サーマルは男の必須ワードローブ。実は1年中着られる万能服なんです
インナーとしてはもちろん、トップスとしても活躍してくれるサーマルカットソー。1枚といわず何枚持っていても便利なサーマルの、歴史や着こなしまで一挙にご紹介します。インにもアウトにも大活躍。サーマルについて知っておく
「熱」や「温度」を意味する“Thermal”が語源となっている通り、そもそもサーマルとは保温・防寒用に作られたカットソーのこと。その歴史ははっきりと判然としていませんが、1910年代には既にウールやコットンを用いたサーマルが製造されていました。当時は防寒用の肌着や運動着として着用されていましたが、そんなサーマルの保温性をフルに活用したのが各国の軍隊。第二次大戦期はもとより現代に至るまで各国の軍隊でサーマルが採用され続けていることからも、その利便性の高さがうかがえるでしょう。
生地の編み立てによって凹凸感を出すことで、保温性の高さや肌離れの良さに加えて風合いもプラスされているのがサーマルの魅力。そのため夏にトップスとして1枚で着用してもサマーニットのような雰囲気が出るうえに、冬はインナーとして着用すれば非常に暖か。ヘンリーネックを採用しているサーマルも多いため、サーマル+シャツで着用した首元にアクセントが生まれるなど、抜群の使い勝手の良さを誇ります。また、生地に厚みがあるため、1枚で着ても乳首が透けにくい、なんていう地味にうれしいメリットも。
サーマルの種類は2つ。「ワッフル」と「ハニカム」の違いを押さえるべし
サーマルとTシャツの違いは、要するに生地。天竺編みのTシャツに対し、サーマルではワッフルやハニカムといった立体感のある生地を使用しています。ここではサーマルに使用される生地の特徴を解説します。
種類1
主流はこちら。立体的な網目模様が特徴的な「ワッフル」
ベルギーワッフルのように四角形の凹面が連続する編み立てが施されているのが、ワッフル生地。凹んだ部分に空気が溜まることで保温性が高まり、凸部分が肌に擦れることで摩擦熱を発生するように考えられています。また、肌との接触面積が少ないためドライタッチになるのも特徴で、風通しも非常に良くトップスとして1枚で着用した際は想像以上に涼しいのも魅力です。がっしりと目の詰まった編み立てのモノからサラリと薄手のモノまで、さまざまな厚みで仕立てられています。
種類2
ヴィンテージにも見られる、玄人好みの「ハニカム」
ミリタリーサーマルなどで使用されることが多いのが、蜂の巣状に編み立てたハニカム生地。基本的な特徴はワッフルと同様ですが、ハニカムの場合はより左右のストレッチ性が強いのが特徴です。そしてミリタリーサーマルの場合、機能素材のない古い時代のモノは保温性と耐久性を重視した厚手の編み立てで、'80年代以降は肌着としての着心地を重視したタイトで薄手のモノが増えています。
サーマルをインに着るならややタイトに、1枚で着るならゆとりを
着こなしによって保温性が変わるのもサーマルの特徴です。秋冬はメリノウールやコットンの厚手なサーマルをインナーとしてタイトに着れば、機能性下着に負けない暖かさを与えてくれます。化繊のようにニオイが付きにくいのも長所で、「山登りをするなら、機能性下着よりも絶対にメリノのサーマルのほうが良い」と登山家が口を揃えて言うように、特に野外で汗をかくアクティビティをする際はサーマルに勝てるインナーはないといえそうです。
春夏ならば通気性に優れる甘い編み立てのモノをゆったりと着れば、サマーニットのようなドレープ感や肌離れの良さを楽しむことができるでしょう。特にコットンリネン素材を用いたサーマルなどでは、ドライタッチで涼しげな着心地を楽しめます。写真のようなレイヤードで、アクセントを付けるとモアベターです。
ガチスペックものからおしゃれ着用まで。サーマルのおすすめ12選
今でも軍にサーマルを納入している本格派のブランドからトレンドをプラスしたセレクトショップオリジナルまで、バリエーション豊かにおすすめ品をピックアップ。コーデの要として活躍してくれるサーマルたちをご紹介します。
アイテム1
『ヘインズ フォー ビオトープ』ロングスリーブサーマルTシャツ
アメリカンカットソーの定番ブランド『ヘインズ』の中でもサーマルはかつて米軍に商品供給していた歴史を持つ由緒正しいアイテム。本作ではBIOTOPがビッグシルエットに改良。ロングリブやバインダーネックの採用によってロングタイムに愛用できるタフさも実現しつつ、両脇と袖下は4本針のフラットシーマで仕上げることでストレスフリーな着心地を備えています。
アイテム2
『アルファ』ヘンリーネック サーマルTシャツ
サーマルは軍用のアンダーウェアをルーツに持つだけあって、ミリタリーブランドの『アルファ』のアイテムの作りの良さはお見事。ハニカムパターンの素材にヘンリーネック、畦編みリブを採用するなど、しっかりとヴィンテージミリタリーのディテールを踏襲しています。
アイテム3
『ジャックマン』Thermal Crewneck
