ビルケンシュトックのサンダル、まず何を狙う? 新作&人気13モデルを大解剖
サンダルを語るうえで欠かせない存在といえる『ビルケンシュトック』。履き込むほどに快適さが増すサンダルの魅力を掘り下げつつ、定番人気のモデルを網羅的にご紹介!200年以上の歴史を誇る、ドイツのフットウェアブランド『ビルケンシュトック』
古くは1774年の公文書に「臣王のシューマイスター」と登録された記録も残るドイツのシューズブランド『ビルケンシュトック』。その最大の特徴は、人間工学に基づいて設計され、足にフィットしながらもストレスフリーな履き心地を実現するフットベッド(中敷き)。創業者の息子にして整形外科医であるカール・ビルケンシュトック氏が負傷兵向けのオーソペディックシューズ(足の治療や運動機能補助のための靴)の技術を盛り込んで完成させたそのフットベッドは、長時間履いても疲れにくいだけでなく、健康的な足を作るためのサポートまで行ってくれる優れモノだ。
『ビルケンシュトック』のフットベッドは人間の足に存在する3つのアーチ(足の内側・外側・足指の付け根)をサポートするよう立体的に作られており、ヒールカップも通常のサンダルと比べて極めて深い。つま先の幅もゆったりと設定されており、足指を締め付けることなく履くことができ、裸足のような感覚を得られる。加えて、素材に天然ゴム配合のコルクを使用しているのも特徴。これにより、履くほどに使用者の足型に合わせてフットベッドが沈み込み、さらなる極上の履き心地へと変化するのだ。
『ビルケンシュトック』のサンダルで、まず押さえておきたい四大定番モデル
『ビルケンシュトック』からは実に多くのサンダルがラインアップされている。思わず目移りしそうになるが、まずはブランドを代表する4つの定番モデルを押さえておけば安心だ。
定番モデル1
ブランド屈指のロングセラー「チューリッヒ」
記念すべき第1号のモデル「マドリッド」に次いで発売された「チューリッヒ」は、1960年代後半から1970年代にかけて、アメリカのヒッピー文化の象徴として一時代を築いた人気モデル。2016年に誕生から50周年を迎えたロングセラーだ。
ダブルモンクストラップを採用したアッパーは、バックルでサイズ調整することで、甲の高低にかかわらず『ビルケンシュトック』ならではのフィット感を楽しむことが可能。上品な足元に仕上がることに加え、甲がレザーで包み込まれるため靴擦れになりづらいのも魅力。
定番モデル2
涼しげで軽快な「アリゾナ」
「チューリッヒ」をベースにしつつ、ダブルストラップのアッパーを採用することで涼しげな印象をプラスしたのが「アリゾナ」。1970年代のアメリカで『ビルケンシュトック』がヒッピーたちの間で大人気を博したことを受け、次々と新モデルがリリースされたうちの1足にあたる。
「チューリッヒ」と比べると素肌がよりしっかり見えるため、カジュアル度やリゾート感が強め。足の見え感を生かして、秋冬シーズンには厚手のソックスと組み合わせて履くコーディネートもおすすめだ。
定番モデル3
ぽってりとしたトゥが魅力の「ボストン」
1978年に誕生した「ボストン」は、靴とサンダルの中間的存在のため、オールシーズン着用しやすい1足。丸みを帯びたデザインは、ヨーロッパの木靴が元になっており、春夏のシンプルコーデにはもちろん、秋冬にボリューム感のあるトップスと組み合わせたときにも好バランスにキマる。
『ビルケンシュトック』らしい足型に沿ったオブリークトゥは、足指を締め付けられる感覚がなく、足元に適度なボリューム感を与えてくれる。トゥ先の縁まで1~2cmほどの隙間を残したサイズを選び、バックルでしっかりとフィットさせるのが快適に履くポイントだ。
定番モデル4
サンダル感覚で履けるシューズ「モンタナ」
サンダルのイメージが強い『ビルケンシュトック』だが、実はシューズのラインアップも豊富。なかでも代表的なモデルが、縫製ではなくリベット留めと特殊なシューレースの通し方によってシューズの形に作り上げられた「モンタナ」だ。内側にライニングを使用しない一枚仕立てのため、サンダルのように素足で履くのもOKだ。
素材は2.8~3.2mm厚のオイルドレザーを切りっ放しで使用し、ラフな風合いが加えられている。ヴァンプ(アッパーのつま先部分)とブルーチャー(外羽根)をリベットでつなぎ、バックステイもヒール部分の革を折り返して留めて補強するなど、ルックスは複雑なれど作りは極めてミニマル。靴作りの常識に囚われない自由な構造は『ビルケンシュトック』ならではのアイデアだ。
定番愛用者には、これ。2020年春夏の新作「キョウト」に注目
『ビルケンシュトック』愛好家ならば、新作の登場を待ち望んでいた方も多いはず。そんな期待に応え、2020年春夏の新作としてリリースされたのが「キョウト」。スエード素材が着物のように足の甲を包みつつ、メンファスナーのベルトが帯のように作用し、フィット感を高めてくれる。そんな“和”を感じさせるデザインには、“キョウト(京都)”というモデル名がうってつけ。「キョウト」は足を覆う部分が多いため、夏はもちろん秋口にもソックスと合わせるのもアリだ。
