ドイツの名門、ユンハンス。バウハウスデザインの極致をその腕に
お手頃価格なのに誰が見てもおしゃれで時計マニアも一目置くブランド。『ユンハンス』の圧倒的なデザイン性、ドイツ製ならではの信頼性など、人気の秘密を解剖します。デザインにこだわる大人に選ばれるドイツ生まれの『ユンハンス』
ファッション業界人やデザイナーなど感度の高い人たちに、絶大な支持を受けているブランドがあるんです。その名は『ユンハンス』。1861年、ドイツはシュランベルクで創業した歴史あるこのブランドは、とくにヨーロッパでは高い知名度を誇る超メジャーブランドです。バウハウスの影響を受けた機能美あふれる芸術品ともいえるデザイン、そして品質も確かなドイツ製なのに手の届く価格。『ユンハンス』は時計界でも1位2位を争うコスパのいいブランドなのです。
オーナーとなる前に、知っておきたい『ユンハンス』のこと
『ユンハンス』は語るべきことが多いブランド。デザインにひと目ぼれでもいいけれど、それだけではもったいありません。知れば知るほど『ユンハンス』が好きになる、そんなうんちくにしばしお付き合いを。
その1
ドイツで150年以上続くウォッチ&クロックカンパニー
『ユンハンス』の歴史は1861年にさかのぼります。部品製作からスタートしたブランドは早くも1866年に自社製の時計製造を開始、1903年には従業員は3000人、年間300万個を製造する世界最大のウォッチメーカーになるまでに成長しました。機械式腕時計では自動巻きキャリバーJ83など数々の銘機を自社開発し名を馳せますが、1970年代にはドイツ初のクォーツ腕時計を完成。また1992年には世界初の電波腕時計「メガ1」を発表。なお、「メガ」の名前は2018年に「マックス・ビル」や「マイスター」にも継承され、電波時計の先鋒を示しました。
その2
バウハウスの血脈にある、シンプルデザインの極致
代表作「マックス・ビル」に代表されるように、デザインはバウハウスの流れをくみ、余計な装飾を排除したシンプルさが身上。ベゼルを極限までスリム化し文字盤を際立たせているうえ、カーブした文字盤の形状に合わせ、針の先端を折り曲げてまで長さを確保し視認性を高めるなど、腕時計にとって1番大事な視認性にこだわっているのです。バウハウス直伝のこの徹底的な機能主義こそが『ユンハンス』の魅力であり、すべてのシンプルウォッチのお手本となっているのです。
その3
ドイツブランドらしい、精緻で精密な作り
超絶技巧で複雑機構を作り上げマニアをとりこにする『ランゲ&ゾーネ』、特殊テクノロジーを駆使した腕時計を世に送り出している『ジン』など、ドイツブランドの腕時計は堅実な作り込みで圧倒的な支持を受けています。『ユンハンス』も例外ではありません。例えば「マックス・ビル」ではカーブを描く繊細な針の美しい仕上げや均一に盛られた蓄光インデックスなど、10万円台で手に入る腕時計とは思えない品質を実現。また、信頼性の高いムーブメントをドイツの職人が丁寧にフィニッシングした、内部機械の高いクオリティも見逃せない一面です。
『ユンハンス』を代表する腕時計を、3シリーズで紹介
『ユンハンス』といえば「マックス・ビル」の名前が真っ先に挙がりますが、それだけが『ユンハンス』ではありません。クォーツ、機械式、電波時計と各種取り揃える同ブランドの幅広さを、「マックス・ビル」をはじめとした3シリーズで見ていきましょう。
▼シリーズ1:ブランドの顔、「マックス・ビル」。バウハウスデザインをその腕に
デザイン界に大きな影響を与えたドイツの美術学校、バウハウス。その最後の巨匠といわれるマックス・ビル氏がデザインしたコレクション。元となったのは、彼自身が手がけたキッチンタイマーで、日常的なプロダクトに機能主義を持ち込んだ傑作として知られています。現在MoMAに永久収蔵されている壁時計を作った後、1962年に登場した腕時計は視認性の高さと普遍的なデザイン性で瞬く間に『ユンハンス』の代表モデルに躍り出ました。現行モデルもその姿をほとんど変えずに永遠のデザインを継承しています。
1本目
マックス・ビル オートマティック
自動巻き機構を採用した「マックス・ビル オートマティック」。3時位置にはデイト表示を搭載し、普段使いにも便利です。視認性抜群のシンプルフェイス、さらに繊細なラグに落ち着いたカラーリングのレザーストラップをセットし、都会的な面持ちも魅力的。ケース系も小ぶりな38mmと腕馴染みも抜群です。またデイトなし、バーインデックスのモデルもラインアップしており、お好みに応じてセレクトできます。
2本目
マックス・ビル クロノスコープ
クロノグラフ付きのクロノスコープ。カウンターの数が増え、文字盤のごちゃつきが気になるクロノグラフですが、「マックス・ビル」に関しては一切心配いりません。大きなダイヤルに繊細なインデックスが施され、あくまでクリーンな印象をキープしています。裏蓋も適度に盛り上がっておりかさがあるので、プッシュボタンが押しやすいのもポイントです。レザーストラップの他に、ミラネーゼブレスも用意されています。
3本目
マックス・ビル ハンドワインド
毎日ゼンマイを巻き上げる手間は必要なものの、手巻きモデルの最大のメリットは小さくて薄いこと。ケース系は34mm、ケース厚は8mmと、最近の腕時計の中ではかなり小ぶり。軽くて着けていることを意識しないし、シャツとの馴染みも抜群のサイズ感です。自動巻き機構が省かれているため、メンテナンス的にもメリットがあります。レザーベルトモデルなら、スーツにもぴったりハマりますね。
4本目
マックス・ビル メガ