古き良きアメリカを体現したモノ作りを行う『ジャックマン』の一品は、玄人好みのハニカム地。しっかりと目の詰まった編みを行いつつ、上質なピマコットンを使用することで滑らかな着心地も実現しています。作りにこだわる同ブランドらしく、肌に当たる面の縫製はフラットシーマ。裾も切りっぱなしではないので、洗濯機でガンガン洗えます。
アイテム4
『ヘルスニット』スーパーヘビーワッフル 長袖タートルネックカットソー
1900年にテネシー州ノックスビルで生まれた老舗の『ヘルスニット』。こちらは編機の限界まで度詰めしたブランド定番のスーパーヘビーワッフルを用いてタートルネックで、アンダーウェアとしてよりもサマーニットとして使いたい仕上がり。コットン素材のため吸汗性に優れ、肌へのタッチも良好なのもうれしいポイントです。
アイテム5
『フルーツオブザルーム』 ハリヌキサーマルニット
『ヘインズ』と並んで有名なアメリカ生まれのTシャツメーカー『フルーツオブザルーム』のサーマル。針抜きでハニカムに編み立てることで、厚みがありつつも程良い通気性と軽やかさをプラスしています。ラグランスリーブ仕様なのも珍しいポイントです。
アイテム6
『ロサンゼルスアパレル リミテッドライン』ユニセックスサーマル
『アメリカンアパレル』の創業者であるダブ・チャウニー氏が新たに立ち上げた『ロサンゼルスアパレル』のサーマル。肉厚な生地にドロップショルダー、短めの着丈と、リラックス感がありつつトップスとして着用できるように仕立てられており、店舗限定でリリースされた希少作です。
アイテム7
『インデラミルズ』 839LSヘビーウェイト
アメリカに現存する最後のサーマルメーカーとも言われる『インデラミルズ』のサーマルはコットン100%の6.5オンスという極めて厚手の生地を採用。今でもMADE IN USAを貫くブランドであり「米軍兵士が極寒冷地で愛用する」という触れ込みは伊達ではありません。
アイテム8
『メンズメルローズ』UNPERFECTサーマルニットヘンリーネックT
フランス軍のヴィンテージ ヘンリーネックをベースに、日本国内で少量生産したハニカムワッフルを使用したサーマルニット。ドロップショルダーでワイドなボックスシルエットで極力シンプルに仕上げつつ、ヘンリーネック部の補強布でアクセントを加えています。
アイテム9
『マナスタッシュ』スナッグ サーマル ロング スリーブ
シアトル発の人気アウトドアブランド『マナスタッシュ』のロングセラーアイテムが今季より胸ポケ仕様になってリニューアル。コットン50、ポリエステル50のワッフル素材は軽量かつ洗濯耐性にも優れており、ワイドなシルエットで裾リブ付きのためスウェット感覚でトップアウターとして着用可能です。
アイテム10
『ジムマスター』ワッフルロングスリーブ
異なる色目の経糸と緯糸で編み上げることで独特な表情を生み出したリバーシブル仕様のサーマル。リンガーやリブにも配色を施すことでトップアウターとしての迫力を出しています。また、折り返しやサイドロック仕様になっているため、表と裏のどちらで着ても快適な着心地になるように配慮されています。
アイテム11
『ラッセルアスレティック』別注 サーマル クルーネック Tシャツ
1902年に創業した由緒正しき老舗スポーツウェアブランド『ラッセルアスレティック』。こちらは『シップス』の別注品で、吸水速乾素材のクールマックスを混紡した快適な着心地のアイテム。3本針の縫い合わせパターンが、ヴィンテージのような奥行きある表情を見せてくれます。また、左腕部には別注ならではのネイビーのイーグルマークをあしらい、特別感を演出した逸品です。
アイテム12
『フリークスストア』 サーマルレイヤード 半袖Tシャツ&タンクトップ
クレイジーパターンのTシャツとタンクトップサーマルのセットは、それぞれ単体で着てもレイヤードしてもOK。程良くビッグシルエットなTシャツにインナーとしてサーマルを着れば、裾からサーマルがチラリと覗くように設計されています。
高い伸縮性が裏目に。サーマルのケアで、気をつけること
サーマルのケアで気をつけたいのが、伸縮性があだとなって型崩れしてしまうこと。ワッフルやハニカムは編み地のため、洗濯する際はネットに入れて干すときは平干しにするなど、セーターに近いケアを意識したほうがベターです。また、保管時もハンガーに掛けていると肩の部分に跡がついたり伸びたりすることもあるため、たたんでの収納を心掛けましょう。また、伸びてしまった場合はウール混など、素材によってはスチームを掛けることで元に戻すことも可能です。ただし、縮み過ぎることもあるため、あくまで自己責任で行いましょう。
アメカジ&アメトラを中心にラギッドな視点で解説
那珂川廣太
バイク専門誌と男性向けライフスタイル誌で編集を約8年務めたのちに独立。ファッションはアメリカンカジュアルからトラッドまで幅広く執筆を行い、特にブーツやレザー、ジーンズ、古着など男臭いアイテムの知識が豊富。また乗り物やインテリア、フードまでライフスタイル全般にわたって「ラギッド」を切り口に執筆する。