セレクトショップのプレスが推薦。この冬、外遊びに最適なアウター
セレクトショップの人気プレス陣が、シーンにマッチする“これぞ”なアイテムを推薦するミニ連載。今回は、冬の外遊びに最適なアウターをどうぞ。冬だって外遊び。パートナーとすべきアウターはどれ?
季節は冬。ただ、自然の中に身を投じ山遊びに興じるアクティブ派は少なくないし、最近では焚き火やそれを利用した燻製作りが注目されてもいる。この時期でも楽しめるアクティビティの選択肢は、ひと昔前に比べ確実に増えた。そこで活躍するアウターを選ぶとしたら? 誰かの声に耳を傾けるならば、きっと勝手を知る人の方がより信憑性があり、頼りになる。
というわけで、セレクトショップのプレス3名に外遊びに適したご自慢の品をヒアリング。『アダム エ ロペ』は着こなしの幅を、『ナノ・ユニバース』は頼り甲斐を、『アーバンリサーチ』は往年の名品を思わせる佇まいを。日頃から触れ、各アイテムの旨味をよく知る彼らが推薦するアイテムには、暖をとるだけじゃない、有益な“嬉しい”が詰まっていた。
『アダム エ ロペ』のダウンコートは8変化で着こなしも自由自在
『アダム エ ロペ』の敏腕プレスとして業界からの信頼も厚い工藤さん推薦の品は、マルチウェイダウンコート。極力カジュアルさを削ぎ落としたことで、エレガントさを手にした軍アウターだが、それ以上のキモは“マルチウェイ”。斬新なアプローチにもう脱帽である。
「こちらのデザインベースとなっているのはモッズコート。M-51とも呼ばれる、れっきとしたミリタリーコートです」と工藤さん。ただ、特有の土くささや古めかしさは微塵も感じさせない。フラップポケットから止水ジップポケットへ、ヘムラインをフィッシュテイルからフラットにミニマル仕様へ変更した点も大きいが、何より生地にきめの細かい機能素材、プライムフレックス(R)を使用している点に注目したい。
年を重ねれば、ミリタリーアウターを“まんま着る”のは少々はばかられる。それを思えば、なんとも気の利いた1着。とはいえ、このアイテムの有益性はそこだけではない。「インナーの中綿入りライナーは付け外しができ単品としても使用可能。しかもリバーシブル仕立て。さらに裏地にはスナップボタンが付いていて丈感を変えることもできるんです。加えてフードも取り外すことができるため、1着で8つもの着こなしを楽しめます。例えば、山へ行けば散策もするだろうし焚き火もする。夜はロッジで過ごすかもしれません。となれば、有用な形に変化できる点はアドバンテージになり得ると思います」。
8面相のアウターとは恐れ入る。リバーシブルのライナーは片や縫い目を落とし込んだナイロン生地、片やフリース生地と、今のアーバンアウトドアのトレンドにもちょうどいい面構え。中綿には名だたる実力派アウトドアブランドも採用しているロフテック(R)を採用し、暖かく復元耐久性にも優れる。しかも、コートの丈感を変えることを想定した着丈。ショート丈に変更すれば、スノボジャケットのようなスポーティな見た目となり、これまた今の時流に合いそうだ。1粒で2度以上の美味しさで、今冬大いに活躍してくれるだろう。
黒を選んだことでより洗練さを増したモッズコートは、ジャケパンとの親和性が高いことを証明。ネイビーのジャケットはシャリ感のあるスポーティな趣。そこへ、モックネックのニットや目の細かいチェック柄のウールスラックスを合わせながらレトロモダンな着こなしに仕上げた。
ペールトーンのロゴ入りパーカーにストリート感が香り立つスタイル。ベージュとグレーの中間色のコートや、繊細にテーパードを効かせた美パンが醸す品の良さにより、キッズ感を回避した。トップスを淡い色で統一しながらボトムとトーンで差をつけたバランスの良さも光る。
フォトプリントを落とし込んだ黒パーカーにテーパードを効かせたきれいめなパンツ。軸は、黒一色で染め上げたモードカジュアルのお手本のような合わせ。ただ、そのソリッドな一面をオブラートに包み、街へと馴染ませることができたのは淡い色のモッズコートの恩恵。
寒さも雨も、風もしのげる『ナノ・ユニバース』の屈強ダウン
『ナノ・ユニバース』が誇る若手有望株、プレス山内さんは胸を張ってこのダウンジャケットを推す。寝具メーカー『西川』との取り組みで作り上げた『西川ダウン』シリーズの最新作で、今シーズン新たにラインアップに加わったフォトグラファーコレクションの1着である。
ご存知の方も多いかもしれない。『西川ダウン』は今季で7シーズン目を迎える、同社きってのロングセラーシリーズ。定番のG2ジャケットやカグラジャケットは、毎年アップデートを繰り返し進化し続ける。そこへ加わったのがこのフォトグラファーコレクション。「ファッション業界でも、仕事の特性上よりアクティブさが求められるフォトグラファー。彼らをも満足させるアイテム、という概念が根底にはありますね」とは山内さん。内容を聞けば、そのコメントも納得する。
