夏のスーツを買う前に。押さえておくべき選び方とおすすめ8選
夏はノータイ&ノージャケットが一般化していますが、スーツを着ないといけない業種やシーンもあるものです。そんな人のために用意しておきたい夏用スーツをご紹介します。夏用スーツを選ぶ際のチェックポイントは?
スーツは大きく分けて春夏用と秋冬用があり、それぞれ素材と仕立てが少々異なっています。特に国内ブランドの盛夏用スーツは、高温多湿な日本の気候でも着られるスーツとして、インポートブランドの夏用スーツよりも涼しく着られる工夫がされているんです。暑がり&汗かきの人は、海外ブランドより日本ブランドのスーツを選ぶのがおすすめですよ。ほかにも押さえておきたい、選ぶ際のポイントを解説します。
▼ポイント1:夏向きの生地を知る
夏用スーツは、冬用の厚手でふっくらと空気を含んだ生地ではなく、シャリッと硬く薄手で、通気性が良く、触ったときにひんやりとする生地が使われます。糸を細く強く撚った強撚糸を使った生地や、モヘアやリネンなど清涼感ある素材をウールと混紡した生地、表面に凸凹があって通気性が良く汗ばむ素肌にも張り付かない織り方の生地など、種類はさまざまです。
種類1
強撚ウール
文字どおり「強く撚った」細くて硬い糸で織り上げると、薄手でなおかつしなやかな、光沢感のある生地になります。強撚糸を使った生地は手触りがシャリッとしていて、ひんやり涼しいために夏生地として多用されるのです。
種類2
モヘア混
「モヘア」はアンゴラ山羊の毛。アンゴラ山羊の成獣の毛は、太くて硬く弾力性があり、直毛なので光沢があります。上品なツヤが浮き上がり、ウールと混紡するとシャリッと硬く仕上がるので夏生地に最適です。
種類3
リネン混
リネンはカジュアルアイテムの夏素材としては定番ですが、スーツの場合はウールと混紡することでビジネスにも使えるドレッシーな素材になります。リネン100%のスーツはシワが入りやすく、ビジネスエレガンス的には少々困りものですので、混紡素材の生地が良いでしょう。
種類4
ホップサック織り
ホップサックとは、ビールの苦味をつけるホップを収穫する麻袋に似ていることからつけられた凸凹織りの生地。軽くて通気性が高いため、夏生地によく使われます。スーツもありますが、単品ジャケットに多く見られ、夏場はさらりとドライなタッチで着用可能です。
種類5
シアサッカー
「しじら織り」とも呼ばれる、表面に縮みの織りうねがある生地。コットンベースで白×水色のストライプといったカジュアルなモノが多いのですが、最近はネイビー無地もあり、ビジネススーツとしても使えます。アメリカントラッドの老舗『ブルックスブラザーズ』が世界で初めてスーツに採用したもので、凸凹生地が汗ばんだ肌に張り付かず夏も快適に着ることができます。
▼ポイント2:夏仕立ては裏地を見て選ぶ
キュプラの裏地は表地よりも通気性が低いものです。そのため夏用スーツはジャケットの裏地が半分になっていたり、あるいは極力少なく使われていたりするモノが多いのです。裏地が少なくなると、表地の裏面の処理や芯地が丸見えになるなど、いろいろな不都合がありますが、そういった点をきちんと処理してあるスーツは、作りの良いスーツといえるでしょう。どのような処理、つまり仕立てが行われているかをチェックするのも大事なポイントなんです。
仕立て1
半裏仕立て
総裏の場合は背中の裏地が全体に縫いつけられていますが、着丈の半分から下側を縫い付けずにひらひらとさせたものを「半裏仕立て」といいます。背中の熱気がこもりにくいため、夏用スーツでは定番の仕立て方です。
仕立て2
背抜き仕立て
完全に裏地を使わない「背抜き仕立て」は、高度な仕立て技術を要するものです。肩の部分には表身と共地を使って肩の芯地を隠すのが一般的ですが、なかには肩に副資材を使わない完全なアンコン仕立てのものも見られます。背裏とともに肩部分も薄く作られるため、夏でも軽く羽織れます。
仕立て3
アンコン仕立て
