特殊部隊が認めたタフネス。ルミノックスのハイスペックさに惚れ直す
アメリカの特殊部隊をはじめ、過酷な現場で活躍する著名な公共機関が採用。タフネスウォッチの代表格として君臨する『ルミノックス』の、その魅力を再確認します。本物を知る男たちへ。ミリタリーウォッチの粋を宿す『ルミノックス』
『ルミノックス』はスイスで革新的な夜光システムに出会ったアメリカ人のバリー・コーエン氏が1989年に立ち上げたブランド。ブランド名となっている“ルミ”と“ノックス”はそれぞれラテン語で「光」「夜」を意味し、創業当時からその優れた夜光システムを売りにしていました。その後、1992年から始まる米国海軍特殊部隊ネイビーシールズとの共同開発をきっかけに、押しも押されもせぬアメリカの現代ミリタリーウォッチの要となるブランドへと駆け上がったのです。
『ルミノックス』を第一線へと押し上げた、独自にして究極の発光システム
『ルミノックス』最大の特徴が、ブランド名にもなっている夜光システム。「ルミノックス・ライト・テクノロジー(LLT)」と呼ばれる夜光システムのメリットは自発光する点。そのため、24時間常に発光し続けるのです。このシステムはアメリカの特殊部隊の目に留まります。1992年、夜間任務のために強力なイルミネーションシステムを持った腕時計を探していたネイビーシールズの装備調達担当ニック・ノース氏は、時計展示会で『ルミノックス』を発見。バリー・コーエン氏にネイビーシールズ専用の腕時計製作を依頼し、すぐに共同開発が始まるのです。
ここで、「ルミノックス・ライト・テクノロジー」について詳しく説明しましょう。このシステムはスイスMB-マイクロテック社によって開発され、トリチウムガスをマイクロカプセルに封じ込めたのが特徴です。トリチウムガスは放射性物質の1つで、そのメリットは最長25年もの間、自発光するという点(ちなみに人体には影響ありません)。つまり、他の腕時計の夜光は光るために太陽光をはじめとした外光を蓄える必要がある一方、「ルミノックス・ライト・テクノロジー」は自らの力で光るため、真っ暗な空間にずっといても絶えることなく光り続けるのです。
いわば充電せずにずっと動き続ける電気製品のようなもの。どんな状況でも24時間光り続けるため、一瞬たりとも気を抜けない特殊部隊にふさわしい視認性を『ルミノックス』では常に約束しているのです。
“LLT”だけじゃない。『ルミノックス』の性能を支える2つの技術
過酷な状況下で使用するミリタリーウォッチに必須の条件として、タフであること、軽量であること、そして防水性能が高いことが挙げられます。もちろん『ルミノックス』はこの条件をすべて満たしています。
技術1
チタンよりも軽く、高耐久性の「CARBONOX(TM)」素材
軽量&タフを実現している原動力が、『ルミノックス』が「CARBONOX」として2016年に商標登録した素材です。これまでも軽量かつタフなカーボンモデルを主要モデルに採用してき『ルミノックス』ですが、この新素材はさらに強力。従来に比べて長い繊維のカーボンを採用しており、ステンレスの6分の1、チタンの3分の1しか重量がありません。さらに高耐久、高耐水、高耐薬品、高耐熱(融解温度は280度)と、タフさは申し分なし。素材への並々ならぬこだわりは、戦場での使用を想定したタフな時計作りに対する『ルミノックス』らしさの表れなのです。
技術2
日常生活には十分すぎる、高い防水性能も信頼の証し
『ルミノックス』は防水性能も重視しています。そもそも『ルミノックス』のブレイクのきっかけになったネイビーシールズは米国海軍の所属。軍基準のミルスペックを満たすために、高い防水性能は必須だったのです。
そのため、『ルミノックス』のほぼすべてのタイムピースは200m防水という高い基準を満たしています。そして、ダイバーズモデルに搭載されるのが、ベゼルロッキングシステムです。これは、リューズを覆っている特大のリューズガードが閉じられていると回転ベゼルがロックされて回転しなくなる機構。酸素ボンベの残量時間を計る回転ベゼルの誤作動はまさに命に関わるものなので、これもまたプロユースに則した機能といえます。また、一部モデルには飽和潜水時にヘリウムガスを時計内から排出するエスケープバルブを搭載。『ルミノックス』には実戦の知恵から生まれたさまざまなギミックが搭載されているのです。
陸・海・空を制する『ルミノックス』のタフネスウォッチ9選