「洗練を纏ったダウンは『西川ダウン』の強みですが、このシリーズはより機能面にフォーカスしています」との言葉通り、その実力はかなりのものだ。『西川』が誇る高品質ダウンによる保温性は言わずもがな、生地裏に特殊なコーティングを施し防寒性をさらにアップ。あらゆる動きやダウンの弾力を受け止める、ストレッチ性を効かせた柔軟な生地を採用し、内側に多彩なポケットまで配備されている。「外遊びでは、まず防寒、動きの自由、手ぶらなど、存分に楽しむための機能は大事。それを考慮すると、手前味噌ではありますがこの1着は理想に近いと思います」。
確かに、このビジュアルにしてこの機能は実に喜ばしい。しかも、優れた撥水性のある生地に加え、使用しているダウンは軽量で保温力も高いフレンチダウン。その上、これまでのシリーズよりも内容量を増やしているという力の入れようだ。そのため、「見た目よりも暖かく軽さも感じてもらえるはず」と語り、『西川』独自の加工を施しているため衛生的で長期にわたる活躍も見込めるという。また「インナーのダウンは単独でも使えます。デザインベースが昨季からじわじわ注目度を高めているフィッシャーマンベスト。オールブラックのクールな佇まいなので使いやすいですよ」と太鼓判を押す。
ダウンジャケットにデニムシャツにチノパンとくれば、アメカジか80年代のイタリアをイメージしていまいがち。ただ、スタイリッシュな趣のダウンであればモダンな印象を受ける。スラックス然としたチノパンをダブルにすることで加えた足元の抜け感がなんともこなれた雰囲気。
注目カラーのブラウンをアウターに登用。シンプルな黒パンとの合わせはコンサバに終始する危険性もはらむが、インナーにGジャンを着込むことでさりげなく変化を生み出した。そのモダンとクラシックの相反するトップのMIXで、スタイルを個性的かつ新鮮に見せている。
コーディネート全体をルーズに合わせた、実に今っぽいルック。ややもすると野暮ったさが前面に押し出されそうだが、上下をブルートーンにまとめることで程良く緩和。内側のブラックによる引き締め、さらにはネック部や足元の白のハズしが奏功し、バランスのとれた佇まいに。
風合いやアレンジの自由もある『アーバンリサーチ iD』のマウンテンパーカー
『ナンガ』に別注をかけたこのソフトシェルをして、「クラシック好きも最新好きもきっと気にいるのでは」と話すのは、『アーバンリサーチ』の人気プレス栁堀さん。そのワケは、レトロな風合いと各々のライフスタイルや着こなしに沿ったアレンジにあり。
2010年から続く『アーバンリサーチ』と『ナンガ』の蜜月な関係。勝手知ったる両者ゆえに、これまで大人の物欲をかき立てる多くのアイテムを発表してきた。その栄えある歴史に名を刻むのが、こちらの別注ソフトシェルマウンテンパーカーである。『ナンガ』といえば、国産シェラフメーカーとして名を馳せる実力派。過酷な環境にも耐えうる最新機能を搭載したアイテムが得手だけに、今回のレトロルックスな1着がなんとも楽しい。「この手のアイテムは今回が初出し」と栁堀さんもその出来栄えに自信を覗かせる。
その趣はどこか往年のマウンパで使われていた生地が放つ味わい深さを想起させる。ゆえにクラシック好きにはたまらない一品となるだろう。とはいえ、「程良い光沢と落ち感のある生地だけに、そこまでノスタルジックな感じにはならず、むしろリラックスフィットがさりげなくモダンさを誘い、自由なレイヤードも楽しめる」とのこと。
しかも、着心地がこれまた軽快で、「ブルゾンやフリースの上からでもサラリと羽織っても、温もりを手にしながら機動力にも長ける。アスレチックやハイクにもきっと重宝するのでは」と抜群の使い勝手をウリに挙げる。
そして、特筆すべきはルックスもさることながら、別売りで展開されているインナーダウンのアレンジ。単独でも使用できるインナーダウンは、ベストとノーカラージャケットの2型を用意。合体させれば保温性は確実にアップし、リバーシブル仕様のためマウンパを脱いだ時にも強力な存在感を発揮する。レトロモダンなルックスと、機能の追加という最新好きにも響きそうなアレンジの余白。長年培った『ナンガ』との協力関係があればこそのアプローチは我々を大いに楽しませてくれそうだ。
直球的クラシックのガンクラブチェックのセットアップは、街で着るとなるとハードルが高い。ただ、レトロモダンなマウンパやインナーのカットソー、バケットハットなど、周辺を黒で統一したカジュアルアイテムで固めることでその難題を見事に解消。街との親和性を高めている。
アウターのテイストと足並みを揃え、インナーにはネルシャツを起用した潔いアメカジルック。得てしてマンネリ気味に陥りがちなアメカジも、トップスはオーバーシルエットを選び、ボトムにスラックスを取り入れながら現代的に表現したことで鮮度を保つことに成功。
メインはマウンパも、コーデ全体をモノトーンに仕上げることでアウターの持つ山っぽさを緩和した好サンプル。平面的になりがちなところを、グレンチェックのノーカラーシャツで程良く変化をつけながらセンターラインに奥行きをプラスした。足元のボリューム感もいい感じ。
Photo_Yuta Kono(出典記載の写真を除く)
無類のスポーツ好き。得意ジャンルは革靴
菊地 亮
地方の出版社にて編集を経験した後、独立。フリーのエディター・ライターとしてメンズファッションを中心に、スポーツ、グルメ、音楽など幅広い分野で活動。現在は、生まれ故郷である岩手県、そして東北の魅力を発信すべく東奔西走中。