アンコン仕立ては、「Un-construction(非構築的)」の意で、肩の保型のための芯地や増芯などを減らしたり、完全に取り去った仕様のことです。アンコンにすることで、肩が薄くなるため軽量で涼しく、身体にフィットして丸くなるので自然なラインを描きますが、そのぶん仕立ての技術力を要することになります。近年は縫製技術の向上によってアンコン仕立てが増えており、春夏、秋冬を問わず着られるようになりました。
▼ポイント3:見た目にも涼しい明るめのトーンや爽やかな柄がおすすめ
夏場に黒い服は着ている本人も周りも暑苦しく、逆に白い服は涼しげに見えます。これは太陽の光を反射するから。少しでも涼しく着たいなら、スーツは明るいトーンのものを選びましょう。ネイビーよりも明るいブルー、ダークグレーよりライトグレーが夏向きです。また、柄によって爽やかさを演出できるモノも押さえたいところ。そんな色柄について見ていきましょう。
色柄1
ライトグレー
夏場において最高に涼しい色といえば白ですが、白スーツで会社に行くわけにもいきませんので、白に近いグレーのスーツを。梳毛のライトグレースーツなら、太陽の光を反射してくれますし、周りからも涼しげに見えます。
色柄2
千鳥格子
ハウンドトゥースとも呼ばれる手裏剣型のマイクロチェックは、遠目に明るいグレーに見えるので、夏のライトグレースーツに準じる色柄といえます。英国的な雰囲気がありつつも、モノトーンのモダンな印象も漂うのでおしゃれ度も高めです。
色柄3
グレンチェック
英国由来のクラシック柄も、遠目からはライトグレーに見える色柄。秋冬生地のモノが多いですが、春夏用にクリアカットされた梳毛生地なら、ぜひとも1着は用意しておきたいスーツです。
ちなみに
ヨーロッパでは夏の太陽を反射する玉虫色に輝く「ソラーロ」という生地が人気
一見オリーブベージュですが、光の加減でラズベリーカラーが浮き上がる玉虫織りの「ソラーロ」生地。陽光降り注ぐ南イタリアで人気の生地です。英国貴族からはリゾートで着る「サンクロス」と呼ばれて愛されています。
▼ポイント4:清潔&快適に着られる機能も重視
暑い夏に汗を止めることはできなくても、かいた汗を素早く乾かすことができたり、家庭で簡単に洗濯することができれば、スーツを快適に着られます。そんな吸汗速乾性のあるモノや、洗っても型崩れしにくい、シワになりにくいといった機能を備えた素材を選ぶというのも1つの手です。
機能1
吸汗速乾性
吸汗速乾性を備えた1着なら、汗ばむ夏でも汗や湿気を吸い取って素早く乾燥。気化熱が衣服内の熱を奪って涼しいうえに、汗ぬれで不快な思いをすることはありません。おすすめは、スポーツウェアなどに使われる速乾性の高いクールマックスをブレンドしたスーツ。以前は化繊のスーツは安っぽく見えましたが、近年は技術も向上していて天然繊維のルックスはそのままです。
機能2
ウォッシャブル
最近増えている洗えるスーツは、シワになりにくい表地、乾燥しやすい芯地やパッド、洗濯機内でもほつれない縫製仕様など、さまざまな技術が用いられています。自宅で簡単に洗えるので、気になる汗やニオイもきれいさっぱり。いつもで清潔に着ることが可能です。クリーニング代も抑えられて何かとお得。
機能3
防シワ加工
夏の外回りでは、移動時はジャケットを脱いで持ち歩くという方も多いはず。そんなとき、ポリエステルなどのシワになりにくい素材を使ったアンコン仕立てのジャケットが重宝します。出張の多い方なら、クリースがとれにくいパンツとセットになったトラベルスーツもおすすめです。
▼ポイント5:特殊加工の涼感スーツにも注目を
繊維化学の技術進歩によってさまざまな涼感スーツが生まれています。イタリアの生地メーカー、レダ社のアイスセンスは、生地の表面に特殊加工を施して太陽光線を反射。生地の温度上昇を抑えて夏の暑さを軽減するというものです。通常の同色生地とくらべて7~8度、温度が低いそう。
今買うならこれ! おすすめの夏用スーツ