『ルミノックス』は陸、海、空すべてのフィールドで、タフなミリタリーウォッチをラインアップしています。ここで、それぞれのシリーズから代表モデルを3本ずつピックアップします。
▼海:ブランドの基幹をなす、ダイビングウォッチ「SEA」シリーズ
『ルミノックス』を一躍有名にしたネイビーシールズとのコラボモデルを擁し、ブランドの大黒柱となるのが、海をフィールドにした「SEA」シリーズです。各国の軍隊に正式採用される本格派のミルスペックミリタリーウォッチから、機械式ムーブメントを採用したプレミアムなダイバーズまで幅広くラインアップしています。
アイテム1
オリジナルネイビーシール3000シリーズ
ネイビーシールズと共同開発し、1994年に登場したRef.3001。そのオリジナル直系現行モデルがこちらです。「ルミノックス・ライト・テクノロジー」を搭載しており、夜間の視認性は群を抜きます。ケース素材は最新の「CARBONOX」ではないものの、ウルトラライトカーボンは十分に軽量でタフ。その重量はわずか42gと、着けているのを忘れてしまうほど。防水性能も200mをキープしていて、日常生活では十分すぎるスペックです。
アイテム2
ネイビーシール 3500シリーズ
2009年に登場し、それまで主軸であった3000系に取って代わってメインストリームとなった「カラーマーク」シリーズ。その系譜に連なるのが、こちらの3500シリーズです。インデックスの大型化によって、『ルミノックス』自慢の視認性を高め、さらに使い勝手が良くなりました。もちろん、ケースにはウルトラライトカーボンを採用。裏蓋は樹脂からスチールに変わったためやや重量は増しましたが、それでも91gと十分軽量です。
アイテム3
ディープ ダイブ オートマティック 1520 シリーズ
1520シリーズの防水性能はなんと500m。スイス製の機械式ムーブメントを搭載した、プロフェッショナルのための本格ダイバーズウォッチです。リューズガードを閉じているときは回転ベゼルが自動的にロックされる独自の「ベゼルロッキングシステム」や、飽和潜水に対応したヘリウムガス排出バルブを装備。もちろん「ルミノックス・ライト・テクノロジー」も搭載し、暗い海中でも抜群の視認性を発揮します。
▼空:航空機マニア垂涎。名機の面影を宿す「AIR」シリーズ
「AIR」シリーズは、米国空軍のステルス爆撃機F-117ナイトホークのパイロットからの要請で開発がスタートしました。輝度が高く視認性の良い『ルミノックス』のイルミネーションシステムは、夜間にも任務を遂行する軍用機パイロットにも魅力的だったのです。F-117ナイトホークでの共同開発を成功させた実績から、その後、製造元であるロッキード・マーチン社の他の軍用機、F-16ファイティングファルコン、F-22ラプター、F-35ライトニング、SR-71ブラックバードなどの公式時計ライセンスを『ルミノックス』が獲得し、多くの名作を生み出しています。
アイテム1
F-117 ナイトホーク 6400シリーズ
『ルミノックス』のパイロットシリーズの始まりとなったF-117ナイトホークシリーズの現行機が6400シリーズ。初代モデルよりもボタンやベゼルが大型化され、グローブをはめたままでも操作できるようになっているのが特徴です。ケースは「SEA」シリーズのカーボンと異なりステンレススチールを採用。F-117と同じくマットな質感のPVD加工が施されており、傷に強く、重厚でクールなルックスを醸し出しています。
アイテム2
F-22 ラプター 9240シリーズ
世界最強のステルス戦闘機と称されるアメリカ空軍所属のF-22ラプター。『ルミノックス』によるラプターの公式モデルは2016年に登場。アルミ製のベゼルに速度や飛行距離、残燃料の計算が可能な回転計算尺の機能を持たせたオーセンティックなパイロットウォッチです。ムーブメントにはスイスのロンダ製クォーツクロノグラフムーブメントを使用。ケースはチタン製で、金属アレルギーを持っている人でも安心です。
アイテム3
P-38ライトニング クロノグラフ 9440シリーズ
第二次世界大戦で活躍したアメリカの戦闘機P-38ライトニングをイメージしたヴィンテージ感溢れるタイムピース。クロノグラフ機能と組み合わせることで、平均速度を計測できるタキメーターをベゼルに装備したスポーティなディテールを持ちながら、クッションケースやカーフストラップでクラシック感も満点。ミリタリーの武骨さを薫らせながら、大人も着けられる渋い一品に仕上がっています。