『ビルケンシュトック』では珍しい、鮮やかなイエローもスタンバイ。ジーンズはもちろん、オンシーズンは白パンツやショーツと合わせるのも良いだろう。紹介したトープやウルトラブルーのほか、ネイビーもラインアップとしてリリースされているので是非チェックを。
人気モデルは他にも多数! 『ビルケンシュトック』のおすすめサンダル7選
『ビルケンシュトック』には他にもロングセラーモデルが非常に多く揃っている。言い換えるなら、いずれのアイテムも高い完成度を備えている証拠だ。以下で紹介するモデルも安心して選んでほしい。
おすすめモデル1
矯正靴としての出自を堪能できる「マドリッド」
1963年に発売された『ビルケンシュトック』のサンダル第1号が「マドリッド」。歩くたびにかかとがフットベッドから離れ、足指が地面をつかもうとする動きを自然と行えるようデザインされており、それによってふくらはぎの筋力トレーニングの効果が発揮される。
おすすめモデル2
サンダルとしてもシューズとしても履ける「ロンドン」
「ボストン」をベースに、かかと部分を覆うレザーパーツを取り付けてシューズ仕様にアレンジされた「ロンドン」。アッパー部分の革は裁ち端の風合いを生かして仕立てられている。またライニングのない仕様で、ヒールカウンターやバックステイも採用しておらず、かかとを踏んでサンダルとして履くことも可能だ。
おすすめモデル3
ブランド屈指のリゾートモデル「ギゼ」
古代ギリシャのサンダルからインスパイアを受けて1982年に発売されたトングサンダルの「ギゼ」は、ユニセックスなルックスが特徴的。サンダルを親指の股で支える構造上、トングタイプは靴擦れが起こりやすいものだが、『ビルケンシュトック』では開発に3年かけて抜群のフィット感を実現。安心して遠出にも着用できる仕上がりとなっている。
おすすめモデル4
男らしいムード溢れる「ラムゼス」
ユニセックスモデルである「ギゼ」と同じデザインを踏襲しつつ、より太いベルトを採用することで男らしいインパクトをプラスした「ラムゼス」。アッパーと足の接する部分が増えるため、ホールド感も向上している。サイドのバックルを使ってフィット感の調整も可能。
おすすめモデル5
抜群の歩きやすさが魅力の「ミラノ」
ダブルバックルタイプの「アリゾナ」にバックストラップを追加することで、さらにホールド感をプラスした「ミラノ」。足を蹴り出したときもかかととフットベッドが離れにくいため、長時間の歩行に最適。秋冬にソックスと合わせてコーディネートすれば、足元に適度な抜け感をプラスすることができる。
おすすめモデル6
プロの現場で愛されてきた「トキオ」
モデルのネーミングに世界の地名を採用する『ビルケンシュトック』だが、その日本版がこの「トキオ」。定番の「ボストン」にバックストラップを追加してホールド感を高めており、医療・ケア関係者のルームシューズとしても長年人気を博している。履きやすさはもちろん、室内で履いたときにも靴音がほとんどしないのが医療のプロから支持される理由の1つだ。
おすすめモデル7
軽快かつコンフォートな「マヤリ」
キューバの都市がモデル名として採用されていることが象徴するように、ブランドの中でも特にリゾート感溢れるデザインの「マヤリ」。細めのベルトを組み合わせて軽やかさを出しつつ、しっかりと親指をホールドするようにデザインされていて、一般的なトングサンダルよりも脱げにくい構造となっている。
軽量でお手入れ楽々。人気上昇中の“EVAシリーズ”もチェックしておこう
2014年にまずレディースが発売されて注目を浴び、翌年にメンズも発売となった『ビルケンシュトック』初のまるごと洗えるウォッシャブルなサンダル、EVAシリーズ。非常に軽量で柔軟性に優れたエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を全体に使用しており、両足で200g前後という驚きの軽さを実現。「アリゾナ」や「ギゼ」、「マドリッド」といった人気品番をEVA素材にアレンジしたモデルがラインアップされており、いずれも通常ラインと比べて半額以下というリーズナブルなプライスも魅力だ。丸洗いできるほど水に強いため、夏場のウォーターアクティビティのお供としても活躍してくれるはずだ。
最後に知っておきたいサイズ選びにおける注意点
人間工学に基づいた『ビルケンシュトック』のフットベッドの魅力を最大限に味わうためには、正しいサイズ選びが肝心。しっかりと土踏まずのアーチとフットベッドの盛り上がりが合っているかどうか、アーチの位置を合わせたときにつま先に指1本分程度の余裕があるかどうかをチェックしよう。また『ビルケンシュトック』には幅広と幅狭の2種類のウィズが存在する。幅広を基準にしつつ、つま先がぴったりでも幅が余るといった場合は、幅狭のモデルを選ぶと良いだろう。
アメカジ&アメトラを中心にラギッドな視点で解説
那珂川廣太
バイク専門誌と男性向けライフスタイル誌で編集を約8年務めたのちに独立。ファッションはアメリカンカジュアルからトラッドまで幅広く執筆を行い、特にブーツやレザー、ジーンズ、古着など男臭いアイテムの知識が豊富。また乗り物やインテリア、フードまでライフスタイル全般にわたって「ラギッド」を切り口に執筆する。