クールビズでもスーツ着用が必要なビジネスマンのために、少しでも涼しく過ごせる夏用スーツをピックアップ。素材で選ぶか、仕立てで選ぶか、それとも機能で選ぶか。厳選した最新夏用スーツはこちらです。
アイテム1
『ユナイテッドアローズ』
トロピカルウールで仕立てられた、夏のビジネススタイルに最適なスーツ。トロピカルウールとは、夏用スーツの定番生地で、通気性が良く軽いのが特徴です。涼し気な着用感はもちろん、ストレッチ性を備えているためストレスフリーな着心地も楽しめますよ。明るめのグレーが見た目にも清涼感を演出。
アイテム2
『マッキントッシュ フィロソフィー』
ビジネスマンの出張を快適にする「トロッター」シリーズからこちらをピックアップ。スーツの生地にはポリエステルを使用したウールトロピカルを採用。シャリ感がありドライタッチな肌触りで、快適な着用感を味わえます。さらに2WAYストレッチによる動きやすさもうれしいポイントです。スラックスは別売り。
アイテム3
『タケオキクチ』
ヘリンボーン柄が上品な印象のスーツは、家庭での洗濯が可能なウォッシャブル仕様。織りの変化によって生まれた隙間が湿気放出の役割を果たすため、汗をかいても涼しさをキープできます。落ち着きのあるブルーなら見た目にも爽やかさUP。大人にふさわしい高級感漂う風合いですが、ストレッチ性も確保されているのでもちろん着心地は快適です。スラックスは別売り。
アイテム4
『トゥモローランド』
イタリアの名門、チェルッティ社のトロピカルウールを採用。日本人ビジネスマンの体型を分析して作られたシルエットは、ワーキングウェアでありながらシャープな洒落感もプラスされています。夏に欠かせない高い通気性に加え、あらゆる汚れに強い撥水・撥油性を搭載したイージーケア仕様も高ポイント。クリースには形状記憶性を持たせるなど、忙しいビジネスマンにうれしいディテールが満載です。
アイテム5
『グリーンレーベル リラクシング』
イタリアのファブリックメーカーであるドラゴ社に別注したトロピカル生地で仕立てた高級感ある1着。重厚感漂う面持ちですが、背抜き仕様で軽やかに羽織れます。コバルトブルーの凛々しく爽やかな雰囲気も夏のビジネススタイルにぴったりです。スラックスは別売り。
アイテム6
『ナノ・ユニバース』
ウールのしなやかさがありながら、ストレッチ糸を使用しているため、窮屈さとは無縁の動きやすい1着。毛芯や肩パット、裏地を極力省いた仕立てで、軽くて風通しの良い設計なので、これからの季節に重宝するでしょう。別売りのスラックスとベストを組み合わせて3ピースでの着用も可能。インナーにカットソーを合わせて軽快に着こなすのもおすすめです。
アイテム7
『リーセンシー オブ マイン』
レダ社のアイスセンスを採用した夏用スーツ。アイスセンスは、生地の表面に赤外線を遮断する加工を施してあり、反射を促進することで生地の表面温度を8度も低く保ってくれます。同色のスーツで比較すると体感温度はマイナス10度といわれています。光沢のある上品な生地感で、細身のシルエットが実にエレガント。チェック模様が夏らしい涼しげな表情を添えてくれます。スラックスは別売り。
アイテム8
『パーフェクトスーツファクトリー』
スタイリッシュな見た目ながら、360度方向に伸縮するストレッチ性の高い素材を採用した動きやすさで人気を集める「パーフェクテック」シリーズのスーツ。自宅で洗濯ができるうえに、シワになりにくく、パンツのセンタープレスは消えにくいというイージーケアを備えているため、普段のお手入れも簡単です。
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「FINEBOYS」編集部を30歳で独立。以後フリーのファッションエディター&ライターとして「MEN’S EX」「LEON」「GQ」「AERA STYLE MAGAZINE」など各メンズ誌・WEB版のほか、企業広告、オウンドメディアにて執筆。BBQインストラクター、第二種電気工事士など資格多数。目下の目標は危険物取扱者乙種4級取得。