の「イノックス」に敷居の高さを感じていた人にもおすすめです。
「イノックス」だけじゃない、3つの主要シリーズもレコメンド
計器としての信頼性が操縦者の生命に直結する大空も、『ビクトリノックス』のカバー領域です。ここでは、同じく空に想いを馳せた2シリーズ、そしてマルチな魅力を備えた2シリーズの計8本をピックアップ。
▼シリーズ1:航空機器にインスパイアされて誕生した「エアボス」シリーズ
今シリーズは、航空機の離着陸をコントロールする指揮官「エアボス」からもじって名付けられた本格派。抜群の精密さでアビエーターウォッチの本懐を表現しています。
1本目
エアボス マッハ9 ブラックエディション
高速な空の旅にも耐えうる。そんな思いから誕生した漆黒のコレクションです。オールブラックがスタイリッシュな一方で、クロノグラフを備えた自動巻きという充実の機能面。裏からムーブメントが覗くシースルーバック仕様です。
2本目
エアボス メカニカル
シンプルな機能ながら、存在感のあるルックス。レザーベルトも相まって、独特の男らしさを醸し出します。風防には耐傷性に優れたサファイアクリスタルを用い、インデックスはスーパールミノバを塗料。こちらもシースルーバッグ仕様の自動巻きです。
▼シリーズ2:控えめなデザインに高級感を載せた「アライアンス」シリーズ
「エアボス」同様に空をテーマとする「アライアンス」シリーズは、その端正さゆえシティユースはもちろんビジネスシーンにもうってつけ。優れたスペックを担保しながら、大人の日常に寄り添ってくれます。
1本目
アライアンス スポーツ クロノグラフ
ブラウン、ブラック、シルバー。そんな落ち着いた配色のなかで、アクセントカラーのレッドがスポーティに印象づけます。クロノグラフ機能のほか、タキメーター付きのベゼルも装備。マルチツールをイメージした秒針のデザインなど、細部にも注目です。
2本目
アライアンス(マルチツール付き)
スーツと相性抜群の1本です。ステンレススチールとブラックダイヤルのコンビネーションが実にエレガント。なお、スペシャルボックスに入れられ、同色のマルチツールも同梱。特別仕様で気分を高めてくれます。
▼シリーズ3:人に寄り添う高機能モデル、「マーベリック」シリーズ
ブランドが得意とするマルチツール同様、多機能さ、高機能さを売りとするのが「マーベリック」シリーズ。『ビクトリノックス』が“トラベルギア・バッグ・ウォッチ”と標榜する、同作の魅力を掘り下げましょう。
1本目
マーベリック ブラックエディション
100m防水に、無反射トリプルコーティングのサファイアクリスタルガラス、比類無き精度を誇るクォーツムーブに、何より信頼のスイス製。実直な『ビクトリノックス』のモノ作りを表わすかのようなアイテムに仕上がった1本です。しかもこちらは、PVD加工のオールブラックモデル。スタイリングを選ばないスタイリッシュな見た目は、長く愛用するに足るモノです。
2本目
マーベリック クロノグラフ
上記モデルを、クロノグラフに落とし込んだのがこちらのモデル。10気圧防水は保ちつつ、文字盤内のカウンターがきちんと3時、6時、9時に収まっているのも高ポイントです。武骨な3連ブレスは43mmの力強いケース径と相まって、男のダイバーズといった雰囲気を醸し出します。
▼シリーズ3:高級感と機能性の共存「フィールドフォース」シリーズ
判読性抜群のインデックスに、スポーティさを煽る滝メーター表示。ゴールドを基調としたモデルも多く、ラグジュアリーさも担保してくれる「フィールドフォース」も、『ビクトリノックス』に欠かせないシリーズの1つです。
1本目
フィールドフォース スポーツ GMT
世界を股に掛ける男のための腕時計を数多く送り出している『ビクトリノックス』。もちろん、ワールドタイムを記してくれるGMT機能を備えたモデルも用意しています。しかし、どうせならかしこまりすぎず遊びを効かせるのも、旅を楽しむ大人の余裕。ただでさえ大人なニュアンスを効かせた1本なら、オレンジの挿し色も気持ちよく馴染んでくれます。
2本目
フィールドフォース クラシッククロノ
イエローゴールドの挿し色がぎんぎんに効いたラグジュアリーな1本もお目見え。文字盤は落ち着いたグレーなので、いやらしく映ることもありません。紺ブレやリゾートジャケットにもグッドマッチなゴールドコンビは、初夏の腕元にもしっかり馴染んでくれます。
「衣食蹴」をフィールドに活動中
増山 直樹
会社員として15年ほど働き、複数の出版社で若者向け・大人向けのメンズファッション各誌、サッカー専門誌、グルメ誌などを担当。現在はフリーのエディター・ライターとして活動中。これからもジャンルレス&ハピネスな感じで頑張りたいデス。