文字盤上の要素は既存「マックス・ビル」と変わらないながら、0.5秒ずつ運針をするスマートハンドモーション、1日1440回の自動時刻修正を行うインテリジェント・タイム・コレクション技術などの最新テクノロジーをこれでもかと搭載。ドーム型のプレキシ風防の温かみと先端技術が同居する、ユニークな1本に仕上がっています。
▼シリーズ2:「マイスター」美しいフォルムと技術が高次元で結実
そのルーツは1936年にまでさかのぼる歴史的なモデル。「時計の建築家」と呼ばれたアントン・ツィーグラー氏がデザインし、後に名作キャリバーJ82やJ88を搭載するなど、『ユンハンス』の象徴として「マイスター」は長らく君臨してきました。そのバリエーションは、クラシカルでエレガントなドレスウォッチからパイロットウォッチまで多岐にわたります。いずれのモデルも要素を整理した優れた視認性やハイクオリティな作り込みをはじめとする、ジャーマンウォッチならではのモノ作り精神が宿っています。
1本目
マイスター クラシック
美しい鏡面仕上げが施された9連のエレガントなブレスレットが目を引く自動巻きモデル。風防は丸みを帯びたクラシカルなプレキシガラスで、耐久性を高めるコーティングが施してあります。「マックス・ビル」と同じく、盛り上がったボンベダイヤルに沿うようにカーブした針が特徴で、視認性の高さもしっかりと確保。「マックス・ビル」とは異なりシースルーバックなので、裏蓋からコート・ド・ジュネーブ加工とペルラージュ加工が施されたムーブメントが覗けるのもポイントです。
2本目
マイスター クロノスコープ
「マイスター」のクロノグラフ。「マックス・ビル クロノスコープ」同様、実績のあるムーブメントに『ユンハンス』が独自にフィニッシュ加工を施しています。日付と曜日が表示されるデイデイトを搭載しているので、ビジネスの現場では大いに役立つでしょう。また、ケース径も40.7mmと程良く存在感を放つサイズなので腕元のアクセントとしても活用できます。
3本目
マイスター ドライバー クロノスコープ
クラシックカーのダッシュボードにインスピレーションを得たコレクション。カラーリングは1930年代のマイバッハと1950年代のメルセデスをイメージし、ツートンカラーでまとめたノスタルジックな印象です。また、スケルトンバックから見られるムーブメントにはロジウムメッキが施されているほか、ローターにはコート・ド・ジュネーブ加工があしらわれるなど、高級感あふれるムードが大人の余裕を感じさせてくれます。
4本目
マイスター テレメーター
戦場で、大砲の閃光と音から敵の距離を測るために使われていたテレメーターを採用したレトロな1本。同時に速度を計測できるタキメーターも装備されています。2つの特殊計測機能が搭載されたモデルにふさわしい、高精度ムーブを搭載しているのも魅力です。文字盤はアンティークの薫りを漂わせながらも、9連のブレスレットは装着感に優れた現代的な仕様で、まさに新旧のいいとこ取りをしたモデルです。
5本目
マイスター メガ
文字盤にあしらわれた世界地図が、ワールドワイドなあ空気を醸し出す「メガ」の派生の1本。シースルーバックというと機械式時計の特権のように聞こえますが、こちらも裏蓋から電波を受信し駆動する精密機器を鑑賞することができます。あえて振り切ったデザインに落とし込んだ『ユンハンス』のデザイン力には、脱帽のひと言です。
▼シリーズ3:普遍的で工業的、ドイツデザインの醍醐味を堪能できる「フォーム」
2017年に登場した「フォーム」は、バウハウスのシンプルな機能主義を継承しながら、さらなるモダンさを追求した新コレクション。「マックス・ビル」のドーム型風防に対し、「フォーム」はフラットで、さらに耐傷性に優れるサファイアクリスタルを採用しているのもポイントです。すり鉢状のダイヤル、凸型のケース、スクエア型のエンボスインデックスなど、立体的な意匠を多く施しながらも、『ユンハンス』ならではのミニマルさは健在。シーンを選ばず活躍できるシンプルウォッチです。
1本目
フォームA
バウハウス譲りのシンプルさをキープしながら、フラット風防やエンボスインデックスなど、モダンなディテールを追加した「フォーム A」。そのフラットな風防に対し、ダイヤルは凹状にカーブしているのも大きな特徴。この絶妙なコントラストがクリーンさを保ちながらも立体感的なニュアンスを生むことに一役買っています。また、裏蓋に向かって大きく絞り込まれたケースはシャープな見た目を演出するだけではなく、肌に触れる部分が少なくなるぶん、装着感にも優れています。
2本目
フォームC
「フォームA」のミニマルデザインはそのままに、クロノグラフクォーツ機構を搭載した「フォームC」。シンプルな凹凸で表現された縦目のツーカウンタークロノは、デザイン的にも秀逸です。文字盤の仕上げ、デイト窓のあしらいなど、細部まで手の込んだ作りには、さすが老舗と唸らされられます。
3本目
フォーム メガ
「フォーム」の汎用性の高い見た目に、「メガ」の電波機能を搭載した「フォーム メガ」。インデックス、ストラップのコバにあしらわれた赤がポイントとなり、近未来的な空気を醸し出しています。なおこちら、2020年発売の世界202本限定モデルとなります。
海外での取材経験も多数。時計専門ライター
夏目 文寛
出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーのleather bagに。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。