▼陸:アウトドアからドレスまで対応する都会派「LAND」シリーズ
海、空に続き、『ルミノックス』は陸でも極限の状態に耐えられるタフなプロフェッショナルシリーズをリリースしています。当然ながらブランドのアイデンティティである「ルミノックス・ライト・テクノロジー」は全機種に搭載。防水性能は他のシリーズに譲るモデルもあるものの、ケースのステンレススチールにさらに硬度の高いものを採用するなど、タフネスを追求しているのが特徴です。ルックスも落ち着いたモノが多く、さまざまな装いにもマッチしやすいのがこの「ランド」シリーズなのです。
アイテム1
アタカマ フィールドクロノグラフ アラーム 1940シリーズ
平均標高2,000m、そして極度の乾燥。世界一過酷な砂漠として知られる南米チリのアタカマ砂漠をモデル名に持つタフウォッチが1400シリーズです。デザインソースは第一次世界大戦時のフィールドミリタリーウォッチで、「ルミノックス・ライト・テクノロジー」に加え、特大のアラビアインデックスがとびきりの視認性を保証します。また、アラーム付きのクロノグラフを装備しており、積算時間を音で知ることができるのも大きな特徴でしょう。
アイテム2
フィールド ドレス 1830シリーズ
『ルミノックス』の全ラインアップの中でもっともシンプルなのが、この「フィールド ドレス」 というモデルです。“ドレス”という言葉が入っているように、カーフスキンの革ベルトを合わせた上品なルックスはスーツに合わせても全く違和感のない大人顔。とはいえ、そこは『ルミノックス』。暗闇で「ルミノックス・ライト・テクノロジー」が煌々と光るのは、他のミリタリーモデルと同様です。防水性も200mを確保しており、ドレスの皮を被ったタフモデルとも呼べる一品です。
アイテム3
ブラック オプス 8880シリーズ
世界中の特殊部隊に採用されているモデルが「ブラック オプス」。人気を博した前モデルの8800を強力にアップデートした最新作8880シリーズは、風防に強固なサファイアクリスタルを採用しました。ケースには軽量なウルトラライトカーボンを、裏蓋にはステンレススチールを使用してさらにタフさを追求。そして防水性能は200mとそのスペックにスキはありません。ベゼルのレッドインデックスもタフな印象を盛り上げています。
歩みを辞めない『ルミノックス』の、現在を示すモデルたち
『ルミノックス』はさまざまな軍やレンジャー部隊に採用される、タフな状況での使用を想定した時計作りを行うブランド。その設立から30年経った今もなお、極限の世界をフィールドとする各種機関と緊密な連携をとっています。ここでは、そんな『ルミノックス』の新作を中心に紹介していきましょう。
アイテム1
ICE-SAR アークティック 1200シリーズ
アイスランド・サーチ&レスキュー隊と共同開発し、2018年に登場した「LAND」シリーズの最新作「ICE-SAR アークティック1000」シリーズが早くも2019年にアップデート。「CARBONOX」素材の前作から、より硬度の高い316Lステンレススチールにケース素材をチェンジし、重厚感と高級感が増しています。文字盤に北半球の地図がスタンピングされているのもデザイン上のアクセント。ストラップのドットはリフレクターになっています。
アイテム2
ネイビーシール 3600シリーズ
由緒正しい『ルミノックス』の王道モデル、ネイビーシールシリーズの最新作がこの3600シリーズです。よりミニマルでソリッドな印象になった今作は素材のアップデートにも要注目。ケースには「CARBONOX」、風防にはサファイアクリスタルを採用しています。さらに、日付表示部には数字を拡大するレンズを搭載。またリューズをプッシュ式からねじ込み式にすることでより防水性を高めるなど、タフミリタリーの名作シリーズは令和の時代も進化を止めません。
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海外での取材経験も多数。時計専門ライター
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出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーのleather bagに。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。